患者は, 31歳女性. 1980年 (15歳時) に1型糖尿病と診断され, インスリン療法を開始. 1990年より持続性蛋白尿, 1991年より起立性低血圧, 下痢が出現. 1994年より全身浮腫, 心拡大をきたし, 1995年4月当科入院. 入院時, 身長151cm, 体重43.6kg, 血圧180/80mmHg (臥位), 8450mmHg (立位). 両眼底は単純網膜症で, 神経学的には温冷覚, 振動覚低下, 深部反射消失ならびにCV
HB (安静時) の著明な低下 (0.9996) を認めた. FPG210mg/dl, HbA
1c 11.7%, 尿蛋白2.1gday, 24時間内因性クレアチニンクリアランス35.3ml/min. 入院後, 徐々に低換気, 呼吸性アシドーシスが進行し, 6月22日起床後に突然, 意識消失, 呼吸停止出現 (pH7.33, PO
2 30.0mmHg, PCO
2 66.2mmHg, B. E.+7.4mmol/l, HCO
3-35.3mmol/l), バックによる強制換気にて意識は回復した. 脳幹部MRI, 胸腰椎MRI, Holter ECG, Polysomnographyで異常を認めず, 意識的過換気で呼吸停止がみられることより, 自律神経障害を伴う糖尿病患者で稀に認められるHypoxic depressionのような換気応答の異常が示唆された. 著明な自律神経障害を合併するこのような症例では, 突然死の危険性をも念頭に置いて, 十分な経過観察を行うことが必要である.
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