糖尿病
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50 巻, 4 号
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原著
  • 松本 一成, 中村 寛, 最勝寺 弘恵, 藤田 成裕
    2007 年 50 巻 4 号 p. 235-240
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    高齢者の急性呼吸器感染症(肺炎,急性気管支炎)の治療の際に,血糖値を厳格にコントロールすることの有用性を検討した.2002年1∼6月(介入年)に入院した70歳以上の呼吸器感染症患者79例中,入院時の随時血糖値が130 mg/dl以上の43例に強化インスリン療法を施行し,血糖値を193.6±63.5 mg/dlから102.6±20.9 mg/dlに低下させた.強化インスリン療法の効果を検討するため,2001年1∼6月(観察年)に入院した84例のデータと比較した.観察年においては,血糖値130 mg/dl以上の高血糖群は正常血糖群と比較して,死亡率や合併症発生率に有意差を認めなかったものの,発熱期間と抗菌薬投与期間が長い傾向にあり,在院日数は有意に長かった(31.1±22.3 v.s. 21.2±15.4日,p<0.05).介入年においても,インスリン治療された高血糖群と正常血糖群の予後に有意差は認めなかった.しかしながら,両群間での発熱日数,抗菌薬投与日数はほぼ等しく,在院日数にも有意差が無くなっていた(19.7±11.5 v.s. 18.0±15.1日,p=0.18).そして,強化インスリン療法による高度な低血糖の出現は認めなかった.結局,厳格な血糖コントロールを行った介入年には,観察年と比較して,高齢者の急性呼吸器感染症の発熱期間と抗菌薬投与期間の短縮傾向を示し,在院日数を有意に短縮した.このことから,厳格な血糖コントロールが呼吸器感染症からの患者の回復を早める可能性が示唆された.
症例報告
  • 井上 篤, 小泉 茂樹, 入宇田 能弥, 伊古田 明美, 小杉 尚, 松谷 久美子, 真尾 泰生
    2007 年 50 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例1: 62歳,男性.買い物途中に意識消失があり,当院へ救急搬送された.血糖値38 mg/dl, インスリン値18.0μU/ml (Fajans index 0.47), ダイナミックCTにて膵尾部に腫瘤像を認め,選択的動脈内カルシウム(以下Ca)注入法(以下ASVS)を施行した.脾動脈の近位,遠位から低用量(0.01 mEq/kg body weight)のCa負荷で,前値のそれぞれ15.1倍と4.4倍のインスリン値の上昇を認め膵尾部局在のインスリノーマと診断した.症例2: 82歳,女性.主訴はめまいと冷汗.空腹時血糖値42 mg/dl, インスリン値16.0μU/ml (Fajans index 0.38), ダイナミックCTでは,膵尾部に腫瘤像を認め,低用量のCa負荷でASVSを施行した.脾動脈の遠位,近位からの刺激で,インスリン前値のそれぞれ9.9倍と4.0倍の上昇を認め膵尾部局在のインスリノーマと診断した.低用量Ca負荷によるASVSで局在診断が可能であった2例を経験した.
  • 楠 知里, 原山 拓也, 梅川 常和, 吉田 俊秀
    2007 年 50 巻 4 号 p. 247-254
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例1は63歳男性.身長165 cm, 体重106.3 kg, BMI 39, 臍部ウエスト周囲径116 cm, 血圧138/92 mmHg, 血糖181 mg/dl. インスリン1日100単位注射しており減量と血糖コントロール目的にて入院.入院後1,200 kcal糖尿病食と1万歩の運動を指示.99 kgの時点でメタボリックシンドローム改善.94.5 kgに減量した時点でインスリン離脱.症例2は41歳男性.入院時BMI 32.8, 臍部ウエスト周囲径112 cm, 血圧154/90 mmHg, 血糖171 mg/dl, インスリン総量68単位.入院後1,600 kcal糖尿病食と2万歩の運動にてBMI 31の時点でメタボリックシンドローム改善.BMI 28の時点でインスリン離脱.症例3は61歳女性.入院時BMI 24, 臍部ウエスト周囲径90 cm, TG 203 mg/dl, 血糖162 mg/dl, インスリン総量36単位.減量治療後BMI 22.8の時点でメタボリックシンドローム改善.BMI 22.4の時点でインスリン離脱.これら3症例では治療1年後も減量体重を維持できており,インスリン注射なしでHbA1cはそれぞれ5.4, 6.3, 6.2である.これら3症例では,いずれも体重増加・インスリン注射量増加を引き起こした原因としてストレスによる過食があり,ストレスマネージメント療法を併用しながら加療を続けたことがリバウンドも無く減量でき,1年後もインスリン注射無しの状態にて血糖コントロールが良好に保てている大きな原因と考えている.
  • 西田 啓子, 岡田 洋右, 廣瀬 暁子, 森田 恵美子, 田中 良哉
    2007 年 50 巻 4 号 p. 255-260
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性.2001年に耐糖能異常(IGT)と診断されたが放置.2004年1月空腹時血糖(FPG) 126 mg/dl, HbA1c 6.0%を指摘.同年4月右側腹部痛,肉眼的血尿を認め腹部CTおよび尿細胞診にて右腎盂尿路上皮癌と診断された.同時期より口渇,多飲,多尿を自覚し,5月には随時血糖(PPG) 709 mg/dl, HbA1c 11.3%, 尿ケトン体(2+)となり,手術前血糖コントロール目的で当科紹介入院となった.入院時体重61 kg(-6 kg/2カ月,BMI 23.0)でFPG 288 mg/dl, 空腹時血中インスリン(FIRI) 8.7 μU/ml, 空腹時血中Cペプチド(FCPR) 1.7 ng/ml, 尿中Cペプチド(CPR) 90.4 μg/dayで,抗GAD抗体は陰性であった.食事療法(1,600 kcal)および強化インスリン療法(30∼50単位/日)にて血糖の厳格な管理を行い,右腎尿管全摘術施行.手術当日朝には18単位のインスリンを要したが,腫瘍摘出直後より血糖上昇を認めずインスリンは全く不要となり,その後は食事療法のみでFPG 80∼120 mg/dl, HbA1c 5.3%とコントロール良好である.腎盂尿路上皮癌に伴う耐糖能変化に関する報告は極めて稀であり,高血糖を来たした報告は本例が初めてである.本例における手術前後でのインスリン必要量の急激な変化は,厳格な血糖管理による糖毒性解除のみでは説明が出来ず,腫瘍細胞による血糖上昇機序が腫瘍摘出により解除された可能性が考えられた.
コメディカルコーナー・原著
  • (1) 現在の使用機器に関する調査
    内潟 安子, 小野 百合, 佐藤 利彦, 清野 弘明, 瀧野 博文, 武田 倬, 津田 晶子, 中山 秀隆, 平盛 裕子, 森田 千尋, 渡 ...
    2007 年 50 巻 4 号 p. 261-268
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    全国の幅広い患者層と医療スタッフを対象にSMBG機器に関するアンケート調査を行い,医療機関別機種選定の現状と患者および医療スタッフそれぞれの立場からみた使い勝手や満足度およびその相違を検討した.大学病院および診療所では半数以上が3機種以上のSMBG機器を採用していた.自主選択比率は大学病院通院患者がもっとも高く14%で,診療所は採用機種数が多いにもかかわらず自主選択する患者は6%と低かった.診療所では主に医療スタッフの薦めによって機種選定していると考えられた.自主選択された機種には高い満足度が示された.また,患者と医療スタッフの満足度に違いがあることが明らかとなり,患者は「携帯性」「操作性」「安全性」を重視し,医療スタッフは「痛み」「信頼性」を重視していた.
  • (2) 代表的4機種の使い勝手と満足度
    内潟 安子, 小野 百合, 佐藤 利彦, 清野 弘明, 瀧野 博文, 武田 倬, 津田 晶子, 中山 秀隆, 平盛 裕子, 森田 千尋, 渡 ...
    2007 年 50 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者がどのようなSMBG機器に満足感をもつのかの回答を得るために,未だSMBG経験のない120名の糖尿病患者に,今日の代表的なSMBG機器4種を1日ずつ,他人の介入が入らないように使用説明書も患者自身で読んでもらい,患者自身で各々の機器を使用して,「操作性」,「安全性」,「信頼性」,「携帯性」,「痛み」に係わる5項目につき,5段階で評価してもらった.なお,採血部位は全て指先に統一し,患者自身で行った.4機種とも,どの項目に対しても3(普通)以上の評価が得られた.しかし,「操作性」,「安全性」,「携帯性」の3項目については機種間に差がみられた.また,4機種それぞれに,年齢別,病型別の差異もみられた.
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