日本耳鼻咽喉科学会会報
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91 巻, 9 号
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  • 温 永明, 国米 秀幸, 前原 龍彦, 江浦 正郎, 猪川 勉, 石川 哮
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1345-1352
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1981年1月より1986年1月まで約5年間に当科外来を受診した641例の悪性腫瘍患者のうち,初診時T4であった53例について検討した.内訳は舌口腔癌13例,下咽頭癌10例,喉頭癌8例,甲状腺癌8例,中咽頭癌7例,鼻副鼻腔癌4例,唾液腺癌2例,上咽頭癌1例でこのうち10例が現在再発なく生存している.進展例でもenblocに腫瘍を摘出できる舌口腔癌,下咽頭癌,喉頭癌,甲状腺癌は予後がよい.治療後は手術を施行し得なかった症例は全例死亡しており,進展癌でも手術療法を中心に積極的に治療を行うべきであると考えられた.
  • 猪川 勉, 江浦 正郎, 前原 龍彦, 有島 誠一, 福島 正人, 吹上 忠祐, 温 永明, 石川 哮
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1353-1357
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    Leukapheresisを用いた養子免疫療法を7例に施行し以下の結果を得た.1) 1回のleukapheresisにより2~3時間で2~3×109個のPBLが採取でき,採血量も120~160mlと少量ですみ患者の負担も軽度である.
    2) 副作用として,発熱,悪心•嘔吐,軽度体重増加などを認めたが,いずれも治療を中止するような重篤なものではなかった.
    3) RIL-2投与による好酸球増多が7例中6例にみられたが投与終了後2週目には正常域に回復した.
    以上,ATLAK細胞,LAK細胞を用いた養子免疫療法は副作用も少なく,今後積極的に試みる価値のある治療法と思われる.
  • 飯沼 壽孝, 加瀬 康弘, 塩野 博己, 北原 伸郎, 広田 佳治, 清水 弥生, 福田 正弘
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1358-1365
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 小児副鼻腔炎179症例のウォータース法によるX線写真を対象として,画像上の撮影角度,上顎洞の病変,上顎洞骨壁の所見を分析した.
    2. 撮影実施時の撮影角度が成人に準じて適正であっても画像上の撮影角度は過半数において過剰であり,その傾向は幼少児に強い.
    3. 画像上での撮影角度の過剰は軽度病変において見掛け上での陰影増強を来しうるが中等度以上の病変の陰影には影響を来さない.
    4. 小児副鼻腔炎の画像上での病変は約70%で左右対称的であり,その傾向は幼小児に強い.
    5. 上顎洞壁の不鮮明な所見の出現率は,上顎洞上壁内方で18.4%,同外方で17.3%,頬骨陥凹部で24.6%,頬骨歯槽突起線で1.1%である.
    6. いずれかの部位で洞壁が不鮮明となる率は軽度病変で16.2%,中等度で47.8%,高度で72.0%となり,画像上での病変が高度になるに従って洞壁の所見は不鮮明となる.
    7. 小児におけるウォータース法では,成人における撮影角度(耳眼面に対して45度)を修正し,3-4歳では20-25度とし,以降は年齢と小児の個体としての発育に合わせて,10歳以降ではじめて成人なみとする.
    8. 小児副鼻腔炎のX線診断では,合併症や悪性腫瘍の疑いがない場合は,4-6歳まではウォータース法のみでもよく,7-9歳以降は症例に応じてコールドウェル法を併用する.
    9. 他の画像診断として,上顎洞内の貯留液の有無に関してはAモード超音波検査法が有用である.
    10. 小児副鼻腔炎の画像診断にはX線診断法に超音波診断法を組み合わせることで経過観察と治療効果の判定がより簡単となろう.
  • 服部 康夫, 村上 忠也, 中村 兼一, 弓削 庫太
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1366-1374
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    10年以上の経過観察を行い得た側頭骨monostotic fibrous dysplasiaの2例(1:15歳,男子.2:12歳,女子)につき報告した.
    1. 2例ともに患側の外耳道狭窄による伝音難聴を訴え,それぞれmodified radical mastoidectomyにより聴力が回復した.
    2. 病変の微形態は,2例間で極めて良く類似し,それぞれ初回手術時の微形態と次回手術時のそれとの間に著変はなかった.
    a) 病変の増大は,筋線維芽細胞類似細胞の未熟な骨梁産生によると考えられた.
    b) 未熟な骨梁の吸収に単球類似細胞の関与が考えられた.
  • 岡本 牧人, 高橋 廣臣, 八尾 和雄, 古川 浩三
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1375-1380
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    Seventeen cases of carcinoma of the hypopharynx and the cervical esophagus who had been treated from 1979 to 1982 at Kitasato University Hospital were investigated retrospectively. Fourteen of them were advanced cases.
    Nine patients were alive for more than five years. Seven were alive with no evidence of the disease, one was alive with reccurrent disease in the cervical lymph nodes and could not be followed up after five years.
    Six patients died of original disease, in addition to them, one died suddenly of unknown cause after eleven months and one died of gastric cancer after 39 months. No evidence or original disease was seen in the latter two.
    Five-year survival rate was 53% (9/17) in total cases and 69% (9/13) excluding two cases died of other causes and two who refused the surgical therapy.
  • 聴力回復の判定規準と自覚的改善度との比較
    原田 勇彦, 仙波 哲雄, 鈴木 光也, 室伏 利久, 菊地 茂
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1381-1387
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    An enquete survey on 106 sudden deafness patients was undertaken with the object of comparing the criteria for prognosis with the patient's own subjective sense of improvement. The results of the inquiry disclosed that subjective improvement in hearing was generally worse than criteria for prognosis, and that comprehensive subjective improvement was even worse. General agreement was noted between criteria for prognosis and the subjective improvement in the "cured" and "unchanged" groups, whereas the agreement was minimal in the "markedly improved" group. This may imply that the "markedly improved" group comprises the most contradictory cases. There was a statistically significant correlation between the subjective improvement and stabilized hearing level, but no significant correlation was noted between subjective improvement and the range of hearing level improvement. This may indicate that the patient tends to judge his prognosis by the degree to which his hearing has improved rather than the degree by which his hearing has improved. These results appear to support some of the arguments against the current criteria for prognosis which were first determined by the Committee on Sudden Deafness of the Ministry of Health and Welfare and are now widely used in Japan.
  • 佐藤 信清, 田中 克彦, 間口 四郎, 吉村 理, 福田 諭, 酒井 昇, 寺山 吉彦, 須崎 一雄
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1388-1394
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1) 当科で施行しているTEシャント造設術の現況を報告し,TEシャントの機能的評価について検討を加えた.
    2) TEシャント造設術は25例中16例が成功し,獲得した音声は音圧,持続時間ともに良好な症例が多かった.
    3) シャント部からの誤嚥,漏れはほとんどの症例にみられ,その時期は塊(Bolus)がシャント部を通過した後に生じるものが多かった.
    4) TEシャントを造設する際には,術後咽腔の狭小化の有無,肺機能,患者の意欲と環境等も考慮すべきであると考えた.
  • 福田 正弘, 韓 東煕, 石橋 敏夫, 菊地 茂, 庄司 稔, 飯沼 壽孝
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1395-1399
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    Preoperative CT images of 96 cases (104 sides) of postoperative cysts of the maxilla, seen between 1982 to 1987, were analyzed as to their modes of distribution in the maxilla.
    Three scanned planes, i. e., middle inferior meatus level, superior inferior meatus level, and middle meatus level (each level in 0.5cm distance) were included in the study.
    The distribution were classified into four groups by the combination of the bony destruction seen in both medial and posterior sinus walls. In the middle inferior meatus level, the group only with medial wall destruction, accounts for about 40%.
    As a general tendency, cysts localize in the central portion of sinus. Polycystic cysts, however, tend to occupy the whole sinus. The expansion of anterior sinus walls decreases as the upper level approachs, and polycystic cysts show more expansion rate than single cysts.
  • 雨皿 亮, 鵜飼 幸太郎, 加藤 昭彦, 斎田 哲, 坂倉 康夫
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1413-1418
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1) 1) SCMCは,in vitroの条件下で,NDV感染により障害されたチキン鼻粘膜繊毛打頻度を改善した.
    2) SCMCの代謝産物であるS-methylysteine sulfoxideには繊毛打頻度を増加させる作用があることが示唆されたが,SCMC sulfoxideの効果は弱いと思われた.
    3) 障害の高度な細胞に対しては,本薬剤の効果は少ないと思われた.
    4) 繊毛運動が傷害されるような気道疾患に対し,SCMCが有効である可能性が示唆された.
  • 大木 幹文
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1419-1434
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    鼻腔の通気性は様々な条件の下で,変化する.その通気性に影響を与える因子としては,構造性因子と粘膜性因子に大別することができる.これらの因子がどのように鼻腔に影響を与えるかを検討するため,今回,鼻腔通気度計を用い,鼻腔抵抗を測定した.本法により,鼻腔の通気性を客観的に評価することができた.その中で,運動負荷を行い,鼻腔抵抗の変化を測定したところ以下のような結果が得られた.
    (1) 正常成人,成人鼻アレルギー患者,正常児,小児鼻アレルギー患者,気管支喘息児に運動負荷(トレツドミル10%6km/h,6分間)行うと,運動直後には鼻腔抵抗の減少がみられ,鼻アレルギー患者は,正常者に比べて,著しい鼻腔抵抗の減少がみられた.
    (2) 運動直後の鼻腔抵抗値は,正常者,鼻アレルギー患者もほぼ等しい値となった.
    (3) 運動負荷時間を,2分,4分,6分と変化させたが,運動直後の鼻腔抵抗値の減少には,有意差がみられなかった.
    (4) 正常者の運動直後の片側鼻腔抵抗値の左右差は,1.0±0.7cmH2O,/L/Sと安静時の4.0±3.5cmH2O/L/Sに比べて減少した.しかしながら,鼻腔骨格形態異常を伴った鼻アレルギー患者は,運動直後も,鼻腔抵抗値の左右差は,大きく,累積分布曲線による分析からは,2.4cmH2O/L/Sより大きい値を示した者には鼻腔形態異常を示す例が多かった(誤診率18%).従って,運動負荷は鼻腔骨格形態異常の客観的評価に有用であると考えられた.
    (5) 運動負荷後の全鼻腔抵抗の変化は,運動後5分後から鼻控抵抗値の上昇傾向を示した.正常者が安静時とほぼ変わらない鼻腔抵抗値を示すのに対し,鼻アレルギー患者では安静時に比べて全鼻腔抵抗値が上昇する傾向がみられた.
    (6) 運動後の片側鼻腔抵抗の変化では,10~20分後に極端に片側鼻腔抵抗値の上昇がみられ,100cmH2O/L/S以上になる例,すなわち運動誘発鼻閉(EINO)が成人鼻アレルギー患者では,15例(23%),小児鼻アレルギー患者,6例(40%),気管支喘息児18例(36%)にみられた.
    (7) 気管支喘息児においては運動誘発鼻閉(EINO)と運動誘発喘息(EIA)の間には明らかな相関がみられなかった.
    このように,運動負荷は,ダイナミックに鼻粘膜を腫脹,収縮させ,生理的変動を検索するうえで,非常に有益な方法であることが明らかになった.運動直後の片側鼻腔抵抗値の左右差からは,鼻腔の骨格構造の異常をある程度のところまで,推測することができ,例えば,鼻中隔彎曲症の手術適応を,決めるのにも有効であろうと考えられる.また,運動後の鼻控抵抗の戻り方をみていくと,鼻アレルギー患者においては,気管支喘息患者(特に小児)の,運動誘発喘息(EIA)と似たような現象,すなわち運動誘発鼻閉(EINO)と
    いう現象が発現することが確認された.しかしながら,EIAとの間には発現時期の差があり,その発現メカニズムは,まだ不明な点が多い.また,小児と成人の発現率は,小児の方が高い傾向にあった.このように,EINOは鼻アレルギー粘膜の非特異的刺激に対する反応プロセスを考えるうえで,極めて示唆に富むものである.したがって,EINOの発現機序の解明は,鼻腔生理,および,鼻アレルギーの病態生理の研究の上で,重要であると考えられた.
  • 青木 秀治
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1435-1443
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    ヒトの前庭眼反射系と視運動性眼振系の関連を検討する目的で,左右逆転視,および拡大視による前庭眼反射の適応現象がOKN系に及ぼす影響について検討した.
    左右逆転視によるVORの適応下では,OKNの利得はVORの利得の低下にほぼ平行して減少し,この結果から,両者はその利得制御系を共有するものと思われた.しかし,拡大視では,VORの利得は増大するものの,OKNの利得には少なくとも今回用いた条件下では影響を与えなかった.
  • 目沢 朗憲
    1988 年 91 巻 9 号 p. 1444-1450
    発行日: 1988年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    ハウスダスト抗原,ヒスタミン,ロイコトリエン(LTD4), PAF,プロスタグランディン(PGD2)による鼻粘膜誘発反応を行った.くしゃみ発作はハウスダスト抗原誘発,ヒスタミン誘発の際認められた.鼻汁分泌がみとめられたのはハウスダスト抗原誘発,ヒスタミン誘発,ロイコトリエン(LTD4)誘発,PAF誘発であった.ハウスダスト抗原誘発,ヒスタミン誘発による鼻汁分泌が最も著明であった.ヒスタミン誘発による鼻汁分泌はロイコトリエン(LTD4)誘発による鼻汁分泌より多かった.ロイコトリエン(LTD4)誘発による鼻汁分泌はPAF誘発による鼻汁分泌より多かった.鼻腔通気抵抗比の増加はハウスダスト抗原誘発,ヒスタミン誘発,ロイコトリエン(LTD4)誘発,PAF誘発の順であったが,ヒスタミン誘発,ロイコトリエン(LTD4)誘発,PAF誘発による総鼻腔通気抵抗比に有意差は認められなかった.プロスタグランディン(PGD2)誘発では鼻症状に変化は認められなかった.誘発された症状や閾値濃度から考慮すると,アレルギー性鼻炎の症状形成に最も強く関与しているのはヒスタミンとロイコトリエンと思われた.
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