糖尿病
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25 巻, 8 号
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  • 基礎的検討と静注後の血中動態
    梶沼 宏, 市川 勝之, 赤沼 安夫, 小坂 樹徳, 葛谷 信貞
    1982 年 25 巻 8 号 p. 869-875
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血中gliclazide濃度を測定するために, そのmdioimmunoassay (RIA) について検討した.
    gliclazide分子のazabicyclooctyl環部分を修飾して, これにウシ血清アルブミンを結合させたものを抗原としてモルモットを免疫し, 抗血清を作製した.この抗血清はtolbutamideと6.6%, chlorpropamideと13.5%の交差反応性を示したが, gliclazideの代謝物や他の経口糖尿病剤とはほとんど交差反応性を示さなかった.必要検体量は10μl, 最小検出濃度は0.25μg/ml, intra-, interassay C.V.はそれぞれ5%, 6.9%であった.添加したgliclazideの回収率は97.9土4.9%であった.反応は15分以後plateauに達したが, incubation timeとして2時間を採用した.
    RIAによる測定値はgas-liquid chromatographyによる測定値とよく一致した (r=0.994).
    以上のようにこのRIAは, 感度, 精度, 特異性, 再現性の点ですぐれており, 検体量が少量ですみ, 簡便, 迅速に測定できる利点を有しており, 臨床応用に適していると考えられる.
    正常イヌ6頭にgliclazide 10mgを静注すると, 10分で頂値に達したのち急速に減少する第1相 (半減期14分) と, これに続いて緩徐に減少する第2相 (半減期11.6時間) が認められた.
  • 経口投与後の血中動態
    梶沼 宏, 市川 勝之, 赤沼 安夫, 小坂 樹徳, 葛谷 信貞
    1982 年 25 巻 8 号 p. 877-883
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    正常イヌ6頭および健常人7名にgliclazide 40mgを経口投与した際の血中gliclazide濃度を, 前報で報告したradioimmunoassayによって測定し, その変動を観察した.
    1回投与によって, イヌでもヒトでも平均2時間で血中濃度は頂値に達したのち漸減する一相性変化を示したが, その平均血中半減期はそれぞれ12.8時間, 16.5時間であった.個々の例ではバラツキがあり, 頂値に達する時間はイヌで1.5~10時間, ヒトで1~6時間, 半減期はイヌで10.3~15.5時間, ヒトで5.5~31.0時間に分布した.
    5日間にわたって毎朝1回gliclazide 40mgを経口投与した際の血中濃度は, イヌでもヒトでも空腹時値, 投与後2時間値ともに第2日以後それぞれほぼplateauに達した.
    gliclazideを6ヵ月以上にわたって毎日服用している糖尿病患者37例につき, 1ヵ月間隔で4~5回, 計175回早朝空腹時の血中gliclazide濃度を測定した.血中濃度は投与量との間に有意の正の相関 (r=0.49) を示したが, 少量服用者の中に血中濃度の高いものがみられる反面, 大量服用者の中に血中濃度がきわめて低いものがみられ, 各投与量群内のバラツキが大きかった.その原因として, 血中動態の固体差やcomplianceの問題について考察を加えた.
  • N-benzoyl-L-tyrosyl-p-aminobenzoic Acid (BT-PABA), PABA経口負荷試験による検討
    南條 輝志男, 江本 正直, 松谷 秀俊, 近藤 渓, 三家 登喜夫, 野村 佳成, 森山 悦裕, 木村 茂, 宮野 元成, 岡井 一彦, ...
    1982 年 25 巻 8 号 p. 885-890
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    BT-PABA経口負荷試験 (PFD test) にPABA経口負荷試験 (PABA test) をも併せて施行することにより, 糖尿病患者 (DM) の膵外分泌機能について検討を加えた.その結果
    1) 未治療DMでは, 1ヵ月間の治療後には治療前に比しPFD testの成績が有意 (P<0.001) の上昇を呈した.
    2) 過去3カ月間の治療法に変更がなく, 腎・肝機能検査成績が正常範囲内のDM 122名のPFD testは70.3±12.2%(Mean±SD) と正常者 (N) の78.9±8.5%に比し有意 (P<0.001) の低値であり, その程度は罹病期間の長い者, 空腹時血糖値 (FBS) の高い者, 糖尿病性網膜症が重症の者程著明であった.
    3) PABAの吸収から尿中排泄に至る諸因子の影響を相殺するためPFD/PABA radoでみると, DMでは84.0土14.5%とNの93.6土10.3%に比し有意 (P<0.05) の低値であったが, その程度と上述の諸因子との関連性はほぼ認められなかった.
    以上よりDMにおいて膵外分泌機能を調べるためには, 血糖のコントβ-ル状態が一定になった時点でPFD testを施行し, その結果が異常低値の場合はさらにPABAtestの施行が必要であり, PFD/PABA ratioも低値の時のみ膵外分泌機能障害の存在がうかがえるものである.
  • 小浜 智子, 大森 安恵, 嶺井 里美, 秋久 理真, 本田 正志, 平田 幸正
    1982 年 25 巻 8 号 p. 891-898
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病妊婦におけるインスリン需要量の変化が, インスリン抗体の推移と関連がないかどうか, また, 新生児低血糖が, インスリン抗体と関連がないかどうかを知るために, 妊娠全経過を通してインスリン治療を行った17名の糖尿病妊婦20分娩例において妊娠前期, 中期, 後期, 分娩後に125I-インスリン結合率を測定した.125I-インスリン結合率が後期において5%以上の低下を示した症例において同血清にて遊離インスリンを測定した.
    20例の糖尿病妊婦における平均125I-インスリン結合率は, 妊娠前期21.2%, 中期21.1%と不変であり, 妊娠後期17.6%と低い傾向を示し, 分娩後24, 6%と再び上昇した.新生児低血糖を伴った5例における母体妊娠後期の125I-インスリン結合率は低血糖を伴わなかった群に比し有意に高値を示した (p<0.05).後期において125I-インスリン結合率の低下が, インスリン需要量の増加に反してみられた11例中5例において遊離インスリンの上昇が認められた.
    妊娠後期においてインスリン結合率の高値なものに新生児低血糖が起こりやすいという事実は, 母体インスリン抗体の胎児膵への影響を示唆するものと考えられた.
  • 本田 正志, 大森 安恵, 嶺井 里美, 東 桂子, 秋久 理真, 小浜 智子, 平田 幸正, 大内 広子, 石 和久
    1982 年 25 巻 8 号 p. 899-907
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病妊婦の妊娠末期に起こる子宮内胎児死亡の主な原因と考えられる胎盤機能不全を病理組織学的にとらえる目的で, 糖尿病妊婦胎盤20例を対象として, Point Count法を用いて終末絨毛系の組織計測を行ない, その特徴を観察した.
    Villous AreaおよびSyncytial Knottingの組織計測値が終末絨毛系に占める割合は, 正常妊婦胎盤に比較して糖尿病妊婦胎盤で有意に高値を示した.Trophoblastの組織計測値が終末絨毛系に占める割合は糖尿病妊婦胎盤で有意に低値を示した.Intervillous Fibrin Depositの組織計測値が終末絨毛系に占める割合は両群で有意差は認められなかった.
    Trophoblastの組織計測値に対するSyncytial Knottingの組織計測値の比の比較では, 正常妊婦胎盤に比較して糖尿病妊婦胎盤で低値を示した.
    網膜症陽性糖尿病妊婦胎盤と網膜症陰性糖尿病妊婦胎盤の終末絨毛系の各組織計測値の比較では, Villous Area, Trophoblast, Intervillous Fibrin Depositでは両群に有意差は認められなかったが, Syncytial Knottingは網膜症陰性群に比較して網膜症陽性群で有意に高値を認めた.
    臨床的にいまだ胎盤機能不全を認めない時点においても, 糖尿病妊婦胎盤は機能不全に連なる状態にある所見が得られた.
  • 菊池 和義
    1982 年 25 巻 8 号 p. 909-914
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病における網膜出血 (以下, 出血と略す) と血漿soluble fibrin monomer complexes (以下SF MCと略す) 濃度との関係を明らかにする目的で, 糖尿病11例 (男5, 女6例, 年齢48~70歳, 平均59.9歳罹病年数平均7.8年) を対象とし, 15カ月間にわたり眼底検査を施行, この間に認められた出血と静脈血SFMC濃度との関係を調ベた.一方, SFMC濃度の異常高値と血管障害との関連を明らかにする目的で, SFMCの血中よりの半減時間を, 正常家兎ならびにendotoxin 13γ/kg処置家兎で求め, 比較検討した.
    11例中10例で網膜出血を, 1例で硝子体出血をみた.出血後1ヵ月以内のSFMC (16.1±6.3mg/100ml) は, 観察開始時のそれ (6.6土6.3mg/100ml) ならびに出血直前の値 (9.9土5.7mg/100ml) より有意に上昇した (それぞれP<0.01.P<0.05).しかし, 3例 (No.1, 8, 11) においては出血に先行してSFMCは異常高値を示した.血漿fibrinogen (以下, Fbgと略す) 濃度は, 出血直後 (318.9±74.8mg/100ml) は出血直前 (294.9±39.0mg/100ml) より高い値を示した症例が多かったが有意差はなかった.早朝空腹時血糖値には有意な変動はみられなかった.SFMC濃度の半減期時間は, 正常家兎で平均30分であったがendotoxin前処置家兎で平均4分と, 著しく短縮した.
    以上より, 出血とSFMC濃度の上昇とは関係が深く, むしろ, 血管内でのthrombin発生, SFMC濃度の上昇にひきつづき出血が起こった可能性が大きいと考えられる.しかも, SFMCの血中よりの半減時間よりして, thrombin発生は, 短時間内に頻回に起こったものと推察される.SFMC濃度の高値が血管障害をさらに増強させるか否かは, 今後, 検討を要すると思う.
  • 生命予後および死因に関する検討
    佐々木 陽, 上原 ます子, 堀内 成人, 長谷川 恭一
    1982 年 25 巻 8 号 p. 915-922
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の長期にわたる経過ならびに生命予後を検討することを目的として, 昭和53年から組織的なfbllow-upを開始した.対象は, 昭和35年以降当センターを受診し, 登録されている糖尿病患者1,850名 (男1,132名, 女718名) で, 昭和55年末までの平均観察期間は6.3年であった.
    1) 生死の確認は受診中断者を対象に, アンケート調査, 市区町村役所への住民票の照会, 患者への直接連絡などを行った.その結果, 生存1,536名, 死亡313名が把握され, 生死不明は1名を残すのみとなった.
    2) 平均年間死亡率は男3.11%, 女1.96%, また, 期待死亡数に対する実死亡数の比 (O/E比) は, 男1.74, 女1.56で, 男に過剰死亡が多くみられた.また, 初診時年齢の若いものほどO/E比が高くなる傾向がみられた.
    3) 発病時年齢45歳未満, 初診時収縮期血圧160mmHg以上, 蛋白尿 (+), 空腹時血糖値200mg/dl以上, 2時間値300mg/dl以上, また観察期間中のコントロール不良のもの, インスリン治療群は生命予後が不良であった.
    4) 死因は脳心腎血管疾患が最も多く, その内訳は脳血管疾患, 心疾患, 腎疾患の順であるが, 国民一般と比較すると腎疾患の増加がとくに著しく, 次いで心疾患, 脳血管疾患の順となる.また, 悪性新生物は全死因の1/4を占め, 肝がん, 膵がんの増加が著しい.また肝硬変の増加も注目されたが, これはわが国の糖尿病に特徴的な現象と考えられた.
  • 三輪 梅夫, 山村 敏明, 吉光 康平, 長谷田 祐一, 佐藤 隆, 小野江 為久, 大家 他喜雄, 坂戸 俊一, 中林 肇, 竹田 亮祐
    1982 年 25 巻 8 号 p. 923-929
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    軽度肥満の66歳男子で, 高浸透圧性非ケトン性昏睡発症後, 18カ月以上にわたりインフルエンザAH3型ウィルスに対する血中抗体価が著しい高値 (×512~×2048) を持続し, 発病初期に血中膵島細胞膜抗体 (ICsA) 陽性を示した症例を報告した.HLAタイピングではA2, BW4, B7であった.
    本例にみられた糖尿病が, インフルエンザウィルスによる膵島炎であるという直接的証拠はないが, ICAないしはICsAは臓器特異性の高い, 免疫応答で出現する液性抗体とみなされるので, その陽性所見は膵島炎の傍証といえる.また, 発症時期に一致してICsAが証明され, インスリン非依存となった時点で陰性化した事実も, ウィルスと糖尿病の病因的関連を強く支持する.臨床経過と上述の所見から本例の膵障害は一過性で可逆性の段階にあったと想豫される.
  • 1982 年 25 巻 8 号 p. 931-949
    発行日: 1982/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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