糖尿病
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49 巻, 6 号
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原著
  • —薬物療法と使用薬剤—
    金塚 東, 川井 紘一, 平尾 紘一, 大石 まり子, 高木 廣文, 小林 正, 有限責任中間法人 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM ...
    2006 年 49 巻 6 号 p. 409-415
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病データマネジメント研究会(Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group, JDDM)は2型糖尿病における薬物療法の実態を解明する目的で,経口血糖降下剤とインスリン製剤による治療法と使用薬剤について調査した.糖尿病診療専用ソフト,CoDiC®を用いて多施設よりデータを集積した.2002, 2003と2004年に登録された薬物療法中の2型糖尿病患者,各14,246, 17,576, 19,228症例を対象とした.38%の患者に経口剤単剤療法,32%に経口剤複剤併用療法,10%に経口剤とインスリン製剤併用療法および20%にインスリン製剤治療が行われた.経口剤単剤療法では,スルフォニル尿素剤(SU)が最も多く処方されたが減少し,ビグアナイド剤(BG), その他経口剤の使用が増加した.経口剤複剤併用療法では,SUとBGの併用が最も多かった.経口剤とインスリン製剤併用療法では,α-グルコシダーゼ阻害剤,BG, SUが多く併用された.インスリン製剤による治療では,最も多用されている30%レギュラーインスリン混合製剤の処方が減少し,レギュラーインスリンあるいは超速効型ヒトインスリンアナログ製剤とNPHインスリンあるいは持効型ヒトインスリンアナログ製剤併用(強化インスリン療法)症例が増加した.
症例報告
  • 五十嵐 幹二, 河崎 孝弘, 小片 展之, 酒井 忠司, 一柳 薫, 藤森 新, 山内 俊一
    2006 年 49 巻 6 号 p. 417-421
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は17歳男性.主訴は口渇,体重減少.受診時,意識清明であったが,血糖値は1,107 mg/dl, HbA1C 13.5%と著明に高値.動脈血pH 7.36と正常域内だが,血中総ケトン体は8,460 μmol/lと上昇.抗GAD抗体陰性,清涼飲料水多飲歴,肥満(BMI 29.9)より清涼飲料水ケトーシスと診断した.入院後,インスリン療法と補液により高血糖は速やかに是正された.血清フルクトース値は入院時517.3 μmol/l(基準値:10 μmol/l以下,1 μmol/l=0.018 mg/dl)と異常高値を示し,翌日には67.9 μmol/lまで低下(血糖値330 mg/dl),第11病日では18.9 μmol/l(血糖値218mg/dl)となった.同程度の高血糖病態である糖尿病性ケトアシドーシス(n=10)に比べ,清涼飲料水ケトーシス(n=3)の入院時血清フルクトース値は明らかに高値であり,この著明な高フルクトース血症が清涼飲料水ケトーシス発症に関与していることが強く示唆された.
  • 島 健二, 川原 和彦, 小松 まち子, 川島 周
    2006 年 49 巻 6 号 p. 423-427
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    末期慢性腎不全による維持透析治療中の患者で,2~3日間の絶食後に,血糖値が低血糖域(血糖値50 mg/dl以下)に低下した5症例を経験した.1例を除き血糖降下薬は低血糖発症前2~3日間摂取しておらず,これが原因とは考えられない.また,低血糖発症後4日以内測定の早朝空腹時血中インスリン濃度は異常高値でなく,また,インスリン拮抗ホルモン濃度も低値でなかった.1例のアルコール性肝障害例を除き,本症例の低血糖の要因として,腎での糖新生障害の可能性が推定される.
  • 小寺 力, 戸澤 美智子, 吉田 敦行, 高祖 裕司, 吉田 理恵, 元吉 和夫, 田中 祐司
    2006 年 49 巻 6 号 p. 429-434
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    少量オクトレオチドにより著明な高血糖をきたし,血糖正常化のために極少量範囲での用量調節を要した高齢インスリノーマ症例を経験した.症例は89歳女性.6年前からリハビリテーション施設入所中に早朝意識障害から低血糖(20 mg/dl)に気づかれた.低血糖時の血中インスリン12 μg/ml, Cペプチド3.3 mg/dl, 拮抗ホルモン正常,クロモグラニンA高値,CTで膵頭部に造影効果ある腫瘤影を認めインスリノーマと診断した.年齢や併発症(腹部大動脈瘤)等からオクトレオチド治療を選択,50 μg(朝1回)を投与したところ直後から著明高血糖となり(頂値555 mg/dl), 前値復帰に36時間を要した.至適量を探した結果,10 μg/日(夕1回)で血糖が安定し,高血糖も意識消失発作もなくなった.インスリノーマ内科治療の主力であるオクトレオチドだが,10 μg/日という極少量で奏効することは異例で,機序として高感受性受容体サブタイプの発現を考えている.また,正常~各種病態者に使用しても高血糖にならないオクトレオチドが,本例で著明高血糖を誘発した理由としては,受容体差に加え適応現象としてのインスリン抵抗性が考えられた.
  • 宮内 俊一, 京楽 格, 野間 健之, 上野 浩晶, 塩見 一剛, 水田 雅也, 中里 雅光
    2006 年 49 巻 6 号 p. 435-439
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.これまで糖尿病を指摘されたことはなかったが,2004年5月中旬より異常行動がみられるようになり近医に入院.随時血糖317 mg/dl, HbA1C 13.5%. 入院後にけいれん発作が出現するようになり脳炎を疑われて,5月21日当科を紹介され入院した.入院直後の随時血糖は300 mg/dl以上,尿中C-ペプチドは5.1~21.9 μg/日,抗GAD抗体1.7 U/mlを示し,インスリン治療を開始した.ウイルス性脳炎と診断し,抗ウイルス薬,γ-グロブリン投与およびステロイドパルス療法を行った.その後中枢神経症状の改善とともにインスリン必要量が減少し,6月24日には完全にインスリンを離脱し,尿中C-ペプチドは233~262 μg/日と著明な改善がみられた.退院時には抗GAD抗体は0.3 U/ml未満まで低下した.短期間に著明な内因性インスリン分泌の改善が得られた興味深い症例であり,文献的考察を加えた.
  • 川地 慎一, 武田 純
    2006 年 49 巻 6 号 p. 441-444
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    49歳の2型糖尿病の男性.2000年にインスリン導入されたが自己中止となり,2001年6月に再開された.10月よりペンフィル®Nで掻痒をともなう局所の発赤を認めるようになった.徐々に増悪し,2002年1月に全身掻痒と呼吸苦が出現した.インスリン特異的IgEの上昇を認め,ヒトインスリンとプロタミンのいずれにも有意のアレルギー反応を認めたのでインスリンアレルギーと診断した.皮内テストでは各種インスリン製剤に即時型アレルギー反応を認めた.迅速脱感作が奏効しなかったので抗アレルギー剤を併用したところ,ペンフィル®Rとノボリン®Uに対する反応が抑制できたので,同療法にて退院となった.以降,皮下注射でアレルギーを認めなかった.2004年に特異的IgEの陰性を確認した上で,抗アレルギー剤を中止した.以後も再燃を認めず,脱感作に成功したと判断した.抗アレルギー剤の併用により脱感作できた稀有な全身インスリンアレルギーの症例である.
  • 金澤 寧彦, 鴫原 寿一, 大久保 佳昭, 工藤 純, 清水 信義, 島田 朗
    2006 年 49 巻 6 号 p. 445-449
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性.44歳時に糖尿病と診断されインスリン療法を開始.他医における経過観察中抗GAD抗体および抗サイログロブリン抗体陽性を認め,1型糖尿病および橋本病と診断され加療されていた.2003年1月血糖コントロール目的で当院入院の際,低カルシウム血症,高リン血症を認め,intact-PTHも4 pg/mlと低値であり,特発性副甲状腺機能低下症の合併と診断した.さらに,他の自己抗体(抗核抗体,抗リン脂質抗体,抗胃壁抗体,甲状腺自己抗体)も陽性であることが確認された.副腎機能に関しては正常であり,身体所見上尋常性白斑以外は特記すべき異常所見を認めなかった.本例は1型糖尿病,特発性副甲状腺機能低下症に橋本病,尋常性白斑を合併し,さらに種々の自己抗体陽性を認め,本邦でも稀な多腺性自己免疫症候群と考えられた一例であり,報告する.
コメディカルコーナー・原著
  • 近藤 慶子, 江川 克哉, 前川 聡, 西尾 善彦, 岩川 裕美, 中西 直子, 栗原 美香, 丈達 知子, 西野 幸典, 柏木 厚典
    2006 年 49 巻 6 号 p. 451-457
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病における動脈硬化発症の危険因子とされる食後高血糖,高インスリン血症,高脂血症と,高感度CRP (hs-CRP)との関係を検討するため,耐糖能異常者12例を対象とし75 g糖負荷試験(OGTT)およびテストミール負荷試験(MTT)を行い,負荷前から負荷後180分までの血糖,インスリン,TG, RLP-Cを測定し曲線下面積(AUC)とhs-CRPを比較した.空腹時においてインスリン,HOMA-R, BMIとhs-CRPに有意な相関がみられた.OGTT, MTTのインスリンAUCはhs-CRPと各々有意な相関がみられた.対象者をBMI 25 kg/m2で肥満と非肥満に分けて比較すると,インスリン,RLP-C-AUC, hs-CRPは,肥満者で有意に高値を示した.空腹時,負荷後ともに血糖や脂質ではなく,インスリン分泌量がhs-CRPと関係した.また,肥満では空腹時および負荷後インスリン,負荷後RLP-Cが高く,hs-CRPも高値であり動脈硬化のリスクが高いと考えられた.
  • —2型糖尿病患者に対する行動特性アンケート調査の結果から—
    筒井 秀代, 押田 芳治
    2006 年 49 巻 6 号 p. 459-463
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の行動特性とソーシャルサポートネットワーク利用能力との関連性について,「対人依存型行動特性尺度」,「自己抑制型行動特性尺度」,「情緒的支援ネットワーク尺度(家族内・家族外)」,「問題解決型行動特性尺度」,「特性不安傾向尺度」の5つの行動特性尺度(宗像ら2000)を用いて調査・分析を行った.また,血糖コントロールと各行動特性との関連を検討した結果,HbA1C 7.0%未満の患者群では,「対人依存型行動特性尺度と自己抑制型行動特性尺度間(p=0.012)」,「自己抑制型行動特性尺度と問題解決型行動特性尺度間(p=0.013)」の2尺度間で有意差がみられ,HbA1C 7.0%以上の患者群では,「自己抑制型行動特性尺度と問題解決型行動特性尺度間(p=0.019)」,「情緒的支援ネットワーク尺度(家族内)と特性不安傾向尺度間(p=0.008)」,「情緒的支援ネットワーク尺度(家族外)と特性不安傾向尺度間(p=0.011)」の3尺度間で有意差がみられた.ソーシャルサポートネットワークの形成が,糖尿病患者のセルフケア行動を高めるものの1つとして考えられた.
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