糖尿病
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42 巻, 8 号
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  • 大越 恵一郎, 中野 逸郎, 伊藤 鉄英, 宮原 稔彦, 小柳 修二郎, 右田 良克, 関口 直孝, 梅田 文夫, 名和田 新
    1999 年 42 巻 8 号 p. 651-656
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    われわれは糖尿病合併慢性石灰化膵炎9例を対象に, インスリン抵抗性と膵内外分泌機能との関連について検討した. 9例中7例ではインスリン分泌能のみならずグルカゴン分泌能も低下し, 膵外分泌機能は全例中等度以上の障害を示した. 一方インスリン抵抗性についてグルコ-スクランプ法を用いて検討し, 慢性石灰化膵炎群は明らかなインスリン抵抗性を示した. さらに膵内外分泌能とインスリン抵抗性の相関について, アルギニン負荷テストでのグルカゴン分泌反応と, インスリン抵抗性は強い負の相関を示した. 今回の検討では, 慢性膵炎において糖尿病発症初期にはインスリン分泌障害のみならず, インスリン抵抗性も認められ, 膵ラ氏島A細胞機能の低下につれてインスリン抵抗性が軽減することが示された.
  • OLETFラットを用いての検討
    満 志偉, 平嶋 司, 森 茂人, 河野 一弥
    1999 年 42 巻 8 号 p. 657-665
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    トリグリセライド (TG) と糖尿病との関連性については肝と筋肉でのTGの蓄積がインスリン抵抗性を引き起こす原因のひとつであること, 膵ラ氏島にTGが蓄積することで膵β細胞機能障害が引き起こされること等が報告されている. 本実験では食餌制限による高トリグリセライド血症 (高TG血症) の是正, 組織へのTG蓄積の減少と糖尿病の改善との関連性について検討した. 実験には糖尿病を発症したOLETFラットと対照群としてLETOラットを用い, OLETFラットは飽食群と30%食餌制限群 (制限群) に分け, 経時的な体重変化, 血液生化学検査, 組織中のTG含量, Glucose lnfusion Rate (GIR), 肝と膵の病理組織学的検査を行った. その結果, 制限群は飽食群より1) 体重と腹腔内脂肪重量の減少, 血漿TG値, 血漿インスリン値とグルコース値の低下, 肝からのTG分泌率の低下, 血漿Post Heparin Lipolytic Aotivity (PHLA) の増力口, 2) 肝, 膵および筋肉中のTG含量の減少, 3) GIRの改善, 4) 病理組織学的検査において肝と膵ラ氏島でのTGの蓄積が著減したことが認められた. 以上の成績から食餌制限によって肝と筋肉へのTGの蓄積が減少し, インスリン抵抗性が改善したことが考えられた. さらに, 膵ラ氏島内のTG蓄積が軽減したことから膵β細胞機能が改善したことが示唆された.
  • 伴野 詳一, 河津 捷二, 宇都木 敏浩, 加藤 典弘, 大野 富雄, 大山 良雄, 内山 強, 伊藤 弘麿, 伴野 和夫, 永井 良三
    1999 年 42 巻 8 号 p. 667-672
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    αグルコシダーゼ阻害薬 (α阻薬), インスリン (In) 抵抗性改善薬 (トログリタゾン: TZD), 新型In注入器等, 登場以前の1991年 (前期) に6ヵ月以上通院していた糖尿病外来患者291例と, 登場後の1997年 (後期) の患者394例の血糖コントロール状況を比較した. 全体では前期のHbA1c 7.9±1.7%, 後期7.2±1.5%で, 後期の方が有意に低く (p<0.001) 血糖コントロール良好であった. 前期の経口薬治療138例の内訳は, スルフォニルウレア薬 (SU薬) 97.1%, ビグアナイド薬 (BG薬) 3.6%, 両者併用0.7%であったのに対し, 後期の194例ではSU薬54.1%, BG薬3.6%, α阻薬2.1%, Tr2.1%, 2種以上の薬物併用38.1%と多様化しており, HbA1cは前期8.6±1.7%, 後期7.4±1.3%と有意に低かった (p<0.001). In療法例も前期82例の経口薬併用が6.1%であったのに対し, 後期107例では34.6%と増加し, 注射回数も多く, HbA1cは前期8.6±1.9%, 後期7.9±1.6%と有意に低かった (p<0.01). 治療の多様化で, より良い血糖コントロールが得られていることが判明した.
  • リポプロテインリパーゼ遺伝子多型に注目して
    小内 亨, 岡田 秀一, 大島 喜八, 森 昌朋
    1999 年 42 巻 8 号 p. 673-678
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者においてリポプロテインリパーゼ (LPL) 遺伝子多型が, シンバスタチン (S) の糖代謝に対する効果に影響するかについて検討した. 6カ月間17名の糖尿病患者にSを投与し, その前後にて75gOGTTを施行し, 血漿グルコース濃度, 血清インスリン濃度のarea under thecurve (AUC) を算出した. 患者血中よりDNAを抽出し, LPL遺伝子イントロン8をPCR法にて増幅した後, Hind川にて処理し, 電気泳動した. その結果, Hind III切断部位を有するホモ接合体 (+/+) が11名, ヘテロ接合体 (+/-) が6名であった. +/+型にてS投与後グルコースAUCが有意に低下したのに対し, +/-型では変化がなかった. インスリンAUOは, +/+型, +/-型ともにS投与前後にて変化しなかった. 以上より, LPL遺伝子多型はSの糖代謝に対する作用に影響を与えることが示唆された.
  • WHO診断基準との比較
    柴崎 智美, 永井 正規, 高科 成良
    1999 年 42 巻 8 号 p. 679-683
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    厚生連廣島総合病院が実施した成人病検診で, 経口糖負荷試験を受検した広島県西部農村地域に居住する2, 562人 (女1, 563人, 男999人) を対象として, 糖負荷試験の結果を, 従来の World Health Organization (WHO) の基準および1997年にアメリカ糖尿病学会専門委員会が提案した空腹時血糖を用いた新基準を用いて判定した. 新基準で糖尿病と判定される者の割合は男で4.3%, 女で2.8%であり, WHO基準の男7.8%, 女5.8%と比べて低い. 従来のWHO基準の結果を標準とした新基準の結果の敏感度は40.5%, 特異度は99.2%となり, 特異度は高いが, 敏感度が低い結果となった. 肥満度別の敏感度は過体重者で55.3%と最も高く, 正常者は36.6%, 肥満者で30.8%と低い. 年齢階級別肥満度別では, 肥満度に関係なく, 70歳以上で敏感度が低い. 新しい基準を用いる場合には, 肥満者, 高齢者における耐糖能異常者が糖尿病の診断から除かれる可能性が示唆された.
  • 山下 智子, 中村 友厚, 長坂 昌一郎, 岡田 修和, 板橋 直樹, 川上 昭雄, 斎藤 孝子, 六角 久美子, 林 廣子, 草鹿 育代, ...
    1999 年 42 巻 8 号 p. 685-688
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は23歳女性, 14歳時にインスリン依存型糖尿病を発症し, インスリン治療を行っていたが, コントロールは不良であった. 21歳頃痩せ願望をきっかけとして極端な食事制限や, 不規則なインスリン注射を行うようになり, 4ヵ月で18kgの体重減少を来し神経性食思不振症と診断され入院した. 入院時, るいそうと脱水, 著明な肝機能障害, 高脂血症, 電解質異常を認めた. 入院直後から2度にわたり, 特に誘因なく突然左下腿背面側に圧痛と熱感を伴う硬結が出現した. 検査所見ではWBO, CPK, ORP等に異常はなく, MRIT2強調像で下腿三頭筋に高信号域が認められた. 症状は安静のみで約3週間で自然軽快し, 症状の消失とともにMRIの高信号域も消失した. 感染や深部静脈血栓症は否定的で, Angervallらが初めて報告したdabetic muscle infarctbnに矛盾しない病態と考えられた. 本症例では神経性食思不振症による脱水が増悪要因のひとつと考えられた.
  • 土屋 和子, 森岡 未千子
    1999 年 42 巻 8 号 p. 689-694
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    血糖値に比し, HbA1C測定値が異常高値を呈したインスリン非依存型糖尿病の65歳の女性の症例を経験した. 高速液体クロマトグラフィー (以下HPLC法) で測定した結果, 幅広いA1Cピークを呈した (症例1). また, 近医より高血糖で紹介され, HbA1C測定の際に偶然にその分画に異常溶出パターンが認められた54歳の男性の症例を経験した (症例2). 異常ヘモグロビンの干渉を考慮して, ヘモグロビンの構造解析を行った. その結果, 症例1はHb Kariya [α40 (C5) Lys→G1u] と同定された.このHb Kariyaは山梨県で第1例目であり, 本邦における3例目に当たる.同様に症例2はHb Hikari [β61 (E5) Lys→Asn] と同定された. このHb Hirariは山梨県では2例目で本邦55例目に当たる. 血中グリコヘモグロビン (HbA1, HbA1C) 濃度は, 異常ヘモグロビンのみならず, その他の種々の要因により干渉を受けて異常値を示す場合があるので, HbA1, HbA1Cの測定値を検討する際には注意する必要性と溶出パターンの観察の重要性を強調したい.
  • 市田 和裕, 高 昌代, 吉崎 健, 山口 朝子, 大橋 誠, 野村 誠, 鎌田 武信, 阿部 裕
    1999 年 42 巻 8 号 p. 695-698
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性, 無職, 主訴は全身脱力, 構音障害である. 本症例は29歳時に初めて検診にて尿糖を指摘され, 以後食事ならびに昭和56年 (53歳) より経口血糖降下剤にて治療されていた. 平成元年 (61歳) より当院内科外来にて加療開始し, 平成5年 (65歳) にインスリン療法へ変更した.今回, 平成8年8月頃より血清CPK値3141U/lと軽度上昇を認めるようになったが, 自他覚所見にて変化を認めず経過観察していた. ところが, 平成9年1月下旬頃より次第に下肢筋力低下と軽度の構造障害を自覚するようになり, 2月11日尿量減少ならびに全身脱力が著明になったため救急外来受診し, 緊急検査にて著明な低Na血症 (111mEq/l) および高CPK血症 (7, 4451U/l) を指摘され, 翌日精査治療目的にて入院となった. 入院後の諸検査の結果, 原発性甲状腺機能低下症と診断し, 塩分補正および甲状腺ホルモン補充療法を行った結果, 低Naおよび高CPK血症はそれぞれ正常化し症状改善を得た.
  • 背景因子との相関について
    佐藤 雄, 森本 修充, 筒 信隆, 仲村 吉弘
    1999 年 42 巻 8 号 p. 699-705
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    長期にわたる糖尿病治療の継続と合併症の予防のためには, 比較的軽症期にある患者の心理を早期に把握することが重要であると考えた. この目的のため近年特にその患者数の増加が指摘されている40歳以上のインスリン非依存型糖尿病患者の中で, 糖尿病による日常生活への支障がほとんどない外来通院中の患者を対象とした. 心理テストを用いこれらの患者の心理状態を評価し, その心理傾向といくつかの背景因子との関連を調べた. 1) 血糖コントロールの悪さと神経症傾向, 2) 年代の若さ, 罹病期間の短さと特性不安, 状態不安の高さ, 3) 女性と状態不安の高さ, 4) 男性と「易怒性」の高さ, 5) 経口血糖降下剤服用中の患者と生活満足度の低さとの相関が見い出された.
  • 1999 年 42 巻 8 号 p. 707-724
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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