日本耳鼻咽喉科学会会報
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100 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 佐藤 公則, 柏木 彰一, 平野 実
    1997 年 100 巻 5 号 p. 479-483
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    新生児の声帯膜様部を透過型電顕で観察した. 1) 声帯の粘膜上皮は薄いが, 細胞間隙は非常に狭く, 細胞どうしが密に接し, desmosomeが比較的多く認められた. 粘膜上皮の細胞どうしがより強く接着していると考えられた. 2) 声帯粘膜上皮の基底膜および基底部の接着装置はほぼ完成していた. 声帯粘膜上皮と粘膜固有層の支持的機能がすでに十分に備わっていると考えられた. 3) 粘膜固有層は基質が豊富で線維成分の発達は乏しかった. 膠原線維は成熟した構造であったが, 弾性線維は未熟な構造であった. 新生児の声帯は振動体として必要な粘膜の粘弾性が乏しく, 振動に適した構造ではないことが示唆された.
  • 八尾 和雄, 高橋 廣臣, 稲木 勝英, 中山 明仁, 馬越 智浩, 鈴木 立俊, 新田 光邦, 伊藤 能成, 広島屋 孝
    1997 年 100 巻 5 号 p. 484-491
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    過去25年間に経験した舌顆粒細胞腫の5症例に対してその臨床的および病理組織学的特徴を検討し, 本腫瘍の細胞起源の知見および本腫瘍が良性腫瘍であるか腫瘍様増殖疾患であるかを示した. 男女比は2対3で女性に多く, 長径は3から10mmまでの無痛性腫瘤であった. HE染色と免疫染色による本腫瘍の起源は横紋筋系, 神経系細胞由来が考えられると同時に筋上皮細胞由来と考えられる症例があった. 腫瘍としての潜在能力は上皮直下で旺盛であり, 被膜の有無から3例は良性腫瘍の性格をもつが, 他の2例は増殖性疾患と考えられた. 上皮組織に沿った増殖があることより摘出に注意が必要である.
  • 野口 佳裕, 大柿 徹, 角田 篤信, 小松崎 篤, 村岡 秀樹
    1997 年 100 巻 5 号 p. 492-498
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    第VIII脳神経血管圧迫症候群における特徴的所見の有無を知る目的で, 顔面痙攣を認める例の中でめまいや難聴を呈し, しかも画像上NVCが疑われた5例を対象として, 臨床経過・検査上の特徴があるかどうかを検討した. 臨床経過は, 良性発作性頭位眩暈症様, 前庭神経炎様, メニエール病様などと多彩であり, 特徴的な症状は認められなかった. 温度眼振検査における機能廃絶所見やABRの異常は, 診断に有用と考えられた. しかし全例に共通する所見ではなく, 検査上も特徴的な所見は得られなかった. 以上より第VIII脳神経血管圧迫症候群に特徴的な所見はなく, 確定診断は困難と考えられた. 従って本疾患の手術適応は慎重になされるべきと思われた.
  • 消化法を用いた走査型電子顕微鏡による観察
    山下 耕太郎
    1997 年 100 巻 5 号 p. 499-511
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    声帯の物理的特性に深く関与すると思われる粘膜固有層の膠原線維と弾性線維の形態の年齢的変化を検討した. 在胎20週胎児より22歳までの剖検症例32例より得られた声帯を用い, 膠原線維の観察のためには, 10%水酸化ナトリウム処理を, 弾性線維の観察のためには, 90%蟻酸処理を行い, 走査型電子顕微鏡にて観察した. その結果, 胎児・新生児では, 声帯粘膜固有層は膠原線維と弾性線維の疎な部分と密な部分から構成されており靱帯構造は認めなかったが, 5歳までには, 深部の密な部分は前・後黄斑に分かれ, その間に長軸方向に走行する線維群が形成されていた. その後10歳代には浅層と深層の分化が出現し, 17歳頃には層構造の完成に近づいていた.
  • 弦本 日芳, 高村 博光, 高崎 賢治, 吉見 龍一郎, 小林 俊光
    1997 年 100 巻 5 号 p. 512-517
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻粘膜及び鼻茸にて免疫組織学的検討を行い, これらの組織にγδT細胞が存在することを確認するとともに, その局在について検討した. 全T細胞に対するγδT細胞の割合, すなわち陽性率を見ると, 鼻アレルギー下甲介粘膜では粘膜固有層浅層, 上皮層と上皮に近づくにつれ, その陽性率が増加しているのに対し, 非アレルギー性鼻粘膜では浅層, 上皮層への片寄りは見られなかった. また, 鼻茸におけるγδT細胞の陽性率は部位による片寄りは見られず全層で比較的高い率を示した. さらに鼻アレルギー患者に抗アレルギー剤を投与し, その前後でγδT細胞の陽性率の変化を検討したところ, 投与後では非アレルギーの鼻粘膜に類似した陽性率の変化を示した. これらの検討により鼻粘膜におけるγδT細胞の特異的免疫に果たす役割が示唆された.
  • 木村 寛, 浅井 正嗣, 麻生 伸, 渡辺 行雄, 藤坂 実千郎
    1997 年 100 巻 5 号 p. 518-523
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    Shapiroらのいうadult supraglottitisとは, 声門より上部の喉頭と咽頭に多発性の急性炎症をきたす疾患である. 今回, 本邦の急性の声門上炎の臨床像を明確にし, 急性喉頭炎の範疇の特異型として成立するか否か臨床的に15例を検討した. 症状は, 激しい咽頭痛9例, 嚥下困難4例の順であった. 咽喉頭の主病変は, 披裂喉頭蓋ひだと披裂部であった (13例/15例). 披裂喉頭蓋ひだと披裂部に著しい炎症所見を認めた5例は, いずれも嚥下時の耳放散痛を訴えた. 細菌検査では, Strep. pyogenes, Strep. pneumoniae, α-Strep., Staph. aureusが1例ずつ検出された. 治療は, PIPC, CLDM, FMOX, ASPC, CTMによる点滴と, 必要に応じてステロイドを静注し, 全例, 完治した. この比較的激しい臨床症状および喉頭炎, 喉頭蓋炎とも異なる局所所見より本症は, 急性喉頭炎の中の特殊型の一つと考えられた.
  • 高野 郁晴, 田村 真司, 山中 昇
    1997 年 100 巻 5 号 p. 524-533
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌におけるHPVの関与, およびp53蛋白発現を検索し, 臨床事項と比較検討した. p53蛋白発現の検索には免疫組織化学的手法を, HPV DNAの検索にはPCR法を行った. p53陽性率は50%で, p53陽性症例は陰性症例に比べ有意に低い生存率を認めた. p53蛋白の検索が新たな予後因子になりうると考えられた. HPV DNAは10%に検出され, 中咽頭癌において, HPV DNA陽性症例では陰性症例に比べ有意に高いCR率を認め, HPV DNAの検索が予後判定および治療法の選択に有用である可能性が示された.
  • 嚥下障害 (MRI, 嚥下圧)
    進 武幹, 大谷 信二
    1997 年 100 巻 5 号 p. 534-537
    発行日: 1997/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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