2005年に日本で公表されたメタボリックシンドローム(MetS)の新しい診断基準を用いて,われわれは2006年6月から10月の間に農村にある宮井内科医院を訪れ,健康診査に参加した住民のMetSの頻度について調査した.また,血清クレアチニン,尿酸,肝酵素,アルコール摂取,喫煙とMetSとの関連についても検討した.対象は健康診査を受け,ウエスト周囲径を測定し得た50∼92歳までの910名(男性316名,女性594名)であった.MetSの頻度は全体で13.8%であった.男性は21.2%, 女性は9.9%であった.頻度は女性に比し男性において2倍高かったが,これは腹部肥満が男性で46.5%, 女性で27.9%であり,男女の腹囲基準の違いが大きく反映していると考えられた.代謝異常に関する健診データに加え,一般生化学検査についても分析した.ALT, ASTとγGTPは男女ともMetSにおいて有意に高値を示した.尿酸値は女性のMetSで有意に高かった.MetSの血清クレアチニン値については男女とも正常群と有意な差が認められなかった.MetSと生活習慣である喫煙,アルコール摂取との関連は認められなかった.
男性で心血管病イベントのリスクが女性の約2倍であるという報告があり,MetSの頻度の男女比に一致していた.このように心血管病予防のための観点から,日本のMetSの診断基準は適切であると考えられた.今後,心血管病を減らす目的のために,MetSの発症予防や治療対策が重要である.
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