日本耳鼻咽喉科学会会報
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104 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 北原 糺, 武田 憲昭, 西池 季隆, 宇野 敦彦, 福嶋 宗久, 奥村 新一, 久保 武
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1059-1064
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 前庭神経炎は一般に予後良好の疾患と考えられ, 主として急性期の抗めまい薬, 抗不安薬投与などの対症療法が行われている. しかし我々の以前の検討では, 半規管機能低下 (CP) が回復しない前庭神経炎例は長期にわたり体動時の浮動感が持続していた. したがって我々は, 前庭神経炎の予後を改善するためにはCP回復を目的とした治療が必要であると考え, 前庭神経炎新鮮例に対して突発性難聴に準じたステロイド治療を行い, その効果を検討した.
    (対象・方法) 平成9年4月から平成11年3月までに大阪労災病院耳鼻咽喉科を発症より5日以内に受診した前庭神経炎症例28例を, 無作為にステロイド治療投与群 (12例) と非投与群 (16例) の2群に分けた. 各症例に対して急性期の眼振所見を経過観察し, 発症後5日以内, 6ヵ月後, 24ヵ月後に計3回の温度刺激検査を施行しCPの推移を長期経過観察した. それとともに, めまい・ふらつきによる日常生活障害度の推移をアンケートを用いて確認した. 急性期の治療開始は原則として初診日より開始し, 初回温度刺激検査も同日に施行した.
    (結果) 発症24カ月後のCP回復率はステロイド非投与群50%に対して投与群75%であった. 特に, 初回検査時に高度CP (≧60%) を呈した症例において, CP回復率はステロイド非投与群33%に対して投与群67%と, 急性期ステロイド治療がCP回復を促進させる傾向を示した. さらに, 急性期ステロイド治療は, 発症後の自発眼振消失までの日数を有意に短縮させた. CPの回復した群は回復しなかった群と比べ, ステロイド投与の有無にかかわらず発症後の自発眼振消失までの日数が有意に短縮していた. また, 急性期ステロイド治療は, 急な頭部運動や体動時に生じるめまい感および気分障害による日常生活障害度を有意に改善させた.
    (考察) 前庭神経炎急性期のステロイド治療により, 他覚的にCPが回復傾向を示し, 自発眼振が早期に消失したと考えられた. さらに, 同治療法は自覚的なめまい・ふらつきによる日常生活の障害に対して有効であることが示唆された.
  • 高原 幹, 板東 伸幸, 今田 正信, 林 達哉, 野中 聡, 原渕 保明
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1065-1070
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    尋常性乾癬7例に対する扁摘の効果とその病理学的特徴について検討した. 7例の内訳は男性3例, 女性4例であり, 年齢は9歳から46歳であった. 扁摘による効果は3例が消失, 2例が著効であり, 治療効果は約70%に認められた. 病理学的な検討として, CD20抗体と抗ssDNA抗体による扁桃組織の免疫染色を行い, B細胞, T細胞, BT混合領域の面積とB細胞領域のアポトーシス細胞数を測定した. その測定値を習慣性扁桃炎, IgA腎症, 掌蹠膿疱症と比較した. 結果は, 乾癬と掌蹠膿疱症において有意なT領域の拡大, Bリンパ濾胞の縮小, リンパ濾胞内でのアポトーシス細胞の増加が認められた. このような結果から, 乾癬の中には, 臨床的のみならず組織学的にも掌蹠膿疱症と同様に扁桃病巣感染症の特徴を持つ症例が存在することが示唆された. また, 掌蹠膿疱症, IgA腎症, 乾癬症例における消失群と著効・改善群を比較すると, 消失群では有意にT領域の拡大を認めた. このような結果から, T領域の測定は術後の扁摘効果を反映する組織学的検査に成り得る可能性が期待された. 今後症例数を増やし更なる検討を加える予定である.
  • 内田 育恵, 安江 穂, 朝日 清光, 植田 広海, 中島 務
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1071-1077
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    成人の補聴器適応は, 難聴の評価に, 難聴者の生活環境, 社会活動など個人条件を加えて, 総合的に判断すべきであるが, 聴覚に関する患者背景は最も基本的な判断材料となる.
    今回, 平成10年1月より平成12年3月までの2年2ヵ月間に, 名古屋大学附属病院耳鼻咽喉科補聴器外来を受診した5歳から89歳の200名を対象とした統計学的検討を行った. 4分法平均聴力レベルによる良聴耳聴力は, 補聴器装用群では50.6±16.8dB, 非装用群では44.5±15.9dBで統計学的有意差を認めた (t検定: p<0.05). 非良聴耳聴力と, 良い方の最高語音明瞭度は, 両群間に有意差は認められなかった.
    良聴耳聴力別分布をみると, 補聴器外来受診者全体の28%が, 40dB未満の軽度難聴者で, 補聴器の装用率は60%であった. 軽度難聴は, 補聴器の部分的適応とされるが, 需要は決して少なくなく, 貸し出し試聴などの実生活での体験の重要性が確認された.
    過去に補聴器使用歴のない補聴器未経験者について, 患者本人の装用意欲の影響を検討したところ, 最終的に補聴器を購入した群では, 本人に装用意欲があったのは76%, 購入しなかった群では58%で, 両者の間にはカイ2乗検定で有意差を認め, 本人の装用意欲が重要であった. また, 試聴期間に関する検討では, 最終調整に至るまでに, 複数回の受診が必要で, 12週間以上要した例もあった.
    本研究対象症例の中には, 感音難聴の急性期治療後の症例をはじめ, 癒着性中耳炎, 鼓室硬化症, 気骨導差が少ない耳硬化症など伝音再建手術の適応と迷う症例などがあり, 大学病院補聴器外来の役割として, 難聴に対する治療とリハビリテーション両面への関与が必要と考えられた.
  • 安孫子 譲, 池田 稔, 本藤 良
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1078-1088
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    分子生物学的手法の導入によりベル麻痺の病因として, 単純ヘルペスウイルス (HSV) の関与は明らかになりつつある. 我々は, PCR法にマイクロプレート・ハイブリダイゼーション法を併用し, ベル麻痺患者の微量検体からHSVゲノムの検出を行うとともに, そのコピー数を定量して経時的な変化を検討した. さらに検出検体においてHSVの型別判定を試みた. 対象は血清抗HSV IgG抗体 (EIA: enzyme immunoassay) 陽性で, 発症14日以内に日本大学医学部付属板橋病院耳鼻咽喉科外来を受診した, 未治療のベル麻痺患者16症例である. それぞれの涙液, 耳下腺唾液, 顎下腺唾液を, 患側と健側別々に, 2回以上経時的に採取した全244検体を, DNA抽出処理後, PCR法およびマイクロプレート・ハイブリダイゼーション法を施行しHSV DNAの検出を試みた.
    結果として, 5症例 (31%), 38検体 (11.8%) にHSV DNAが検出された. 検体の採取時期からみると, 発症2週以内が最も高い検出率 (28.5%) であり, 3週以後の検出率 (2.8%) とに統計学的有意差 (p<0.05) を認めた. 採取側でみると, 健側の検出率 (18.9%) に比し, 患側の検出率 (83.8%) が有意 (p<0.01) に高率であった. ウイルスゲノムの定量的検討を行ったところ, ウイルス量 (コピー数) は患側に高値であり, 臨床経過にかかわらず, 発症早期に最も多量に検出された. また, 検出検体において, HSVの型別判定を施行したところ, すべての検体がHSV-1であった. 以上より, HSV-1の再活性化がベル麻痺の一病因をなしていることが示唆された.
  • 福岩 達哉, 牛飼 雅人, 宮之原 郁代, 松根 彰志, 黒野 祐一
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1089-1092
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) は難治性中耳炎の起炎菌として検出されることが多く, 抗菌剤耐性による感染の遷延化, あるいは反復性感染を引き起こすことが知られている. また, 中耳炎に続発する急性乳様突起炎は抗菌薬の普及によりまれな疾患となりつつあると言われているが, 発症すると重篤な合併症を伴う危険性が高いと言われている. 今回我々はPRSPを起炎菌とする急性乳様突起炎を反復した小児症例を経験した. 本症例は乳様突起炎を4回繰り返しており, その間に2回, 手術治療を施行した. 急性乳様突起炎が反復した原因としては, 当初, 起炎菌がPRSPであったことを第一に考えていた. しかし, 低γグロブリン血症が持続していたため免疫学的検索を行ったところ, IgG, IgA値の低下を認め, 原発性免疫不全症の一つであるCommon variable immunodefficiency (以下CVID) と診断された. 本症例は初発時年齢が6歳であり, それ以前には反復感染の既往がなかったことから, CVIDの発症によって乳様突起炎を反復したと考えられた. しかし反復性感染が乳様突起炎のみであり, 他に上下気道感染症などの合併症がないことを考えると, CVIDのみが反復性感染の原因ではなく, PRSPの存在も関係していると考えられた. 以上のことから, 反復性感染の原因検索に際しては耐性菌の存在を常に念頭に置きつつ, 同時に免疫不全症合併の可能性も考慮した検索が必要であることを認識させられた.
  • 光学および電子顕微鏡による病理組織学的検討
    田中 伸明
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1093-1102_2
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    成人の急性扁桃炎におけるHSV・EBV感染の関係を検索するため, 細菌検査, 血液検査, 口蓋扁桃生検組織検査の光学顕微鏡による組織形態変化とHSV抗原, EBV感染細胞の検索, さらに電子顕微鏡による観察を行い, HSV・EBVによる急性扁桃炎の臨床所見と検査結果の特徴について検討を加えた.
    対象は1997年8月から2000年3月までに東京女子医大第二病院耳鼻咽喉科を受診した急性扁桃炎の重症例42例である. 男性は24例 (平均年齢30.8歳), 女性は18例 (平均年齢28.3歳) で, 年齢は16~76歳まで (平均29.8歳) だった.
    結果として, 血清ウイルス抗体価の変動から, 4例 (9.5%) でHSV初感染急性扁桃炎, 5例 (11.9%) でEBV初感染急性扁桃炎を認めた. HSV初感染急性扁桃炎の特徴的所見として, 口内炎・皮疹, 異形リンパ球, 肝機能障害の出現, EBV初感染急性扁桃炎の特徴的所見として, 軟口蓋点状出血, リンパ球の上昇, 異形リンパ球, 肝機能障害の出現が明確になった.
    HSV初感染急性扁桃炎の発症平均年齢は28.0歳であり, 小児期以外に成人でもHSV初感染によって急性扁桃炎が引き起こされることが判明した. 口蓋扁桃生検組織でHSV初感染急性扁桃炎例はHSV抗原は2例 (50%), EBV初感染急性扁桃炎例ではEBER陽性細胞が5例 (100%) 検出され, 特殊染色が有用であった. 電子顕微鏡では, 急性扁桃炎の重症例は上皮細胞障害に始まり好中球や単核球, 形質細胞が多数上皮層に侵入してくる疾患群であることが明確になった. またHSVやEBV感染例と他の症例については障害の強弱はあるものの同様な形態的変化であった. これらのことより臨床所見の詳細な観察に加え特殊染色を含めた病理検査を積極的に行うことで, 日常診療においてHSV・EBV感染を明確にし, 早期診断・治療を可能にすることが示唆される.
  • 高齢者の慢性咳
    森島 祐子, 関沢 清久
    2001 年 104 巻 11 号 p. 1104-1107
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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