日本耳鼻咽喉科学会会報
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91 巻, 3 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 中耳粘膜の局所免疫能
    朴沢 孝治
    1988 年 91 巻 3 号 p. 323-327,453
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    中耳の局所免疫応答能を知るため, 白色モルモットに対し種々の経路でhorseradish peroxidase (HRP) を用い抗原刺激を加え免疫応答を観察した. 抗HRP抗体産生形質細胞は, 中耳に対する抗原刺激のみでは得られず, 全身感作を必要とすること, 全身感作に局所刺激を加えることにより著しく数を増やすこと, 少なくとも最終抗原刺激後3カ月は粘膜中に残存することが明らかとなった. HRPに対する局所免疫を獲得した中耳に再度HRPを注入すると, 2次応答はより速やかで, 浸潤したリンパ球によってリンパ濾胞様構造も形成され, リンパ球から抗HRP抗体産生形質細胞への分化過程も観察された. 以上より, 中耳粘膜も潜在的な局所免疫応答能を持つことが判明した.
  • 免疫複合体の生理活性と中耳病態
    朴沢 孝治
    1988 年 91 巻 3 号 p. 328-332,453
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎は小児に多発する等宿主側因子の関与も大きいと考えられる. そこで宿主の免疫準備状態によって変化する免疫複合体の性状の変化が中耳炎病態に与える影響を調べるため低分子量及び高分子量の免疫複合体をin vitroで作製して中耳炎惹起実験を行った. この結果, 低分子量免疫複合体は, 高分子量のものに比べマクロファージ遊走活性が強く, このような生理活性は中耳炎の病態にもよく反映されていた. また可溶性免疫複合体は, 抗原単独よりも中耳腔内に滞留し, 特に低分子量のものにこの傾向があった. 以上より, 未熟な免疫準備状態の際に形成されるであろう低分子量免疫複合体は, 滲出性中耳炎の遷延化に寄与する可能性が示された.
  • 小川 浩司, 田中 寿一, 和山 行正, 川井田 政弘, 橋口 一弘, 山崎 嘉司
    1988 年 91 巻 3 号 p. 333-340,453
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    習慣性扁桃炎も含む慢性扁桃炎患者26名の陰窩よりC. trachomatisの分離培養を行い6名で感染を確認した. 2名はオーラル・セックスによって感染し, 他の4名の感染経路は不明であったが, 乳児の1例は経産道感染によることが考えられた. C. trachomatisによる慢性扁桃炎は炎症所見は軽いが咽頭痛は長く続き, しばしば急性増悪を繰り返した. オーラル・セックスによるものは, 咽頭異物感を執拗に訴えたが, これは心理的要因によるものと思われる. 治療にはマクロライド系, テトラサイクリン系抗菌剤やサルファ剤が有効である.
  • 浅野 公子, 高岡 佳弘, 根岸 正之, 小林 一女, 杉内 智子, 三辺 武幸, 岡本 途也
    1988 年 91 巻 3 号 p. 341-347,453
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    本機を滲出性中耳炎 (OME) の検診に使用したところ, 正答率は94.7%で, OME検出率 (sensitivity) は50.0%と低かったが, 正常検出率 (specificity) は98.0%と高かった. 本機がOME群と判定した例のうち, 実際にOMEである確率 ( (+) のpredictivity) は66.7%, 正常群の判定のうち, 実際に鼓膜所見正常である確率 ( (-) のpredictivity) は92.6%であった.
    次に本機を臨床診断に使用したところ, 正常検出率 (specificity) は92.7%と高かったが, 貯留液耳検出率 (sensitivity) は64.1%と低く, 穿孔耳, チューブ挿入耳, アテレクタシス耳は検出できなかった. 貯留液耳検出率 (sensitivity) は年代による差を認めなかった.
  • 山際 幹和, 久保 将彦, 原田 輝彦, 坂倉 康夫
    1988 年 91 巻 3 号 p. 348-355,455
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    咽喉頭異常感を有する450名を対象として咽喉頭粘膜の表面を軽く麻酔した際の効果を検討したところ, 80%の例で異常感覚は10%以上軽減し44%の例でそれは消失した. この結果, 異常感覚をひきおこしている原因の少なくとも80%は咽喉局所に存在し, 異常感覚を感受し認知する感覚器系統は局所麻酔剤により抑制されうる性状を有していることが判明した. 咽喉頭異常感を訴える患者の診療に際して, 局所の表面麻酔効果を検討することは原因となる疾患を検索するうえで重要であり, 治療方針を立てるうえでも有用である可能性がある.
  • 浜口 幸吉, 坂倉 康夫
    1988 年 91 巻 3 号 p. 356-363,455
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    中耳炎における蝸牛窓膜透過性の時間的変動および中耳の炎症反応の程度と膜透過性との相関性についての研究を行った.
    ヒトアルブミン (以下HSAと略す) にて全身感作したチンチラを用いて, 中耳骨胞内へ注入したHSAにより惹起されるアルサス中耳炎におけるHSAの内耳移行の有無およびその時間的変動 (12~48時間) を外リンパ中のHSA量に基づいて検討した. さらに, 中耳液の生化学的分析結果より, 中耳粘膜の炎症レベルと蝸牛窓膜透過性との相関についても検討した. また, ステロイド剤の中耳内同時注入による膜透過性への影響についても分析を行った.
  • 江崎 裕介, 大橋 淑宏, 池岡 博之, 古下 博之, 中井 義明
    1988 年 91 巻 3 号 p. 364-369,455
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    アレルギー反応に際して重要な役割を担うと考えられるヒスタミンをモルモット中耳粘膜にin vitroで作用させ, photoelectric methodを用いて線毛打頻度の変化を観察した. 10-6Mから10-4Mの濃度において線毛打頻度は有意の上昇を示し, 耳管近位部粘膜においてはdoseresponse relationshipが観察された. ヒスタミンは炎症時の異物除去に関与している可能性が示唆された. 10-8Mのヒスタミンによる線毛運動亢進作用は, 10-6Mのジフェンヒドラミンに影響されず, 10-6Mのシメチジンによって約50%抑制されたことからH2受容器を介する作用であることが考えられた.
  • 漆畑 保
    1988 年 91 巻 3 号 p. 370-381,455
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    正常喉頭組織及び喉頭癌組織内での男性ホルモンの親和性部位を検討した結果, 喉頭組織への3H-Tの取り込みが確認された. さらに同一喉頭癌組織内において男性ホルモンの核への取り込みの異なる細胞が存在し, 喉頭癌組織は性ホルモンに対する色々な感受性を持つ細胞から構成されている可能性が示唆された. また, 男女正常喉頭組織の扁平上皮細胞において3H-Tの取り込みに相違があり, 男性の正常喉頭組織では核への移行が多く, 一方, 女性の正常喉頭組織の方が核への移行が遙かに少ないと言う結果となり, 男女の喉頭組織において組織的な分化に際し, Tに対する質または水準において決定的な性差が生じていることが裏付けられた.
  • 杉内 友理子, 渡辺 勇, 二見 高弘
    1988 年 91 巻 3 号 p. 382-390,457
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ネンブタール麻酔下のネコを用いて, 大脳皮質 (6野と4野) から小脳歯状核細胞への入力様式を解析するために, 歯状核細胞から細胞内記録を行った. 対側赤核から逆行性に応じる細胞を歯状核の出力細胞とした. 橋被蓋網様核または橋核, 下オリーブ核を刺激し, それらから逆行性に応じるか否かにより, 歯状核細胞には少なくとも3種の投射パターンが存在することが明らかとなった. 大脳皮質 (6野と4野) を刺激すると, 歯状核細胞では多くの例でEPSP-IPSP-脱抑制という反応が生じたことから, 興奮性入力の存在が明らかとなった. さらに歯状核への興奮性入力については6野からのものが4野からのものより強いことが明らかとなった.
  • 藤居 荘二郎
    1988 年 91 巻 3 号 p. 391-397,457
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    嗅覚脱出及び嗅覚減退者853症例で風味障害を訴えるか否かの要因について検討を行った. 593症例を用いて数量化分析のための要因決定を行った. その結果, 検知平均嗅力損失値, 認知平均嗅力損失値, 罹病期間, 発症時の状態が風味障害を訴えるか否かの要因として関与することが判明した.
    さらに一般的要因として年齢, 性別の2要因を加え, 6要因を数量化分析の要因として用いた. 各要因内でのカテゴリーについては年齢が60歳以上, 発症の状態は突然に発症, 検知平均嗅力損失値2.0~2.9, 認知平均嗅力損失値5.0~5.7と5.8以上が風味障害を訴える方向に大きく関与していることが判明した.
  • 正常者および迷路障害者の観察
    釣巻 周子
    1988 年 91 巻 3 号 p. 398-409,457
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    歩行・駆け足中の固視機能と動揺視の発現機序を検討するため振子様上下移動装置を用い正常者10名と迷路機能消失例4名の一点固視と暗所における頭部・眼球運動を観察した.
    正常者, 迷路機能消失例とも, 歩行に相当する上下移動では頭部運動が起こらず固視は維持されたが, 駆け足に相当する上下移動では頭部の前後回転運動が起こり視標のブレが経験された. 頭部前後回転運動・垂直眼球運動は歩行相当の運動では能動運動より小さかったが駆け足相当の運動では大きくなった.
    高頻度大振幅の上下運動では非VOR性の物理的眼球運動が起こり, 迷路機能消失例の動揺視には足の踏み替えによる身体の直線運動の増大が大きく関与すると思われた.
  • 坂口 文雄
    1988 年 91 巻 3 号 p. 410-415,457
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ヒトOKNのon-, off-responseについて, 正常成人12名を用いて検討した. 視運動刺激にはOhm型視運動刺激装置を用い, ステップ刺激 (30秒持続) にて行った.
    on-responseは, サルや他の動物と異なり眼振第一打目からその緩徐相速度はほぼ最高値に達した. ヒトでは, on-responseに関係するsmooth pursuit systemあるいはdirect optokinetic pathwayが発達しているためと思われた. steady stateは, 完全にsteadyではなく少しずつ減衰した. off-response (OKAN) の減衰過程は2つの指数関数で最も良く近似され, 脳幹におけるヒトのOKN, OKAN発現機構に関しては, 2つの神経積分回路が想定された.
  • 1988 年 91 巻 3 号 p. 416-425
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 91 巻 3 号 p. 425-432
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 91 巻 3 号 p. 432-435
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
  • 梅田 悦生
    1988 年 91 巻 3 号 p. 436-439
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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