日本耳鼻咽喉科学会会報
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101 巻 , 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 熊澤 博文, 蔦 佳尚, 百渓 明代, 吉永 和仁, 福武 知重, 山下 敏夫
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1303-1310
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1983年から1995年に男性69例と女性14例の計83例に対して喉頭全摘出術後一次的にBlomとSingerのボイスプロステーシスを用いた気管食道瘻孔(Tra-cheoesophageal fistula; TEF)を形成した.ボイスプロステーシスを用いた気管食道瘻孔による発声の成績は,発声良好群58例(69.8%),発声可能群9例(10.8%),発声不良群9例(10.8%),装着不能群7例(6.43%)であった.また,3年以上のシヤント発声を継続した51例における合併症について検討すると,TEF周囲の肉芽を認めたものが15件(プロステーシス抜去0件),ボイスプロステーシスの挿入困難が7件(プロステーシス抜去1件),気管孔狭窄4件(プロステーシス抜去0件),TEFからの漏出3件(プロスラーシス抜去1件),その他5件であり,51例中31例に34件の合併症を認めた.その合併症のほとんどが救済され,ボイスプロテーシスを用いた気管食道瘻孔による発声の有用性が示唆された.
  • 越智 健太郎, 三井 雅夫, 渡辺 昭司, 中島 博昭, 大橋 徹, 木下 裕継, 釼持 睦, 加藤 功
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1311-1315
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    突発性難聴に対する治療効果を,ステロイドの投与量により2群に分類し,ステロイド大量療法の効果を検討することを目的とした.対象は,平成5年4月から平成10年3月の間に聖マリアンナ医科大学東横病院耳鼻咽喉科を受診した突発性難聴患者38例とした.19例のステロイド大量療法群と19例のコントロール群を,厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の聴力回復判定基準,250Hzから4kHzの5周波数の算術平均の改善度,改善度を患側と健側との差で割った改善率の3種類の方法を用いて比較した.厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の聴力回復判定基準では,治癒は,コントロール群は7例であったが,ステロイド大量療法群は3例であり,著明回復以上を有効とすると,コントロール群は15例(78.9%)で有効で,ステロイド大量療法群はやや低く10例(52.6%)に有効であったが,統計学的には有意差は認めなかった(p=0.39).コントロール群の改善度の平均値と標準偏差は,それぞれ41.8dBと20.9dBであったが,ステロイド大量療法群は32.9dBと24.8dBとやや低値であった.この差は,統計学的には有意ではなかった(p=0.24).また,コントロール群における改善率の平均値と標準偏差は0.70と0.35であったが,ステロイド大量療法群は0.49と0.38とやや低かった.この差は統計学的に有意なレベルに接近していた(p=0.09).今回の検討では,ステロイド大量療法は3種類すべての検討においてコントロール群と有意差を認めなかったが,コントロール群と比較して治療効果は低く,少なくとも顔面神経麻痺に対する効果とは異なっていた.
  • 獄 良博, 榎本 雅夫, 芝埜 彰, 硲田 猛真, 斉藤 優子, 高橋 將範
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1316-1320
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    Chlamydia pneumoniaeは,呼吸器疾患だけでなく上気道感染症にも関与する細菌であり,広く世界に蔓延しており抗体保有率も高いといわれている.しかし,偏性細胞内寄生性細菌であるため一般細菌検査室では,同定が困難である.しかも血清抗体価も抗原の準備と熟練を要するため一部の施設でしか測定できなかった.そこで最近開発された,抗C.pneumoniae特異抗体測定キット「ヒタザイムRC.ニューモニエ」を用いて大阪市,神戸市,大分市在住の20歳の健常な男女320例の,血清抗体陽性率を測定し疫学的調査を行った.平均抗体陽性率は58.1%であった.IgA抗体陽性率は42.8%,IgG抗体陽性率は46.5%であった.地域差,男女差は認めなかった.従来の報告と同じ結果であり日本全国にC.pneumoniaeが蔓延していると考えられた.また,本キットはELISA法による簡便な測定のため,臨床に有用である.
  • 久我 むつみ, 池田 稔, 久木元 延生, 安孫子 譲
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1321-1327
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究は顔面神経麻痺の発症と肉体的および精神的ストレスの間に,何らかの関連性が存在するか否かを検討することを目的に行われた.対象は発症7日以内に日本大学医学部附属板橋病院耳鼻咽喉科外来を受診した顔面神経麻痺患者55例(男性23例,女性32例):Bell麻痺32例,Ramsay Hunt症候群23例である.初診時に麻痺発症前の1週間に肉体的あるいは精神的ストレスが存在していたかを問診した.また精神的ストレスに関して,新名の心理的ストレス反応尺度(Psychologi-cal Stress Response Scale 50 Items Revised:以下PSRS-50R)に従った問診も行った.肉体的あるいは精神的ストレスの有無についての問診では52例の症例で回答が得られた.麻痺発症前の1週間に肉体的疲労を感じていた症例は76.9%(40/52例)と高く,肉体的ストレスと顔面神経麻痺の発症の間には何らかの関連性が存在する可能性が推察された.一方精神的ストレスを有していたと回答した症例は51.9%(27/52例)であった.またPSRS-50Rによる精神的ストレスに関する問診の結果では,顔面神経麻痺患者の発症前の心理的ストレスレベルが非常に高いという結果は得られなかった.初診時の麻痺の程度と麻痺の経過および予後に影響を与える因子について,肉体的•精神的ストレスに関する問診結果を含めて重回帰分析を行った.その結果,発症前に肉体的疲労を有していたと回答した症例の方がNETが異常値を示しやすく,神経障害程度が高度であるという結果が得られた.
  • 山本 好一, 宇野 敦彦, 川島 貴之, 井脇 貴子, 土井 勝美, 久保 武
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1328-1334
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    言語習得後失聴者(n=31)の人工内耳埋め込み術中に電気聴性脳幹反応(EASR)を記録した.蝸牛鼓室階内の通電刺激後,ABRのII波,III波,V波に相当すると考えられる3つの陽性波(P1,P2およびP3)を認めた.P1,P2およびP3の潜時は,平均1.35(±0.14),2.17(±0.18),4.08(±0.31)msであり,P3の閾値および振幅勾配は,平均0.9(±0.47)mA,0.6(±0.28)μV/mAであった.本論文はEABRの閾値,勾配値と手術時年齢,失聴原因,失聴期間,プロモントリーテストの各パラメターおよびマッピング作製時の音感閾値(Tレベル),快適閾値(Cレベル)との関係について統計学的検討を加えた.その結果,マップのTレベルと相関が認められEABRを用いて自覚的閾値を予測することが可能であると考えられた.
  • 千田 英二
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1335-1347
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    他覚的蝸牛機能検査法として注目されている歪成分耳音響放射(DPOAE)の臨床応用を進める上で,雑音•性別•年齢などの背景因子は重要であるにもかかわらず,それらのDPOAEへの影響についてはいまだ不明な点が多い.そのため,内耳性難聴506耳,正常聴力494耳において耳音響放射専用測定器ILO92を用いてDPOAEの測定を行いその背景因子を検討し,さらにその結果を考慮した上でDPOAEの他覚的聴力評価法としての有用性について検討を行った.その結果,雑音レベルの増大とともにDPレベルと聴力との相関の低下を認めたため,DPOAE測定の際には雑音レベルの小さな症例のみを評価可能なデータとすべきで,雑音レベルが大きな症例は判定不能として扱うべきと考えられた.また,DPOAEの周波数特異性は高く,オージオグラム上の聴力型を考慮せずに1kHz•2kHz•4kHzそれぞれの周波数ごとでの検討が可能であった.さらに,同一聴力レベルにおける検討では,DPOAEに性差を認めなかったが,良好聴力でDPOAEへの年齢の影響を認めた.これらの結果を加味し,正常聴力耳•難聴耳の相対累積頻度の検討,受信者動作特性曲線(ROC曲線)による検討および感度•特異度•偽陽性率の検討を行い,他覚的聴力評価法としてDPOAEは有用であると考えられた.しかしながら,加齢とともにDPOAEの有用性が低下する傾向を認めたことより,正常聴力耳と難聴耳を鑑別するDPレベル値,すなわちカットオフ値の選択の際には年齢を考慮した評価値を用いるべきであると考えられた.
  • 佐久 間仁
    1998 年 101 巻 11 号 p. 1348-1357
    発行日: 1998/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    サイトケラチン(以下CKと略す)は中間径フィラメントに属する細胞骨格蛋白の一つで,細胞,組織の形態保持を担うものとされている.蝸牛におけるCKの機能的意義の解明には,CK局在の検討が重要と考えられるが,これまでの報告は蝸牛の一部のみの検討がほとんどで,回転間の差異を検討したものはほとんどない.そこでモルモット蝸牛におけるCK局在の回転差を免疫組織化学的に光顕および電顕にて観察し,CKの機能的意義を考察した.
    プライエル反射正常のモルモットを用い,光顕的観察にはHeidenhain-SuSa液にて固定,三塩化酢酸で脱灰,セロイジン包埋した標本を用いた.脱セロイジン後,6種の抗CK抗体を用いたABC法による免疫染色を行い,蝸牛回転間におけるCK局在の差異を観察した.電顕的観察では,Zamboni液にて固定しPAP法を用いた前包埋法により,回転間の差異を観察した.
    蝸牛におけるCKの局在はコルチ器支持細胞,外ラセン溝細胞,ラセン隆起細胞,歯間細胞,ライスネル膜に認められ,内外有毛細胞,血管条には認められなかった.回転間の変化として,コルチ器では上方回転ほど柱細胞,ダイテルス細胞のCK発現の増強が認められ,ヘンゼン細胞によるCK陽性域も増加した.一方蝸牛管外側壁では外ラセン溝細胞の分布に一致しCK陽性域が下方回転ほど増加した.これらより,モルモット蝸牛回転間においてCK局在の差異の存在が明らかになった.上方回転におけるコルチ器のCKの増加は,CKが柔軟な弾性のある構造を与え,コルチ器の形態保持と周波数弁別に関与していると考えられた.
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