糖尿病性細小血管症と血漿fibronectin (以下Fn) 濃度との関連を明らかにする目的で, 糖尿病71例 (NIDDM 44, IDDM 27例) ならびに年齢をほぼ合致させた健常者23例を対象に, 早朝空腹時の静脈血を用い, 血漿Fn, solublc fibrin monomer complexes (SFMC), nbrinogen (Fbg), plasminogcn (Plg), 赤血球糖化ヘモグロビン (HbA
1) ならびにtotal cholesterol (T-chol) を測定した.
蛋白尿のない例のFn濃度と健常者のFn濃度との間には差がなかった. 蛋白尿のない例のFn濃度 (32.3±5.8mg/100m
l) に比し蛋白尿0.5g/24hの例のFn濃度は差がなかったが, 蛋白尿0.5≦~3.0g/24h (39.6±7.3mg/100m
l) と3.0g/24hの例 (40.6±5.0mg/100m
l) の値は高値を示した (p<0.02, p<0.001). 健常者のFn濃度と網膜症のない例のそれとは差がなかった. 網膜症のない例のFn濃度 (32.3±5.2mg/100m
l) に比し単純性網膜症例のそれは差がなかったが, 前増殖性 (39.2±6.0mg/100m
l) と増殖性網膜症例 (42.4±5.5mg/100m
l), FnとSFMC (r=0.63, p<0.05), FnとFbg (r=0.75, p<0.02), FnとT-chol (r=0.74, p<0.02) に相関関係が認められた.
以上より, 進行した腎症や網膜症では血漿Fn濃度は高く, このことは腎メサンギウムや網膜血管基底膜へのFn沈着をもたらせ, さらに, 血管内での微量なthrombin発生と関連し, 細小血管症を進展させる可能性があると思われた.
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