日本耳鼻咽喉科学会会報
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111 巻, 6 号
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総説
  • —匂い感知における嗅粘液の重要性と脳への信号伝達—
    東原 和成
    2008 年 111 巻 6 号 p. 475-480
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/01
    ジャーナル フリー
    生物が匂いを感知するメカニズムは, 嗅覚受容体の発見以来, 嗅神経細胞レベル, 嗅球レベル, 高次脳レベルでの解析が進み, ほぼ全貌が明らかになってきたと考えられている. しかし, 一方で, pptレベルでの匂いの感度と嗅覚受容体の閾値には矛盾があるなどの問題も残されている. また, 基礎学術知見は蓄積されてきている一方で, 産業界や臨床医学現場に役立つ応用科学面の嗅覚研究は若干注目度が低い. 本稿では, 嗅覚受容体遺伝子発見以来の歴史をふまえて, 筆者らの最近の研究から, 特に匂いの閾値の問題と嗅粘液の重要性についての知見を紹介したい.
原著
  • 金澤 丈治, 太田 康, 合津 和央, 竹生田 勝次, 椿 恵樹, 児玉 梢, 井上 理可, 臼渕 肇, 飯野 ゆき子
    2008 年 111 巻 6 号 p. 481-485
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/01
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍は, 日常臨床において比較的よく遭遇する疾患である. 耳下腺腫瘍に対する治療は手術が基本であり, 確定診断のためにも手術が行われる. このため耳下腺腫瘍手術の習得は, 耳鼻咽喉科専門医研修のなかでも重要な到達目標のひとつと考える. 今回, 平成12年1月より平成19年4月までに自治医科大学附属さいたま医療センター耳鼻咽喉科を受診した86例の耳下腺腫瘍患者のうち多形腺腫43例, ワルチン腫瘍28例の計71例に関して, 手術時間とそれに関連する因子 (年齢, 性別, 手術側, 合併症の有無, BMI, 出血量, 腫瘍径, 発生部位, 露出した顔面神経, 術者の経験) について多変量解析をおこなった. この結果, 年齢, 性別, 手術側, 合併症の有無, BMI, 露出した顔面神経については手術時間との関連は認めなかったものの, 出血量, 腫瘍径, 発生部位, 術者の経験については有意な相関を示した. また, 20-39例経験した術者の平均手術時間と40例以上経験した術者の平均手術時間は概ね同等であったことから手術時間が安定するまでには30-40例の経験が必要と思われた. この結果, 手術時間を短縮するためには経験の少ない術者は腫瘍径が小さく下極に存在する腫瘍から研鑽をはじめ経験が増すにつれて大きくて浅葉や深葉に存在する症例を経験していくことが望ましいと思われた. また, 手術時間が安定する30-40例までは熟練した指導医の補佐が必要な時期と考えた.
  • —頸部リンパ節転移についての臨床的検討—
    前田 明輝, 千々和 秀記, 坂本 菊男, 宮嶋 義巳, 梅野 博仁, 中島 格
    2008 年 111 巻 6 号 p. 486-489
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/01
    ジャーナル フリー
    目的: 上顎洞癌は頸部リンパ節転移を来しにくいとされ, リンパ節転移についての報告は少ない. 今回上顎洞癌頸部リンパ節転移症例の臨床的検討を行った. 対象は1978年~2003年に治療を行った上顎洞扁平上皮癌治療例のうち, 局所再発を認めた9症例を除く157例 (男102, 女55) で, 頸部リンパ節転移は29例に認めた. これらの症例について, 頸部リンパ節転移の1) 頻度, 2) 予後, 3) 原発巣浸潤部位, 4) 遠隔転移との関係を検討した. 1) T1, T2は転移を認めなかったが, T3が73例中10例 (14%), T4が76例中19例 (25%) に転移を認めた. 2) 5年死因特異的生存率はN(-)が63%, N(+)が18% (p<0.01) であった. 3) 後壁浸潤のある126例中29例 (23%) に転移を認め, 後壁浸潤のない31例は転移を認めなかった (p<0.01). 4) N(+)29例中9例 (31%), N(-)128例中11例 (9%) に遠隔転移を認めた (P<0.05). 上顎洞癌の後壁浸潤例は頸部リンパ節転移に注意が必要である. また, N(+)症例は遠隔転移が多い為, 化学療法等の併用を今後は考えている.
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