日本耳鼻咽喉科学会会報
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101 巻, 7 号
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  • 千葉 伸太郎, 足川 哲夫, 森脇 宏人, 徳永 雅一, 宮崎 日出海, 森山 寛
    1998 年 101 巻 7 号 p. 873-878
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/07/08
    ジャーナル フリー
  • 清水 隆, 牧嶋 和見, 吉田 雅文, 山岸 豪敏
    1998 年 101 巻 7 号 p. 879-883
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,日本人がどのように英語の語音聴取を行っているかという点に着目し,正常聴力の日本人に対し英語の語音聴力検査を行った.検査の対象は,19歳から36歳までの正常聴力者10名20耳で,大学在学中の学生や大学卒業程度の英語学習経験を有し,英会話等で英語学習を継続する者や海外滞在経験のある者を選出した.検査語表には,日本語として67-S語表を,英語としてCentral Institutefor the Deaf (C.I.D.) Auditory Test W-1 list及びW-2 listを用いた.英語の語音聴力検査の結果について,平均純音聴力レベルや日本語の語音聴力検査の結果と比較した.平均純者聴力レベルと日本語の語音聴取域値はほぼ一致したが,英語の語音聴取域値は日本語のそれと比べ有意に高い値を示した.また,日本語では全例において100%の語音弁別能が得られたのに対し,英語の語音弁別能は平均89.5%であり,78%から100%と個人によるばらつきが大きく見られた.
    さらに英語の語者聴取特性についての解析を行うと,子者のうち/m/,/n/,/P/,/δ/の音素は90%以下の正答率であり,無声子音は有声子音に比べ受聴の明瞭度が低くなる傾向が見られた.このような異聴の傾向については個人差が大きく,個人の英語経験の違いだけでなく,日本語と英語の音素の違いや.音声構造の違いによる,聞き分けの難しさが語音弁別能に大きく影響したと考えられた.S/N比の低い騒音環境下では,日本人の英語の語音聴取における語音弁別能はより低下し,その異聴の傾向はさらに顕著になるものと考えられ,今後このような環境におけるさらなる検討が必要であると思われた.
  • クモ膜下腔よりの内耳浸潤経路について
    鹿野 真人
    1998 年 101 巻 7 号 p. 884-894
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の側頭骨への転移浸潤については,ヒト側頭骨を用いて,浸潤様式,臨床症状との関係について報告されているが,動物モデルを用いた検討は皆無である.今回,実験的にラットのクモ膜下腔に腫瘍細胞を移植することにより,側頭骨浸潤モデルを開発し,このモデルを用いてクモ膜下腔より側頭骨,特に内耳への浸潤様式を詳細に検討した.
    ラット胸線リンパ腫細胞を,経皮的にラットの大槽内に注人した.40匹に対して腫瘍細胞注入後1~8日目に断頭を行い,33匹はHeidenhain SuSa液にて生体灌流固定を行った佐,両側の側頭骨を一魂に採取し,同液にて固定し,型のごとく,脱水,脱灰しセロイジン包埋を行った.側頭骨を内耳道軸に対して水平に厚さ25μmで連続的に薄切,5枚毎にH-E染色を施行し,光学顕微鏡下に観察した.7匹は追加実験のためホルマリン固定後,パラフイン包埋し,厚さ6~8μmに薄切し,セロイジン標本と同様に観察した.
    腫瘍細胞を大槽内に移植することにこより,クモ膜下腔の経路での側頭骨浸潤動
    物モデルを作製し得た.クモ膜下腔における移植細胞の生着率は98%であり,移
    植後の日数とクモ膜下腔の細胞増加は相関していた.
    クモ膜下腔から内耳への浸潤は,ヒト側頭骨では内耳道経由のみであるが,ラットでは蝸牛小管と内耳道の2つが存在した.
    内耳道からの蝸牛浸潤ではラセン孔列のバリヤーが存在したが,細胞増加に伴い,蝸牛ローゼンタール管から鼓室階に浸潤をきたした,しかし,コルチ器への浸潤は皆無で,細胞浸潤に対してhabenula perforataは強力なバリヤーとなると考えられた.
    前庭•半規管浸潤では,篩状斑を越えるものは少数であり,篩状斑はラセン孔列以上に強力なバワヤーであると考えられた.
    膜迷路への浸潤は認めず,クモ膜下腔からの浸潤経路は存在しないと考えられた.
  • 予防的頸部郭清に関する一考察
    石永 一, 加藤 昭彦, 山田 弘之
    1998 年 101 巻 7 号 p. 895-899
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    唾液腺においては頸部転移陽性例は予後不良ということもあり,頸部制御に関する関心も高い.当科において治療を行った唾液腺癌25例中,acinic cell carcinoma, low grade mucoe-ermoid carclnoma,再発例を除く唾液腺癌18例を検討し,唾液腺癌における予防的頸部郭清術に関して考察を加えた.今回の結果からは顎下腺癌N0症例7例中1例のみ頸部再発を認めたが,対側顎下腺への再発であった.耳下腺癌N0症例6例中,耳下腺再発が2例認められたが,頸部への再発は認められなかった.以上より唾液腺癌N0症例における予防的頸部郭清では,組織型にかかわらず全頸部郭清は必要ないと考えられた.文献的考察も加えると,顎下腺癌の予防的類部郭清術に関してはsupraomohyoid neck dissectionの良い適応になるのではないかと考えられた.
  • 通年性鼻アレルギー症例と正常例の比較
    竹野 幸夫, 川本 浩子, 平田 したう, 福島 典之, 夜陣 紘治
    1998 年 101 巻 7 号 p. 900-907
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    代表的な耳鼻咽喉科の保存的処置の一つであり,その効果が日常臨床において日々実感されている鼻処置の効果に関する客観的裏付けを目的にして,鼻腔容積の変化をacoustic rhinometryにより測定し,同時にアンケート調査により自覚症状の変化を調べた.対象は通年性鼻アレルギー患者30名(軽症群18名と重症群12名),および正常ボランティア6名である.鼻処置前の全鼻腔容積は,鼻アレルギー重症群は5.94±2.6cm3であり,正常群の7.0±2.4cm3,軽症群の8.13±3.05cm3に比較し有意に狭くなっていた.またこの傾向は鼻腔前方部(0~3cmの領域)に限定するとさらに著明であった.鼻処置効果の指標となる容積の変化量•変化率は,正常者群で3.81±1.5cm3(平均54%),鼻アレルギー軽症群で2.95±2.2cm3(平均38%),重症群で2.88±2.1cm3(平均48%)であり,各群間で有意差を認めなかった.またc-notchにおける鼻腔断面積の変化についても各群で有意差を認めなかった.自覚的アンケート調査では,鼻アレルギー重症群が鼻処置による鼻閉改善度が最も高く,一方,効果の持続時間については軽症群の方が長い傾向が認められた.以上の結果より,鼻アレルギー患者においてもその重症度にかかわらず鼻処置は効果的であり,引き続き施行するネブライザー療法などを行う上での有効な支持療法となりうることを示していると考えられた.
  • 浦本 直紀, 三輪 高喜, 土定 建夫, 石丸 正, 古川 仭
    1998 年 101 巻 7 号 p. 908-915
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    神経成長因子(NGF)は神経栄養因子の1つであり,これまで嗅球に存在するNGFの意義としては嗅球へ投射線維を送っている前脳基底部の対角帯水平部のコリン作動性ニューロンの存在に関与しているものと考えられてきた.しかし,最近我々の研究により,嗅細胞の発達,成熟には嗅細胞のNGF受容体の発現と嗅球でのNGFが必要であることが示唆された.今回,我々は嗅覚伝導路におけるNGFの機能をより直接的に調べる国的で,マウス嗅球に抗NGF抗体を投与した場合の嗅細胞の組織学的変化および嗅覚機能の変化を観察した.浸透圧ポンプを用いて抗NGF抗体をマウス嗅球に持続投与(コントロールとして生理食塩水を持続投与)した後,1,3,7,14,21,28日目に,HE染色による嗅上皮の組織学的観察,NGFの高親和性受容体を形成するtrk遺伝子産物に対する抗体を用いた嗅上皮の免疫組織化学的観察,シクロヘキシミドを用いた嗅刺激性行動観察を行った.生理食塩水を持続投与したマウスの嗅上皮には嗅細胞の変性やtrkの発現の増強は認めなかったが,抗NGF抗体を持続投与したマウスは持続投与7日後に嗅細胞の強い変性とtrkの発現の増強を認めた.その後28日目にかけて不完全ではあるが嗅細胞の再生を認めたものの,嗅細胞のtrkの発現は持続していた.行動学的にも,生理食塩水を持続投与したマウスでは嗅覚の低下は認めなかったが,抗NGF抗体を持続投与したマウスでは嗅覚の低下を認め,投与後28日目までに嗅覚の回復は認めなかった.以上の結果から,嗅球のNGFが外部から投与された抗NGF抗体により不活性化されることにより,嗅細胞の変性,嗅細胞のtrk発現増強,嗅覚機能の低下を引き起こすものと思われ,嗅球で合成されるNGFは嗅細胞の生存.機能の維持に重要な役割を果たしているものと考えられた.
  • 非扁摘例との腎病理所見による比較検討
    小坂 道也
    1998 年 101 巻 7 号 p. 916-923
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    IgA腎症に対する両側口蓋扁桃摘出術(以下扁摘)の長期的な臨床効果を検討する目的で腎生検後5年以上経過を観察することのできたIgA腎症扁摘例43例と,同時期に同施設で内科的治療のみ施行されたIgA腎症非扁摘例42例との予後について臨床病理学的に比較検討した.平均年齢は扁摘群が25.72歳,非扁摘群が33.16歳であった.男女比は扁摘群が24/19,非扁摘群が17/25であった.扁摘群の腎生検後扁摘までの期間は平均で10.47ヵ月であった.平均経過観察期間は扁摘群,非扁摘群ともに8年9ヵ月であった.クレアチニンクリアランス(Ccr),1日尿蛋白量の平均値,高血圧例,ステロイド使用例の頻度についても両群間で大きな差異はみられなかった.腎病理所見の両群間の比較では,扁摘群の方がやや組織障害度の強い症例が多い傾向を示した.
    長期予後を検討した結果,全症例での寛解率(P<0.01),腎機能保持率(P<0.05)は,扁摘群の方が非扁摘群よりも有意に高値であった.腎生存率では有意差がなかったものの,扁摘群で腎生存率が高い傾向が認められた(扁摘群97.7%,非扁摘群83.3%).腎病理所見別の検討では「予後良好群」の寛解率(P<0.05)および,「予後比較的不良群」の腎機能保持率(P<0.05),腎生存率(P<0.05)で扁摘群の方が統計学的に有意に高率であった.扁桃炎の既往の有無では予後に有意差は認めなかった.
    今回のIgA腎症扁摘例の長期予後の検討によりIgA腎症の治療の一つとして扁摘を行うことの臨床的有用性が示された.また,なるべく早期に扁摘を行うことが望ましいと考えられた.
  • 保富 宗城, 寒川 高男, 島田 純, 鈴木 正樹, 山中 昇, 生方 公子, 紺野 昌俊
    1998 年 101 巻 7 号 p. 924-930
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    急性中耳炎には,生後3歳までに50%~71%の小児が少なくとも1回罹患するとされる.肺炎球菌は,急性中耳炎の起炎菌の30%~50%を占めるとされ,従来はペニシリン剤に良好な感受性を示し,抗生剤の感受性は問題とされなかった.しかし.近年,急性中耳炎患児の耳漏より検出される肺炎球菌の中に抗生剤に低感受性を示すものが増加し,従来の抗生剤治療にて難治性を示す中耳炎の報告が多くなされている.今回,小児急性中耳炎初診例のうち,鼻咽腔より肺炎球菌が検出された12例を用い,β-ラクタム剤に対する最小発育阻止濃度(MIC)の測定およびPCR法によるペニシリン結合蛋白(PBP)遺伝子の変異につき検討した.12例の肺炎球菌のうち2例(16.7%)にペニシリン耐性肺炎球菌が,3例(25.0%)にペニシリン低感受性肺炎球菌が検出された.耐性肺炎球菌においては高頻度にPBP遺伝子の変異が認められた.すなわち,pp2x遺伝子およびpp2b遺伝子,またはpbp1a遺伝子,pbp2x遺伝子,pbp2b遺伝子のすべてに変異が認められた.さらにこのPBP遺伝子の変異とPenicillin G(PC-G)およびセフェム剤に対するMICを比較した結果,PBP遺伝子の変異頻度が増加するにつれMICが上昇し,PG-Gのみでなくセフェム剤への耐性化も示された.急性中耳炎患児の鼻咽腔より分離された肺炎球菌の約半数がペニシリン耐性もしくは低感受性であり,経口セフェムに対しても耐性化を示すこの結果は,経口抗生剤の選択に際してPRSPの存在を念頭におくことが一層重要となることを示唆するものである.また,PCR法はディスク法および微量液体希釈法に見られるような培養の際の問題が少なく,迅速かつ高感度に肺炎球菌の抗生剤感受性を遺伝子レベルで検討できる有用な方法と考えられた.
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