糖尿病
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51 巻, 5 号
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特集 臓器間クロストークによるエネルギー代謝調節
原著
  • 大村 昌夫, 藤林 和俊, 佐久間 伸子, 望月 和子, 荒木 理絵, 石田 早登美, 齊藤 寿一
    2008 年 51 巻 5 号 p. 403-410
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    短時間作用型インスリン(In)分泌促進薬であるナテグリニド(NG)のスルホニルウレア受容体(SUR)を介した内因性In分泌能(NGISA)と,内因性Inに対するIn感受性(IS)を同時に評価するNG負荷試験を考案し,2型糖尿病患者50例で検討した.NG 60 mg投与60分後のIn値(IRI60)は食事負荷2時間後の血中CPRと,IRI60とNG 60 mg投与前と投与後60分の血糖値で算出されるNG指数(NGI60)はIn負荷試験のブドウ糖消失率と良好な正の相関が認められた.ROC解析によりIRI60<7.8 μU/mlで血糖コントロールでのIn治療の必要性が,NGI60<1.0 0/000 min-1 μU-1でインスリン抵抗性改善薬の適応が判定可能と判明した.したがってNG投与前後2回の採血でNGISAとISを簡便に同時測定可能な本試験は,2型糖尿病の治療法選択上有用な情報を提供すると考えられた.
  • 内田 大学, 中村 晋, 山根 天道, 大西 俊一郎, 鈴木 佐和子, 龍野 一郎
    2008 年 51 巻 5 号 p. 411-418
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    従来からわが国ではアカルボースとボグリボースの2種類のα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)が用いられていたが,新しくミグリトールが臨床使用可能となった.一方,食後高血糖と食後高脂血症が共に心血管病合併に強く関与することが明らかとなってきたことから,これらを同時に評価できるような食事負荷試験食:テストミールAが開発された.そこで今回,2型糖尿病患者20名を対象にして,テストミールA負荷後の血糖・インスリンに対するミグリトールとボグリボースの効果を比較検討した.ミグリトールはボグリボースに比べて食後30分と60分の早期の血糖上昇をより強く抑制した.食後0分から120分までの血中インスリン変動の曲線下面積はミグリトールの方がボグリボースよりも有意に小さかった.結論として,ミグリトールはボグリボースに比べて食後早期の高血糖をより強く抑制すること,またその結果としてインスリン分泌をより強く抑制することが認められた.
  • 新見 道夫, 宮井 陽一郎
    2008 年 51 巻 5 号 p. 419-425
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    2005年に日本で公表されたメタボリックシンドローム(MetS)の新しい診断基準を用いて,われわれは2006年6月から10月の間に農村にある宮井内科医院を訪れ,健康診査に参加した住民のMetSの頻度について調査した.また,血清クレアチニン,尿酸,肝酵素,アルコール摂取,喫煙とMetSとの関連についても検討した.対象は健康診査を受け,ウエスト周囲径を測定し得た50∼92歳までの910名(男性316名,女性594名)であった.MetSの頻度は全体で13.8%であった.男性は21.2%, 女性は9.9%であった.頻度は女性に比し男性において2倍高かったが,これは腹部肥満が男性で46.5%, 女性で27.9%であり,男女の腹囲基準の違いが大きく反映していると考えられた.代謝異常に関する健診データに加え,一般生化学検査についても分析した.ALT, ASTとγGTPは男女ともMetSにおいて有意に高値を示した.尿酸値は女性のMetSで有意に高かった.MetSの血清クレアチニン値については男女とも正常群と有意な差が認められなかった.MetSと生活習慣である喫煙,アルコール摂取との関連は認められなかった.
    男性で心血管病イベントのリスクが女性の約2倍であるという報告があり,MetSの頻度の男女比に一致していた.このように心血管病予防のための観点から,日本のMetSの診断基準は適切であると考えられた.今後,心血管病を減らす目的のために,MetSの発症予防や治療対策が重要である.
  • 松浦 信夫, 竹内 正弘, 雨宮 伸, 杉原 茂孝, 横田 行史, 田中 敏章, 中村 秀文, 佐々木 望, 大木 由加志, 浦上 達彦, ...
    2008 年 51 巻 5 号 p. 427-434
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    小児において適応が認められていない,経口血糖降下薬メトホルミンの有効性,安全性を評価するために,臨床試験を行った.47名が試験に登録され,38名が試験を終了した.HbA1c値を指標とした主要評価項目では38名中30名(78.9%)が有効と判定された.HbA1c値,空腹時血糖など7項目を指標とした副次評価項目を経時的に比較検討した.試験開始前に比し12週,24週終了時でのHbA1c値,空腹時血糖は有意に低下した.乳酸値を含めた臨床検査値に異常なく,有害事象は47例中16例に,副作用は1例に認めたが,試験を中止するような重篤なものは認めなかった.
症例報告
  • —前日の食後血糖値を基準にして責任インスリン量を調節した3症例—
    山口 康平, 宮川 克俊, 中丸 和彦, 堺 弘治, 須小 毅
    2008 年 51 巻 5 号 p. 435-440
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    末梢性顔面神経麻痺または突発性難聴に対しハイドロコーチゾンを750 mg, 500 mg, 250 mg, 100 mg各3日間計12日間投与するという治療を行う際,糖尿病症例で高血糖を来した場合に適用する血糖管理プロトコールの有用性を3例について検討した.各食前のインスリンは超速効型インスリンアナログを用い,量の調節としては1日4回(朝食前と各食後)の血糖測定を行って前日の食後血糖値で当日の責任インスリン量を決定した.血糖値とインスリン量の関係は,130∼139 mg/dl→2単位減,140∼220 mg/dl→変更なし,221∼250 mg/dl→2単位増,251∼320 mg/dl→4単位増とした.これらの値をはずれるときのみ医師が決定した.本プロトコールを用いることにより比較的少ない血糖測定回数のもと,低血糖を起こすことは稀で,著明な高血糖を来さず,容易に血糖管理を行うことができた.以上,大量ステロイド療法中の血糖管理に際し,各食前の超速効型インスリンの使用法に関する,有用かつ安全と考えられるプロトコールを提唱した.
  • 大谷 隆俊, 浅香 なつ実, 須江 麻里子, 吉原 彩, 臼井 州樹, 土田 恭代, 廣井 直樹, 大内 博美, 比嘉 眞理子
    2008 年 51 巻 5 号 p. 441-444
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性.今までに糖尿病を指摘されたことはなかった.しかし,数年前より四肢の皮膚の乾燥と硬化があり,皮膚に亀裂が入りやすかった.平成18年1月より,左母趾に潰瘍が出現し改善がみられなかったため,近医の内科を受診した.この際,HbA1c 11.5%と高血糖を指摘され,当院へ紹介され入院した.入院時,皮膚は四肢末端の硬化と乾燥が著明で手指に拘縮を認めた.入院後は抗生剤の投与とインスリンによる血糖管理を行ったが,改善しないため,第20病日に左母趾切断術を施行した.四肢の乾燥と硬化は糖尿病性皮膚硬化症(diabetic digital sclerosis)と考えていたが,皮膚生検の結果と抗セントロメア抗体陽性より皮膚硬化症と診断した.内科医にとって日常診療において手指の観察も重要であり,diabetic digital sclerosisと皮膚硬化症の鑑別についての文献的考察も加え報告する.
  • 吉岡 修子, 加藤 二郎, 森 康一, 中村 二郎
    2008 年 51 巻 5 号 p. 445-449
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.20年前に糖尿病を指摘されインスリン治療中であった.入院半年前から血糖コントロールが悪化し1カ月前から食思不振,体重減少,さらに黄疸が出現し入院となった.CTでは膵臓にびまん性の腫大,胆管狭窄と後腹膜腫瘍,ERCPでは主膵管の不整狭窄を認めた.診断と治療目的で開腹術を行った.病理では胆管はリンパ球と形質細胞の浸潤,膵臓は腺組織の破壊と炎症性細胞浸潤が著明であった.悪性所見は認められず,自己免疫性膵炎,硬化性胆管炎および後腹膜線維症と診断し肝外胆管切除と胆管空腸吻合術を行った.ステロイド療法は行わなかったが血糖コントロールは改善し膵の腫大も後腹膜線維症も縮小し自然寛解の経過をたどった.自己免疫性膵炎では糖尿病が高率に合併しステロイド治療が奏効することが多いとされている.一方,自然寛解例の報告もあり,今後それぞれの経過や成因,病態の違いを明らかにしていくことが重要と考える.
コメディカルコーナー・原著
  • 田丸 裕子, 安藤 哲郎
    2008 年 51 巻 5 号 p. 451-456
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    陥入爪は爪の変形と不適切な爪切りなどから爪甲の縁が軟部組織に刺さり,疼痛と炎症を引き起こす,日常で遭遇する頻度が高い疾患である.本邦ではこれまで外科手術による根治術が選択されることが多かった.今回,われわれは超弾性ワイヤーを用いた保存的な陥入爪矯正法を導入した.これは彎曲した爪にワイヤーを挿入し,その復元力によって爪を矯正する治療法である.われわれは糖尿病患者に対するフットケアとして2004年7月より本方法を導入し,これまでに陥入爪を有する40名の糖尿病を原疾患とする維持透析患者に対して本治療法を施行した.ほぼ全例において満足できる成果が得られ,ワイヤー挿入に起因する深刻な合併症は認められていない.本方法は非侵襲的であり,比較的容易な方法でありながら十分な効果が得られたことから,透析患者の陥入爪に対しての有効な治療法と考えられた.
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