日本耳鼻咽喉科学会会報
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106 巻, 9 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 耳鼻咽喉科救急における画像診断の意義
    飯沼 壽孝
    2003 年 106 巻 9 号 p. 851-855
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科の救急疾患の画象診断をまとめれば,普通X線撮影法(気道評価.骨折),CT(側頭骨,深頸部感染症),MRI(頭蓋内合併症)となろうが,近年導入された高速CT(helical CT. MD-CT)により撮影時間が短縮して鎮静•拘束を必要としない気道の評価,および3次元画像による概観的な評価が容易になった.また高速MRIの導入と相まって現在の救急画像診断法が次第に変貌する可能性が強い.
  • 手術所見を中心として
    小島 博己, 宮崎 日出海, 田中 康広, 志和 成紀, 本多 芳男, 森山 寛
    2003 年 106 巻 9 号 p. 856-865
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 当科で手術を行った先天性真珠腫48耳について手術所見を中心に検討した.
    2. 初発症状で難聴を訴えたものはopen型真珠腫に多くみられ.耳漏•耳痛を呈したものはclosed型真珠腫に多くみられた.
    3. 真珠腫の存在範囲は今回の検討では鼓室後上部に多く認められたが,今回の検討では進行例が多く,今後小真珠腫の症例が増えた時点で再検討する必要があると思われた.
    4. 耳小骨奇形の合併を疑わせる例はopen型真珠腫に多くみられた.
    5. 半数以上の症例にアブミ骨上部構造の消失が認められた.
    6. 日本耳科学会用語委員会の聴力改善判定基準(2000年)による成功率は77.8%であった.一期的手術での成功率は81.8%,段階手術では73.9%であった.
    7. 外耳道後壁を保存した症例の再形成真珠腫による再発は5.6%であった.また段階手術時に真珠腫上皮の遺残が認められたものは48.0%であった.
  • インターネットを用いたアンケート調査
    菅原 一真, 山下 裕司, 橋本 誠, 堀池 修, 奥田 剛, 竹本 剛, 高橋 正紘
    2003 年 106 巻 9 号 p. 866-871
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    インターネット調査を用いて,ストレスを定量化する目的で作成したアンケートの有用性を再確認した.インターネット調査においても,めまいの発症とストレスが密接に関係することが示された.インターネット調査は既存の方法と比較して,短期間に多くの対象者に調査が可能であり,集計も容易である.
  • ヒト側頭骨病理組織学的研究
    鈴木 雪恵, 大谷 巌, 鈴木 聡明, 小川 洋, 阿部 正文
    2003 年 106 巻 9 号 p. 872-879
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    ヒト側頭骨連続切片標本の中で,鼓膜正常例である395耳を用いて,乳突蜂巣の発育程度別に中耳腔内の炎症所見の分布について観察を行い,次の結果を得た.
    1. 慢性期中耳炎症所見検出率は乳突蜂巣発育不良群では17.6%と少なかったが,乳突蜂巣発育良好群では34.3%と高率に認められた.すなわち,鼓膜所見が正常でも中耳炎の既往を有した乳突蜂巣発育良好例では発育不良例よりも中耳腔内に炎症の残存している確率の高いことが今回の結果から明らかとなった.この残存している炎症が臨床的に重症な耳性合併症を起こす可能性があるため,日常診療において,中耳炎の既往のある乳突蜂巣発育良好の症例では,鼓膜が正常化し,中耳炎が消失したと考えられても,炎症が残存している可能性を考え,十分な治療と経過観察が必要であると思われた.
    2. 中耳炎症所見部位別検出率は乳突蜂巣発育不良群では部位によって違いはなかったが,乳突蜂巣発育良好群では乳突蜂巣下部,正円窓窩,鼓室洞などで炎症所見検出率が高かった.日常診療において中耳炎の既往のある乳突蜂鎚発育良好例では,中耳炎が消失したと考えられても,乳突蜂巣下部,正円窓窩,鼓室洞に炎症が残存しており,炎症がない部分とある部分が混在しており,逆に,中耳炎の既往のある乳突蜂巣発育不良例では,鼓膜が正常化した場合,中耳腔内の炎症所見は改善しているか,もしくは中耳腔全体に炎症が残存しているかどちらかであることが分かった.
  • 將積 日出夫, 渡辺 行雄, 丸山 元祥, 本島 ひとみ, 十二町 真樹子, 安村 佐都紀
    2003 年 106 巻 9 号 p. 880-883
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    (目的)Meniett20Rはメニエール病の携帯型中耳加圧治療器具である,本論文では,本邦で初めてMeniett20Rを薬物療法に抵抗する難治性めまいを反復し,人退院を繰り返す高齢メニエール病患者に対して用い,めまいに対する治療効果を報告した.(方法)対象は,高齢重症メニエール病患者2例であった.Meniett20Rによる治療開始から1年間の経過を評価した.(結果)治療開始からめまい発作消失までは約3カ月であり,めまい係数からいずれも改善と評価された.(結論)Meniett20Rは,鼓室換気チユーブ留置術を必要とするが,めまい制御に対する有効性が期待でき,簡便で安全性が高い.したがって,薬物療法に抵抗する重症メニエール病に対する治療方法の選択肢の一つとなる可能性がある.
  • 宇高 毅, 藤吉 達也, 吉田 雅文, 牧嶋 和見, 土生 秀明
    2003 年 106 巻 9 号 p. 884-887
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    62歳女性の頸部壊死性軟部組織感染症を経験した.本症例では,初診時CTで右咽頭側壁から頸部に多数のガス像を認めていたが,特徴的膿瘍所見が明瞭でなかったため,まず保存的治療を選択した.いったんは炎症所見が軽快したものの,再増悪したため排膿手術を行った.膿瘍は前胸部から右上腕部や左腋窩部に及んでいたが,重篤な合併症を併発することなく,約2カ月で治癒した.本症例と文献的考察より,頸部壊死性軟部組織感染症は,通常の深頸部膿瘍のように一つの間隙を中心に膿瘍を形成,拡大するというより,むしろ炎症が間隙を広く浸潤していく病態であり,その発癒に本来は常在菌であるミレリ連鎖球菌が関与している可能性が示唆された.
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