日本耳鼻咽喉科学会会報
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97 巻, 6 号
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  • 藤本 崇史, 木西 實, 毛利 光宏, 天津 睦郎
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1009-1018
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    Over the past 17 years, we have been performing tracheoesophageal (TE) fistulization for voice restoration following total laryngectomy. The purpose of this technique is to divert the exhaled air through the TE fistula into the hypopharynx where the inferior constrictor muscle forms the retropharyngeal prominence on which the neoglottis is located. It is generally accepted that both pulmonary power and laryngeal adjustment control voice frequency and intensity change in laryngeal phonation. Regularity at various pitches and voice intensities was seen in TE phonation, despite laryngeal adjustment being lost. Regular voice production with various pitches and intensities requires a regulatory mechanism for both pulmonary power and the neoglottis. This study was designed to clarify the mechanism of neoglottic adjustment in TE phonation.
    Ten speakers with TE fistula were subjected to aerodynamic and electrophysiological investigations. Tracheal pressure, fundamental frequency, intensity, and airflow rate were measured for easy phonation, a high-pitched voice, and a loud voice. Resistance and efficiency of the neoglottis were calculated from the data obtained. Electromyograms of the inferior constrictor muscle and tracheal pressure were simultaneously recorded when the pitch or intensity of the voice increased.
    Six of the ten subjects examined were able to produce a high-pitched voice. Tracheal pressure increased in all six, the airflow rate in four, and neoglottal resistance in five, as compared with the data obtained during easy phonation.
    Nine of the ten subjects examined were able to produce a loud voice. In all nine, both tracheal pressure and the airflow rate increased as compared with the values measured during easy phonation. Neoglottal resistance had no deffinite pattern in relation to voice intensity changes.
    Electrophysiological study demonstrated that the activity of the inferior constrictor muscle increased as tracheal pressure increased so as to raise the pitch or increase the intensity of the voice.
    These results indicate that the adjustment of neoglottic closure and stiffness produced by the inferior constrictor muscle has the role of varying the frequency or intensity of the voice.
  • 小川 雅浩, 竹生 田勝次, 西嶌 渡, 角田 玲子
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1028-1033
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳下腺のSDCの1症例について報告した.症例は74歳の女性で左顔面神経麻痺と左耳下部腫瘤を主訴に当科を受診した.左耳下腺悪性腫瘍と診断し,顔面神経を含めた左耳下腺全摘出術,左根本的頸部郭清術,左軟骨部外耳道および耳下部皮膚合併切除術,D-P皮弁による耳下部皮膚再建術を施行した.術後,耳下部および頸部に50Gy照射し経過観察中であるが再発を認めず経過良好である.SDCは1968年にKleinsasserらによって初めて報告された唾液腺癌であり,本邦での報告例は少ない.欧米での報告例ではSDCは唾液腺癌の中でも悪性度が極めて高く,局所再発や遠隔転移をおこしやすく予後の悪い腫瘍である.そのため,SDCに対しては根治性の高い拡大手術と治療後の厳重な経過観察が必要であると思われた.
  • 坂 哲郎, 山本 祐三, 伊藤 尚, 井上 功, 今中 政支, 岡東 史之, 高橋 宏明
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1034-1040
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌で,同一腫瘍内に異なった組織構築を有する6症例について,DNA顕微蛍光測光法を用い組織構築別に腫瘍細胞の増殖動態を検討し,次のことが明らかになった.
    1. 甲状腺乳頭癌の増殖活性は同一腫瘍内でも病理組織像の相違により,差がみられる場合があることが判明した.すなわち,病理組織像の相違は増殖活性の相違を反映している可能性が高いことが明らかになった.
    2. 周囲組織へ浸潤がみられる場合,浸潤部位の増殖活性が腫瘍中心部のそれより亢進する傾向が認められた.従って,周囲組織浸潤部位など腫瘍先進部の増殖活性を知ることが,その腫瘍の生物学的悪性度のより正確な評価につながると考えられた.
    3. 核DNA定量によるS+G2M期細胞比率と,組織学的分化度は比較的相関した成績を示した.しかし組織学的分化度が同じでも増殖活性が明らかに異なる場合もあり,核DNA定量は増殖活性の評価に有意義な方法であると考えられた.
  • 吉崎 智一, 古川 仭
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1041-1046
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    11人の唾石症患者に対してESWLによる治療を施行した.ESWLは腺内唾石および移行部唾石に対して治療価値があり唾石の大きさは小さい方が,唾石の個数は少ない方が,そして罹病期間は短い方が有効性が高いと考えられる.
  • 稲木 勝英, 高橋 廣臣
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1047-1055
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    口腔•咽頭のみに生じた不規則な形の潰瘍性病変で,様々な検査でその原因を見いだすことができず,再発傾向を持ち,さらに適切な治療が行われないと1カ月以上も治癒しない病変を難治性口腔•咽頭潰瘍と定義し,該当する症例25例のうち標本採取がなされた22例に対し病理組織学的検討を行った.
    1. H. E染色で浸潤細胞の種類により5つの組織型(LP型,LPE型,NL型,NLE型,NLP型)に分類した.
    2. UCHL1, L26を用いて浸潤リンパ球の型分類を行いLP型の2例以外はすべてTリンパ球優位であった.
    3. HLA-DRを用いて活性型Tリンパ球,ランゲルハンス細胞の出現度および血管内皮,上皮でのHLA-DRの発現について観察した.その結果組織分類別にそれぞれ特徴があることを示した.
    4. GROCOTT染色にて真菌感染の有無について観察した.真菌感染がみられたのはNLE型の1例だけであった.
  • 川城 信子, 土橋 信明, 荒木 昭夫, 古賀 慶次郎, 河野 寿夫, 伊藤 裕司
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1056-1061
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    NICU退院時のABRが正常であり,その後難聴と判明した症例10症例について検討した.退院時のABRが正常であったので難聴に気付いた時期が遅れた.難聴は生後10カ月から3歳3カ月で判明した.難聴の程度は90dB以上の高度難聴が6例,低音部の聴力が残存し,高音漸傾型の高度難聴が3例,60dBの高音漸傾型で中等度難聴が1例であった.
    全例が周産期に重症の呼吸婚環障害があり,全例が挿管し人工呼吸の呼吸管理を行っていた.原因疾患としてPPHNの状態が10例中8例に認められた.これはPPHN25例中の8例,32%に難聴が発生したことになる.人工呼吸管理症例166例中12例,7.2%に難聴の発生があった.ECMOを使用した症例が6例あり,ECMO使用例8例の75%に難聴が発生したことになる.難聴の原因として人工呼吸管理方法に問題があるのかもしれない.また,アミノグリコシド系の薬剤,フロセマイド利尿剤も全例に使用されており,これらの薬剤の使用も否定できない.ABRが正常であっても安心してはならず,重症の呼吸困難症例では聴力についての観察が必要であり,6カ月および1歳前後にはABRによる聴力のスクリーニングが必要であることが判明した.
  • ECPおよびEG2について
    成田 慎一郎, 斎藤 博子, 朝倉 光司, 白崎 英明, 小笠原 英樹, 形浦 昭克
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1062-1069
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    我々は鼻アレルギー患者における,抗原誘発前後の鼻腔洗浄液中の好酸球動態を検討した.抗原誘発により鼻腔洗浄液沈渣中の好酸球数と好酸球の活性化の指標であるEG2陽性率の有意な上昇を認め,上清中のECP濃度も上昇した.これらは抗原誘発後の鼻症状の重症な群でより顕著な上昇傾向を認めた.これらの結果より鼻アレルギーの抗原誘発後の鼻症状に鼻腔洗浄液中の好酸球動態が深く関与することが示唆された.
  • 飯野 ゆき子, 大蔵 眞一, 志賀 淳治, 鳥山 稔, 工藤 宏一郎
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1070-1078
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1) EM療法を施行した難治性慢性副鼻腔炎症例21例の,鼻茸及び前篩骨洞粘膜を病理組織学的に調べ,その有効性と比較検討した.
    2) EM療法の有効な症例では線毛上皮直下の浸潤細胞はリンパ球が優位であった.
    3) 好酸球優位の症例では,EM療法の有効性が有意に低かった.
    4) 上皮下や上皮内に好中球が多く出現している症例では,EM療法が有効である場合が多かった.
    5) EM療法有効例では投与後に炎症細胞の減少,浮腫の減少,線維化の増強,分泌腺組織の正常化が見られた.
  • 大塚 健司, 冨田 寛, 山内 曲紀, 北郷 秀人
    1994 年 97 巻 6 号 p. 1079-1089
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    全麻下で扁摘を受け,術後味覚異常を訴えて,われわれの味覚外来を訪れた11例を分析した結果,その原因は,舌咽神経舌枝の直接的な障害と考えられた症例は3例(27%)であり,その他の原因,すなわち術前術後の食事性亜鉛欠乏症が原因と考えられた症例が3例(27%),術前術後に投与された薬剤の副作用と考えられた症例が2例(18%)であった.
    全例全麻下の扁摘であったことから,Davis型開口器による舌の圧迫が影響した症例もあったと考えられる.
    扁摘による神経障害か否かの診断には,神経支配別味覚検査(電気味覚検査および濾紙ディスク法)が欠かせない.
    予後は良好な例が多かったが,患者を納得させる検査と治療が肝要である.
    扁摘にこついての説明と同意を得る際に,術後味覚異常が起こる危険についても触れるべきであり,術前検査として,神経支配別味覚閾値と血清亜鉛値の測定,そして常用薬の内容について問診しておく必要がある.
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