糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
25 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 横川 泰, 桶田 俊光, 山口 啓輔, 小野 順子, 高木 良三郎, 丸山 昭治
    1982 年 25 巻 6 号 p. 655-660
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    凍結保存は, 生体の各種細胞を維持する上に欠くことのできない手段であり, 最近膵ラ氏島の凍結法についても報告がみられるようになった.一般に凍結保存は臓器あるいは組織で行うより, 細胞で行う方が形態学的, 機能的に維持されやすいと言われる.本実験では, ハムスター膵ラ氏島を単個細胞に分散し, program freezerにより冷却速度を調節して液体窒素中に保存することを試みた.10℃ より-40℃ まで毎分0.5℃ で冷却し, さらに-70℃ まで毎分5℃ で冷却して液体窒素中に保存した場合, 解凍後の生細胞回収率は61.2±3.1%で, 10℃ より-70℃ まで毎分1℃ で冷却した場合の45.6±5.6%よりすぐれていた.これは, 同様の方法で凍結した組織培養株細胞の生細胞回収率に匹敵するものであった.解凍後の細胞はhematoxylin eosin染色により形態的によく保たれており, また大部分の細胞はaldehyde fuchsin染色に陽性を示した.これらの細胞をブドウ糖3mg/ml又はテオフィリソ10mMで刺激すると, 凍結前の細胞と同様のインスリン分泌増加が認められた.また凍結保存したラ氏島細胞は, ラ氏島細胞膜抗体陽性ヒト血清とfluorescent isothiocyanate (FITC) 標識抗ヒトγ グロブリン血清により螢光が認められラ氏島細胞膜抗体 (ICSA) 検索に応用しうることが分った.
  • 尾崎 史郎
    1982 年 25 巻 6 号 p. 661-664
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    レセプター結合後のインスリン代謝を明らかにする目的でラット肝cytosal中に存在するインスリン分解酵素をもちい, 標識インスリン (1) 及び標識インスリン・レセプター複合体 (IR) を基質とし検討した.酵素によるI及びIRの分解実験よりIRはIにくらべよい基質にならないことが明らかとなった.
    非標識インスリンはIRよりのIの解離を促進させるが同時に標識インスリンの分解も促進させた.非標識インスリンの存在下及び非存在下でのインスリン解離速度及び分解速度を測定したところ, 論理的に算定した値と実際に測定した値はよく一致した.それ故, レセプターに結合した標識インスリン由来のすべての分解産物はレセプターより解離したインスリンであろうと推定された.
  • 小田桐 玲子, 平田 幸正, 明石 弘子, 出村 博
    1982 年 25 巻 6 号 p. 665-672
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    健常者35例, 糖尿病患者315例につき, Radioimmunoassay (一抗体法・ポリエチレングリコール法) による血清トリプシン濃度を測定した.
    結果
    1. 空腹時血糖値の上昇にしたがい血清トリプシン (IRT) 値は低下するのがみとめられた. (r=-0.25)
    2. 24例の未治療糖尿病患者に759ブドウ糖負荷試験を施行.負荷後の血清IRTは血糖値の上昇による変化はみとめられなかった.
    3. 非インスリン依存性糖尿病患者において, 食事療法単独群 (49例), 経口血糖降下剤使用群 (75例), インスリン治療群 (86例) の3群における空腹時血清IRTは, それぞれ26.5±10.5ng/ml (M±SD), 28.0±10.6ng/ml, 23.0±9.5ng/mlであり, 35歳以上の健常者の36.0±9.1ng/mlに比し低値であった (p<0.05).
    4.インスリン依存性糖尿病37例の血清IRTは, 12.5±8.0ng/mlであり, 35歳未満の健常者の血清IRT29.7±8.1ng/mlより著しい低値であった (p<0.001).又膵疾患を有する糖尿病患者では12.5±10ng/mlと著しく低値であった.
    5. 糖尿病性腎症を有するもの10例の血清IRTは, 54.0±16.8ng/mlと35歳以上の健常者の36.0±9.1ng/mlより高い値であった (p<0.01).
    6. 糖尿病性網膜症, 糖尿病罹病年数と血清IRTとは, 今回の検討においては関係がみとめられなかった.
    7.年齢, アルコール飲酒は血清IRTに影響を及ぼすようであった.
  • 島 健二, 田中 彰, 田畑 真佐子, 熊原 雄一, 井山 茂
    1982 年 25 巻 6 号 p. 673-679
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    合成ペプチッド, ベンチロミドのαキモトリプシンによる加水分解で生ずるパラアミノ安息香酸尿中排泄率 (pancreatic function diagnostant, PFD値) を指標に一次性糖尿病患者の膵外分泌機能を, 特に残存膵B細胞機能との関連において検討した.
    1) 糖尿病患者群 (n=53) のPFD値は62.5±11.7 (M±SD)%で正常対照群 (n=29) のそれ, 73.9±7.4%に比し推計学的に有意 (pく0.005) に低値であった.
    2) PFD値は患者の年齢, 病型, 罹病期間別に比較しても有意の差を示さなかったが, コントロール状態, 治療法により有意差があった, コントロールpoor群のPFD値は53.1±10.4%でgood群 (64.8±8.7%), fair群 (66.4±12.4%) に比し低値であった.また, 食事療法群の値, 69.6±8.7%はインスリン群 (60.0±12.0%), 経口剤群 (61.0±11.5%) に比し高値であった.
    3) 5090GTT時のIRI, CPRの増加分泌総量ΣΔIRI, ΣΔCPRを残存膵B細胞機能の指標とした場合, 対象糖尿病患者群の値はΣΔIRI150~3,000μU・min/ml, ΣΔCPRO~400ng・min/mlに分布し, 患者間の残存膵B細胞機能は著しく相違した.一方, PFD値は34.9~88.0%に分布し, 残存膵B細胞機能とは有意の相関関係を示さなかった.
    以上の成績はPFD値がB細胞内インスリンそのものによって規制されるものでなく, 糖尿病患者にみられるPFD低値はインスリン欠乏による代謝障害の二次的結果であることを推定せしめるものである.
  • 野木 孝眞, 永野 聖司
    1982 年 25 巻 6 号 p. 681-689
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者についてPostheparin Lipolytic Activity (PHLA) を測定し, インスリン分泌能, 血糖コントロール, 血清トリグリセライド (TG), HDLコレステロール (HDL-C) 等との関連性を検討した.又, PHLA測定時の基質液はイントラリピッドに健常人血漿を加えたものを用いたが, 健常人血漿の代わりに患者血漿を用いることによりアポ蛋白の影響を間接的に検討した.
    1) PHLAはΣIRI (p<0.05), ΣIRI/Body weight (p<0.02) と正の相関関係を示した.2) FBS, HbAIとは相関関係を認めなかった.3) HDLCと正の相関関係を認めた (p<0.05).4) 糖尿病患者では血清TGが高値を示す群ほどPHLAが高くなる傾向を示した。5) PHLA高値を示した高TG患者血漿を基質液とした場合, 正常人血漿を基質液とした時よりもPHLAは上昇を示した.6) 著明なPHLA低下を示したネフローゼ患者血漿を用いた場合には, PHLAは抑制された.
    以上よりPHLAは血糖コントロールとは関係せず, 単位組織あたりのインスリン濃度とより強い関係を示した.又, 高TG糖尿病やネフローゼでは, アポ蛋白の異常がPHLAに影響する可能性が考えられた。
  • 萬田 直紀, 中山 秀隆, 青木 伸, 佐藤 光男, 門田 悟, 小森 克俊, 黒田 義彦, 皆上 宏俊, 牧田 善二, 中川 昌一, 工藤 ...
    1982 年 25 巻 6 号 p. 691-696
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血清アルブミンは, ヘモグロビン (Hb) AICと同様の機序でグルコースと非酵素的に結合し, glucosylated albumin (G-A) を形成する.われわれは, G-Aについてその測定法および臨床応用への有用性を検討した.
    血清アルブミンの分離は, affinity chromatographyで行なった.しかし, これまで報告されている方法では回収率が低く, アルブミン以外のタンパクも混入していた.そこで, 緩衝液を検討しカラム流出液をrecirculationした結果, 比較的短時間で単位ml当り高濃度のアルブミンを得ることができ, アルブミン以外のタンパクはほとんど含まれていなかった.
    2.5~15mg/mlの範囲内の同一溶出アルブミンを用いthiobarbituric acid (TBA) 法により, 5-hydroxymethylfurfural (HMF) の吸光度をそれぞれ測定した.この範囲内の濃度のアルブミンとHMFの吸光度との間に直線関係が得られた.同一, 一定濃度の溶出アルブミンを100℃, 1, 3, 4.5, 6時間加水分解を行ない, その吸光度をそれぞれ測定した結果, 加水分解条件を100℃, 4.5時間とした.G-A値とHbAI値との間に有意の正相関 (r=0.84, p<0.001) を認めた.糖尿病入院患者の過去1カ月以内の平均空腹時血糖値 (FBS) とG-A値との関係を検討した結果, G-A値と採血前2週間の平均FBSとの間の相関 (r=0.67) は, 採血時FBS, および過去4週間の平均FBSとの相関に比して高い傾向を認めた.未治療若年型糖尿病入院患者の治療開始直後より, FBS, G-A, HbAIの推移を検討した結果, G-Aの低下率とHbAIの低下率との問には, 1, 2, 3, 4週目で有意な差があり前者の方が高かった.
  • 腎糸球体機能との関係
    相楽 衛男, 工藤 幹彦, 八代 均, 牧野 勲, 武部 和夫
    1982 年 25 巻 6 号 p. 697-704
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    生体におけるZnの日内変動, 日差変動の特徴を検索し, creatinine clearance (Ccr) を指標として糖尿病性腎症における軽症より重症に至る過程でのZn代謝を検討した.早朝空腹時にCcrを施行し, この血清および尿より血清Zn濃度, 尿中蛋白濃度, 尿中Zn濃度, 分時尿中蛋白排泄量 (尿中蛋白排泄量), 分時尿中Zn排泄量 (尿中Zn排泄量), Zn-clearance (Czn), Czn/Ccrを測定し以下の結果を得た.
    1. 治療別では健常者群の血清Zn濃度は81.2±3.2μg/dl (Mean±S. E.以下同じ), 尿中Zn排泄量は18.7±5.1×10-2μg/minであった.これに比して糖尿病患者群の血清Zn濃度は経口剤群 (P<0.01), Insulin群 (P<0.001) で有意の低値を示し, 尿中Zn排泄量ではInsulin群のみ有意の高値を示した (P<0.01)
    2. 尿中蛋白濃度と尿中Zn濃度の関係では有意の一次相関を認めた (Y=0.73X+18.9, r=0.570, p<0.001)
    3. Ccrと血清Zn濃度の常用対数との間に有意の相関を認めた (y=47.7 Log X-19.0, r=0.656, P<0.0001)
    4. 尿中蛋白排泄量はCcrが低下するに従い著明に増大し, 尿中Zn排泄量はCcr55~70ml/minおよび100~115ml/minの域で健常者に比し有意に増加した (p<0.001).CznはCcr75ml/min未満および100ml/minの各域で健常者群に比し有意に増加した.Czn/CcrはCcrが低下するにつれて著明に増大した.以上から糖尿病性腎症が軽症の場合はZn排泄は蛋白排泄と密接な関係があるが, 中等症から重症に至る過程では能動的にZn排泄を促す物質の出現を窺知させ, 生体Znは欠乏する事を示唆している.
  • インスリン注入動態と合併症の変化
    鴨井 久司, 大滝 英二, 青柳 隆一, 荒井 奥弘, 平井 和子, 川瀬 康裕, 村山 正栄, 安藤 伸郎
    1982 年 25 巻 6 号 p. 705-711
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    従来のインスリン注入法ではコントロール困難であった不安定糖尿病2症例に対して小型の携帯型微量注入ポンプ (Sp-5) を用いてインスリン持続皮下注入法による治療 (以下CSIIと略す) を試みた.症例1は男性47歳, 15年間のインスリン療法歴があり, 高度の糖尿病性心筋症による心機能障害, 網膜症 (Scott III b), 腎症, 末梢神経障害を合併していた.血糖状態はHbAIC10.2%, Mean Blood Glucose 370~181mg/dl, M-Value 150~58と不安定型を示した.症例2は女性51歳1年間のインスリン療法歴がありMBG 327~218mg/dl, M-Value167~82, Mean Amplitude of Glycemic Excursion 267~257mg/dlと同様に著しい不安定型を示した.Sp-5によるCSIIは比較的, 生理的分泌に近いインスリン注入型を示し, 使用後の入院時における症例1, 2のMean Blood Glucoseは124,117mg/dl, M-Valueは10.5, 8.6, Mean Arnplitude of Glycemic Excursionは60, 49mg/dlで退院後もそれぞれ92mg/dl, 11.626mg/dlを示した.高, 低血糖発作は完全に消失し, 従来と同様の日常生活が可能となった.症例1での網膜症は増悪傾向が認められたが, 心, 腎機能障害は著明な改善を認めた。
    本邦でのCSII療法は未だ特定の研究機関で試みられているにすぎないが, 一般日常臨床の場でも使用可能と思われる.
  • 1982 年 25 巻 6 号 p. 713-740
    発行日: 1982/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
feedback
Top