日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
73 巻, 11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 柏原 利子
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1747-1760
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    研究目的
    Fowler (1939) の考察によるalternate binaural loudness balance test (ABLB-Test) のrecruitment現象検出法としての価値を検討することが本研究の目的である.
    研究方法
    (1) 対象: 岩手医大耳鼻科外来を訪れた難聴者の中で純音オージオメトリーの結果1KHz及び4KHzを対象として両耳間に15dB以上の域値差のある感音難聴, 又は伝音難聴を選んだ. 1KHzについては90例, 4KHzについては95例がその対象となった.
    (2) 方法: 上記症例について規定通りの方法でABLB-testを施行し, その結果を (i) recr. の有無によって, recr. 陽性, 不完全陽性及び陰性に, (ii) recr. 陽性の場合その型によってasymptotic型及びdelayed型に, (iii) loudness growthの立ち上り勾配について, 急峻なもの, 平行するもの及びなだらかなものの3者にそれぞれ分類した. 同時に自記オージオメトリーを行って, その結果を振幅の大小及びJergerの分類法によって分類した. 上記2者の成績を種々の角度から検討した.
    研究成績
    1. ABLB法の成績は, 一般的には感音難聴で陽性が, 伝音難聴では陰性が多い.
    2. この傾向は1KHzで明瞭であり, 4KHzで不明瞭である.
    3. Recr陽性の型は大部分がasymptotic型であった.
    4. delayed型は一側伝音難聴で, 両側感音難聴の1KHzにおいて比較的高率であった.
    5. 自記オージオメトリーの成績は, ABLB法成績の如何に拘らず感音難聴では振幅縮小及びJerger II型を, 伝音難聴では振幅正常及びJerger I型を優勢に示した.
    6. この傾向は特に4KHzで著明であり, 1KHzではABLB法の結果と自記オージオメトリーの結果とにやゝ相関性があらわれていた.
    7. 4KHzでasymptotic型のrecrを示した伝音難聴では振幅縮小傾向があった.
    8. loudness growthの立ち上り勾配と自記オージオグラムとの関係は1KHzで若干の相関が認められ, 4KHzでは殆んど見られなかった.
    以上の成績に種々の観点から考察を加え, 次の結論を得た. 即ち, ABLB法は秀れたrecr検出法であるが, その成績は両耳のloudness growthを比較するものであるから得られた成績を直ちにその耳のloudness特性であると判断してはならないこと, 及びその点に関して現在まで殆んど検討されて居ないので今後はその方向に沿った検討が必要なこと. 以上である.
  • 矢田 剛一
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1761-1769
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    1) 目的: 先天性にもしくは早期より高度聴力障害を有する難聴者では, 聴力検査の際に真の聴覚域値を表わしているかどうか疑問に思われる場合がある. 本研究は, 高度難聴者の気導聴覚域値が, 真の聴覚域値かどうかを検討する目的で行われた.
    2) 方法: 対象者32名について, 気導聴力域値および気導レシーバによる身体の非聴覚領域 (手掌部および脛骨部) の振動感覚域値を調べた. これら対象者はすべて松本ろう学校に在籍するものであった. さらに全ろう者7名に関して, 前記検査に加えて聴覚領域 (耳部) の振動感覚域値を測定した.
    3) 結果:
    (i) 気導レシーバによる対象者の手掌部振動感覚域値は, 脛骨部のそれよりも低い値を示した.
    (ii) 全ろう者7名において, 脛骨部振動感覚域値は, 耳部のそれに極めて近い値を示した. この耳部振動感覚域値は統計学的に125Hzで60から75dB, 250Hzで75から95dB, 500Hzでは100から110dBであった.
    (iii) 上記の全ろう者の域値範囲を“耳部振動感覚域値範囲” (the vibratory threshold range of ear) と名づけた.
    (iv) この域値範囲を基にして, 高度難聴者32名の聴覚域値を, 3つの周波数 (125, 250, 500Hz) について分析した. そのうち5名 (両側3名, 片側2名) の応答は振動感覚によるものと考えられた.
  • 杉浦 昭義
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1770-1779
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (研究目的) 騒音外傷の発生を予防するためには, 騒音曝露条件と聴器に現われる病変の回復性の関係を検索することが臨床上重要な問題点と思われるので, 著者は, 外傷を最も受けやすいラセン器毛細胞を対象として, surface specimen techniqueを用いて, そこに現われた初期病変の分布状況とその回復性の有無および回復様式を検討し, ひいては聴器に対する騒音の危険限界を求めようとして本実験を企てた.
    (実験方法) 実験動物はモルモットを使用し, これに白色騒音120db, 10分間曝露し, 騒音曝露直後, 曝露後7日, 14日, 21日目の4群に分けて経時的に観察した. 組織標本作製には, Methylgreen-Pyronin染色をおこないsurface specimen techniqueにより, ラセン器の毛細胞の形態的変化に主眼をおいて観察した.
    (結果)
    1) 白色騒音120db, 10分間曝露直後におけるラセン器の傷害は, 外毛細胞に初発し, その傷害範囲は, 蝸牛底より4.5mmから10.5mmに及び, その中央部において傷害は最も強く現われ, 両端に向ってしだいに減弱する.
    2) 3列の外毛細胞間における受傷の程度には差が認められ, 蝸牛頂側では, 最外側の第3列の細胞に傷害が最も強く現われ, 次いで第2列, 第1列の順になる. これに反して蝸牛底側では, 最内側の第1列の細胞に傷害が最も強く現われ, 次いで第2列, 第3列の順に弱まる.
    3) 白色騒音120db, 10分間曝露直後に出現した外毛細胞の傷害の回復様式は, 傷害部の両端における病変の軽度なものから正常化し初め, しだいに中央部の回復にすすむが, 第2回転下部における毛細胞の病変は, 曝露後21日目でなお完全な回復を示さないものが多い. しかし回復経過から推察すれば, 本曝露条件はラセン器可逆性病変の限界点付近にあるものと推察された.
  • 小出 靖
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1780-1782_2
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    外耳道皮膚に混合腫瘍が発生することは極めてまれで, 典型的な混合腫瘍としてはこゝに述べる症例は本邦の第1例といってよい. 症例は76才の男子で外耳道入口部に拇指頭大の無痛性腫瘍が発生し, 手術的に剔出して全治した.
    病理組織学的には極めて典型的な混合腫瘍であり, かつ術中にすでに混合腫瘍が強く疑われたので外耳道皮膚と腫瘍を一塊として剔出したのであるが, 標本の精査でもこの処置の妥当なることが確認された. すなわち, 腫瘍は皮膚から発生したものであり, 皮膚を残しては再発の危険性が大いにある.
    この結果は稀な症例の単なる呈示に止まらず, 混合腫瘍の処置の上に大切な示唆を示すものである.
  • 佐藤 良暢, 星谷 徹, 川本 智, 水越 治
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1783-1788
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔粘膜の腺細胞および腺分泌物の性状をしらべること, ならびに粘膜上皮中の好気代謝系に関与する酵素系の局在をしらべることを目標として, 先ず若干の組織化学的検索を行なった結果, 腺と, これより産生される分泌物は, 糖蛋白や, シアロムコイドが重要な構成成分であることが明らかとなった. また, 糖蛋白が上皮上面のイオンコントロールを行うであろうことや, シアロムコイドが抗ウイルス作用を持つことも判明した.
    次に, 線毛運動と, 粘膜上皮系のエネルギー代謝との関連性を求めるために, 粘膜上皮層を, 主として電子顕微鏡学的に検索した結果, 上皮層, 中でも線毛根小毛周辺に, 多数のミトコンドリアを認め, 好気代謝が盛んであることが示唆された.
    そこで, 粘膜を, 上皮層と, 粘膜下結合織層に分離して, それぞれの呼吸酵素系の活性をワールブルグ検圧法により, 生化学的に測定した. その結果, 上皮層の方が好気代謝が活発であること, その他の興味ある知見が得られた. これと, 従来の知見を併せ考察することによって, 分泌物中に溶解した空気中の酸素が線毛運動等のエネルギー源として利用されているのではないかと推定し, 併せて, 腺分泌物の持つと考えられる役割についてまとめた.
  • 特にその病理組織学的所見について
    渡邊 嘉彦
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1789-1795
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔乳頭腫は, 一般に多い疾患ではないが, 3症例を経験したので, その治療方法, 経過について報告し, 特にその病理組織学的所見について述べた.
    症例1. 患者は59才, 女子で, 左側鼻閉を主訴として来院, 左側鼻腔に大きな表面平滑, 白色のポリーブ様腫瘍と, 軽度の頬部腫脹を認めた. レントゲン所見では, 左上顎洞篩骨洞に陰影を認め, 上顎結節は強く膨隆し, 洞骨壁は非常に薄くなり, 鼻中隔は反側へ強く弧をなして彎曲していた. しかし, 骨の欠損像は認めなかった. Caldwell-Lüc法にて手術を行ない, 術後3年を経た現在, 再発を認めない.
    症例2. 患者は63才, 男子で, 鼻閉と悪臭鼻漏を主訴として来院, 右側中鼻道に大きなポリープ様腫瘍を認めた. レントゲン所見では, 右上顎洞の陰影と, 断層写真にて, 中鼻道附近の骨欠損像とを認めた. Caldwell-Lüc法にて手術を行ない, 術後1年4ヶ月を経たが, 再発を認めない.
    症例3. 患者は53才, 女子で, 右側鼻閉および鼻出血を主訴として来院, 右側中鼻道に雀卵大の腫瘤を認めた. レントゲン所見では, 両側上顎洞篩骨洞に陰影を認めたが, 断層写真にても, 骨破壊像は認めなかった. Caldwell-Lüc法にて手術を行ない, 術後5年5ヶ月を経過した現在, 再発をみず良好である.
    本腫瘍で, 最も興味あるのは, その病理組織学的所見に関してである. 上記3例は, いずれも深向性増殖を示し, 症例1では, 基底膜のすぐ上では, 丈の高い円柱状の細胞がみられ, 深向性上皮の表層にいくにしたがって, 扁平な細胞がみられるが, 細胞間橋は明らかでない. 症例2では, 角化傾向が強く, 細胞間橋も明確に認められる. この2症例では, 悪性像は認められなかったが, 本腫瘍で注意すべきは, 悪性化, あるいは悪性像をもっての発症である. 症例3の細胞は, わずかに異型的であり, 核分裂像, 増殖像が多くみられた. 基底膜下に, 円形細胞の浸潤が強くみられたが, 基底膜の断裂, およびその下への浸潤性増殖はみられなかった.
    以上の3症例は, 術後放射線治療を行なっていないが, 現在まで良好な経過をとっている.
  • 菅 文朗
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1796-1797
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    少量の造影剤を洞壁に附着させ, 空腔には空気を満たす二重造影法を各種の上顎洞疾患のレ線検査に用いた. 造影剤にはハイトラストを選び, レ線撮影の前には頭位を各方向に変えて, 造影剤が洞壁にまんべんなく附着するように努めた. 従来の上顎洞充満造影法と比較して, 二重造影法によるレ線検査では, 洞壁の表面像がより詳細に観察できる利点があった.
  • 斎藤 誠次
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1798-1807
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    防禦反射としての声門閉鎖反射は本来気道内への異物進入を防ぐための機構で重要な反射の一つであることは云うまでもない.
    一方この反射あるが故に臨床的にはしばしば喉頭痙攣という言葉で表わせる様に不測の事態を起させるのである. この反射は上気道に加えられた刺激により惹起され特に喉頭, 下咽頭に刺激が及ぼされた場合に強く表われる事は周知の如くである. この事は誰しもが直達鏡その他の検査等に際し経験して来たことである. 声門の閉鎖反射は一般に実験的にも可成り全身麻酔が深くなっても消失しないと云われ臨床的にはこの反射を阻止する目的で筋弛緩剤の投与や粘膜の塗布麻酔が行われているのが現状である. 扨て私達は今回臨床的に日常使用されている薬物が果してこの声門閉鎖反射にどの様な影響を及ぼしているかを検する目的で猫を使用して電気生理学的実験を行った. 体重3kg前後の成熟雌雄の猫25匹を使用した. ネンブタール30mg/kgで麻酔しFláxédilで非動化させ調節呼吸を行いマイクロスコープを使用し上喉頭神経内枝と同側の反回神経を丁寧に露出し前者に刺激電極を置き後者に誘導電極を置き中枢経由でreflex responseをとり出した. このreflex responseのAmplitude, latencyを指標とし薬物がどの様な影響を及ぼすかを検した. 使用した薬剤はpentobarbital sodium, chlorpromazine promethazine hydrochloride, mephenesinで電気生理学的に声門反射を検討してみた.
    実験結果は凡そ次の様な結論を得た, 即ち
    1) 反回神経より自発性activityをとり出し無麻酔下とpentobarbital sodium投与後とを比較したが, 自発性activityはpentobarbital sodium投与の方が抑制された.
    2) 声門反射はpentobarbital sodiumでは30mg/kgでは殆んど影響されず90mg/kg投与で始めて抑制された. これは日常使用量では殆んど声門反射は影響されないという事である.
    3) chlorpromazineでは阻止効果が認められた.
    4) promethazine hydrochlorideでは阻止効果が認められた.
    5) chlorpromazineとpromethazine hydrochloride併用の場合阻止効果は個体の差はあるが可成の効果が認められた.
    6) mephenesineでは即効的に阻止効果が認められたが約30分後に完全に恢復した.
    以上の実験成績より得られた結論より我々臨床医はこれらの薬物が効果を持続している間は常に声門反射が低下しているので誤嚥という問題が考えられる.
  • 鈴木 昌也
    1970 年 73 巻 11 号 p. 1808-1820
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1. 目的
    本実験は, 扁桃の免疫生物学的な機能および, リンパ性組織としての位置を明らかにせんとして行なった. 既に, 中枢性リンパ組織として認められている胸腺との関係から追求するため, 生下時胸腺摘出, 若年期胸腺摘出を家兎に対して行ない, 扁桃の免疫機能の変化を検索した.
    2. 実験方法
    生下時胸腺摘出は, 生後12~24時間以内に行い, 若年期胸腺摘出は, 生後4週および8週目に行なつた. 抗原として, ウシ血清アルブミンを用いて, 筋注により感作を行なった. DNAの特異的前駆物質であるチミジンに, 放射性同位元素3Hを標識した3H-チミジンを腹腔内に注射して, 抗体産生細胞の動態の変化を追求した. 組織学的には, オートラジオグラフィーにより, 定量的には, 液体シンチーレーションカウンターを用い, 扁桃と他のリンパ性組織である脾, リンパ節, 虫垂との関係を観察した.
    また, 新生児期胸腺細胞に, 3H-チミジンを標識して, 生下時胸腺摘出せる幼仔家兎の腹腔内に注射し, 標識胸腺細胞が, 扁桃, 脾リンパ節に移行することを確認した.
    3. 結果
    生下時に胸腺を摘出せる家兎の扁桃では, 非手術例にくらべて, 3H-チミジンのとりこみは明らかに減少した. また, 扁桃, 脾およびリンパ節におけるカウント数の減少も著明に見られた. しかし, 若年期胸腺摘出例では3H-チミジンのとりこみは, 扁桃において, 減少せず, かえって増加の傾向すらうかがわれた.
    感作例では, 非感作例よりも, とりこみが多くみられるが, これは, 胸腺の存在下に著明であった.
    組織学的に, 3H-チミジンがよくとりこまれるのは, 胚中心周辺の被殻, 髄索, 上皮下で, 二次小節中心部にはほとんど見られなかった.
    これらの観察から, 口蓋扁桃は, 胸腺によって「末梢化」された二次リンパ性組織であり, 胸腺がリンパ系細胞の供給源として大きな位置を占めるのは, 生後の極く短かい期間であると考えられる.
  • 1970 年 73 巻 11 号 p. 1821-1834
    発行日: 1970/11/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top