目的:ハウスダスト(=H. D)が発症抗原と考えられる鼻アレルギー患者に,mite (Dermatophagoi-des farinae)抽出抗原を用い,皮内反応,鼻粘膜誘発反応,Prausnitz-KÜstner反応(P-K反応)による比較から,H. Dととの抗原性の一致について検討するのが目的である.
実験法:
1. H. D 10-2倍液,mite 10-4倍液を用い,鼻アレルギー患者340名.正常者125名に,皮内反応を行ない,それぞれの陽性率及び両抗原の陽性一致率を検討した.
2. H. D 10-2倍液,mite 10-3倍液を生理食塩水で稀釈し,10-6倍液まで作製し,両抗原による皮内反応閾値の相関を検討した.
3. 両抗原とも皮内反応が陽性である患者58名に,抗原濃度の異なる鼻粘膜誘発デイスクを用い,それぞれの抗原による鼻粘膜誘発閾値の相関を検討した.
4. 両抗原とも皮内反応,鼻粘膜誘発反応が陽性である患者58名の血清を2倍稀釈し,それぞれの抗原でP-K反応を行ない,P-K価の相関を検討した.
結果:
1. H. D 10-2倍液による鼻アレルギー患者の皮内反応陽性率は74%であり,mite 10-4倍液による陽性率は76%であった.正常者のH. D 10-2倍液皮内反応陽性率は23%であり,mite 10-4倍液陽性率は25%であつた.以上の事から,鼻アレルギー患者は,正常者に較べ,H. D, mite皮内反応陽性率が極めて高く,又両抗原による皮内反応陽性率に差を認めなかった.
同一患者で,H. D 10-2倍液,mite 10-4倍液の皮内反応陽性一致率を検討すると,両方とも陽性である者は72%,両方とも陰牲である者は18%であつた.又H. D 10-2倍液に陽性でmite 10-4倍液に陰性である者は4%であり,mite 10-4倍液に陽性で,H. D 10-2倍液に陰性である者は6%であつた.
2. 同一患者における,H. D皮内反応閾値とmite皮内反応閾値は概ね一致し,miteがH. Dに比べ,約100~10OO倍,抗原としての力価が強い事が推察された.
3. H. Dによる鼻粘膜誘発閾値は,抗原濃度125μg/disc, 250μg/disc, 500μg/discのdiscで誘発される看多く,miteによる鼻粘膜誘発閾値では,抗原濃度1.25μg/disc, 12.5μg/discのdiscで誘発される者が多かつた.
4. 同一患者血清の,H. D 10-2倍液,mite 10-4倍液によるP-K価はよく一致し,mite 10-4倍液によるP-K価が,H. D 10-2倍液によるP-K価よりも高い傾向にあつた.
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