日本耳鼻咽喉科学会会報
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104 巻, 2 号
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  • 小林 健彦, 堤 康一朗, 桑原 大輔, 岩武 博也, 高桑 俊文
    2001 年 104 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2001/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    アポトーシスは多段階発癌過程を含む様々な生物学的過程において重要な役割を演じる. ヒトパピローマウイルス16型 (HPV16) によって不死化されたヒト上皮細胞はほとんどの場合ヌードマウスへの造腫瘍性を持たず多段階発癌機構を解析するために有用な材料である. われわれは以前にHPV16不死化ヒト喉頭上皮細胞株 (HLEC16) を4- (methylnitrosamine) -1- (3-pyridyl) -1-butanoneで処理することによってヌードマウスへの造腫瘍性を示す細胞株 (HLEC16T) を樹立したことを報告した. 本研究の目的は, ヌードマウスへの造腫瘍性を持たないHLEC16とヌードマウスへの造腫瘍性を獲得したHLEC16TのFas受容体蛋白 (Fas) を介するアポトーシスへの感受性を比較することである. HLEC16, HLEC16T共にFasを発現しFas-ligand (FasL) mRNAは発現していなかった. 抗Fasモノクローナル抗体 (CH11) でHLEC16とHLEC16Tを処理し誘導された細胞死を検討したところ, HLEC16TはHLEC16と比較してCH11誘導性細胞死に対する感受性が低いことがわかった. ウエスタンブロット解析ではアポトーシス誘導蛋白であるBaxの発現レベルはHLEC16とHLEC16Tで差を認めなかったが, アポトーシス抑制蛋白であるBc1-2とBc1-XLの発現レベルはHLEC16Tで上昇していた. これらの結果はアポトーシス抑制蛋白の過剰発現によるFasを介したアポトーシスの抑制がHLEC16Tのヌードマウスへの造腫瘍性獲得機構に関与している可能性を示唆する.
  • 藤吉 達也, 岡坂 健司, 吉田 雅文, 牧嶋 和見
    2001 年 104 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 2001/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    Streptococcus milleri groupは口腔等の粘膜面常在菌ながら, 歯性感染のみならず全身の化膿性疾患の原因となることが重要視されているが, 深頸部感染症の病態へのかかわりについてはほとんど注目されていない. そこで本菌種が検出さた9症例を報告するとともに, 本菌種の検出頻度を調査した. 9症例の原因疾患は, 急性咽頭炎4例, 扁桃周囲膿瘍3例, 歯牙関連疾患2例で, 合併病態として縦隔洞炎または膿瘍3例, 頸部壊死性筋膜炎1例, 敗血症およびDIC1例, 化膿性脊椎炎1例が見られた. 嫌気性菌の病態への関与も示唆されたが, 検出菌はほとんどすべてが本来は口腔内の常在菌とみなされるものであった. 深頸部膿瘍における本菌種の検出率は, 自験例の全27症例中9例 (33.3%) に対し, 文献的に調査した200症例では8.5%に過ぎなかった. 文献例では, 細菌培養陰性例が29.0% (自験例18.5%), 菌種不明のStreptococcus属が31.5% (自験例18.5%) と多かった. 本菌種の培養・同定法の特殊性や溶血性の性状を考慮すると, 一般臨床では本菌種の多くがStreptococcus属やα-streptococcusとして判定されている可能性もある. 以上より, 深頸部膿瘍は口腔内常在菌種の複数菌感染によるものが多く, なかでもS. milleri groupの重要性が示唆された. その重症化因子として, 本菌種が産生する組織破壊酵素や嫌気性菌との混合感染による増悪機序が文献的に考えられる. また, 重篤な合併病態の臨床的特徴を考慮すると, A群β溶連菌による劇症溶連菌感染症やα溶連菌によるショック症候群に見られる病態と同様に, 本菌種が, T細胞を介した免疫応答によって種々のサイトカインを大量に誘導させるような外毒素を産生する可能性も考えられる.
  • 立川 拓也, 熊澤 博文, 京本 良一, 湯川 尚哉, 山下 敏夫, 西川 光重
    2001 年 104 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 2001/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1984年から1998年の15年間に関西医科大学耳鼻咽喉科において手術を施行した甲状腺分化癌を対象に統計学的観察と予後因子の検討を行った.
    対象症例は乳頭癌177症例, 瀘胞癌50症例, 男性45名, 女性182名, 年齢は13歳から89歳であった.
    年度別症例数から甲状腺腫瘍症例の増加, 特に乳頭癌の増加が確認された. 一方瀘胞癌の症例数の増加傾向は見られなかった.
    年齢分布として乳頭癌は40代から60代にpeakを認め, 瀘胞癌は50代にpeakが認められた.
    原発巣切除に関して, 乳頭癌はT因子が大きくなるにつれ, より広い原発巣切除が行われていたが, 瀘胞癌は術前, 術中に確定診断がつきにくいためか, 峡葉切除術が大部分 (70%) を占めていた.
    リンパ節郭清に関して, 乳頭癌症例はTが大きくなるに従い, より広い範囲の郭清術が施行されていた. 一方瀘胞癌症例は原発巣切除と同様確定診断がつきにくいためか, リンパ節郭清は70%がD1領域郭清であった.
    局所再発が22症例, 遠隔転移が6例に認められた. 局所再発22症例中手術で14例がsalvageできた.
    死亡症例は17症例に認められ, 乳頭癌12症例 (原病死は11症例), 瀘胞癌5症例 (原病死は2症例) であった. 原病死13症例の中でT4症例が10例, T3症例が3例, Nla症例が3例, Nlb症例が8例を占めていた. 死亡症例に関してはやはり進行症例が多かった.
    予後因子としてT, N, M, 年齢, 性別を対象として検討した. 乳頭癌の予後因子は被膜外浸潤, 遠隔転移, 年齢であり, 瀘胞癌の予後因子は遠隔転移であった.
    乳頭癌の5年生存率は93.0%, 10年生存率は88.8%であった. また瀘胞癌の5年, 10年生存率は93.5%であった.
    今回は分子生物学的検討, 癌遺伝子の検討は行わなかったが, T1N0乳頭癌症例で頸部再発を認めたことから今後はこれらの検討も必要と考えられる.
  • 伊藤 勇, 池田 稔, 末野 康平, 杉浦 むつみ, 鈴木 伸, 木田 亮紀
    2001 年 104 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 2001/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    日本人の耳介に関する計測学的研究の多くは1950年代までに報告されており, それ以降, 本邦における耳介の加齢変化についての詳細な計測学的な検討はほとんど行われていない. 今回, 当時よりも体格が向上し, また, 高齢化の進んだとされる現代日本人の耳介形態について, 乳児から高齢者までの幅広い齢層における詳細な計測学的検討を行ったので報告する. 対象は, 0歳から99歳までの日本人1958名 (女性992名, 男性966名) で, 耳長, 耳幅, 耳介付着部長, 耳介軟骨長, 耳垂長, 耳指数, 耳垂指数, 耳長対身長指数, および耳介の型について検討した. 各計測値はほぼすべての年齢群において男性の方が女性よりも大きく, 10歳代までの年齢群に見られる成長によると思われる急激な計測値の増加傾向に加え, それ以降も高齢者群になるに従い加齢変化によると思われる有意な増加傾向を認めた. 各指数, 耳介の型についても同様に成長によると思われる変化と加齢によると思われる変化を認めた. また, 以前の日本人の耳介を計測した報告に比べて耳介計測値の多くが大きくなっていた.
    今回の計測学的研究は現代日本人の耳介の大きさについて成長や加齢による変化を検討したものであり, 今後, 日本人の耳介形態についての一つの指標になるものと考える.
  • 高齢者の心のケアー
    保坂 隆
    2001 年 104 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2001/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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