糖尿病患者の心筋梗塞後の予後と血糖のcontrol状態の関係は不明であり, 治療効果の判定を困難にしている原因に病型の相違や合併症の存在がある.そこで実験的糖尿病ラットを作製し, その心機能と治療効果を検討した.
方法NIDDMの実験モデルに視床下部性肥満ラット (肥満群) を, IDDMの実験モデルにはstreptozotocinを静注した糖尿病ラット (DM群) を用い, これを前者は食事制限による減量 (減量群), 後者はinsulin注射 (DMI群) により治療した.次にworking heart preparationにてKrobs buffer (O
2: CO
2=95: 5) でその別出心をpacingg下で灌流した後, 一方向性バルブで虚血を誘発し, 肥満群, 減量群では20分, DM群, DMI群では10分間灌流した.さらに虚血とpacingを解除して前者は30分, 後者は20分間再灌流した.全灌流中, 最大収縮期圧 (PSP), 心拍数 (HR), coronary flow (CF) を経時的にモニターした.
結果体重, 血清脂質 (TC, TG, FFA) は対照群に比べて肥満群で有意に増加, 減量群で有意に低下した.血糖値は対照群に比べてDM群で有意に増加, DMI群で有意に低下した.心機能 (PSP×HR) の回復率は対照群, 肥満群, 減量群でそれぞれ虚血前値の92.7, 27.5, 89.9%に, 対照群, DM群, DMI群ではそれぞれ100, 54.4,101.7%といずれも治療群で有意に回復した.
結論肥満群, DM群共に虚血後再灌流時の心機能は障害されたが, これを治療することにより良好な機能の回復が得られ, その機序として治療による糖, 脂質代謝との関連が示唆された.
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