日本耳鼻咽喉科学会会報
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122 巻 , 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
総説
  • 將積 日出夫
    原稿種別: 総説
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1191-1197
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     メニエール病の治療はめまい発作期と間欠期治療に分けられる. 発作期では, 7%重層水静注, 制吐薬などが用いられ, 難聴合併例では副腎皮質ステロイド薬が併用される. 発作予防を目的とする間欠期の治療では, 従来, 保存的治療, 外科的・前庭機能破壊的治療 (内リンパ嚢開放術, 内耳中毒物質鼓室内注入法, 前庭神経切断術) が行われてきた. 保存的治療として生活指導 (ストレス回避, 有酸素運動), 水分摂取療法, 浸透圧利尿薬, 利水剤を中心とした漢方薬があり, 浸透圧利尿薬と漢方薬の併用で効果が期待できるものがある. 中耳加圧治療は低侵襲の新しい治療法である. 近年, メニエール病の治療選択として保存的治療と外科的前庭破壊的治療の間に中耳加圧治療を入れた段階的治療法が報告されている. 中耳加圧治療器として欧米製の Meniett® と本邦の鼓膜マッサージ機があり, 本邦でも臨床研究でめまいに対する治療効果が報告された. 中耳加圧装置は経済産業省の受託研究により開発された新しい治療器で, 小型, 軽量, コンピュータ化された点が特徴である. 企業治験結果を基に2017年に薬事承認され, 2018年に中耳加圧装置を用いた中耳加圧治療は保険収載された.

  • 上出 洋介
    原稿種別: 総説
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1198-1201
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     小児中耳炎の起炎菌の耐性化が問題となり, 2009年頃から医療社会動向に大きな変化があり, 中耳炎起炎菌にも変化が見られた. しかしあまりに急激な変化にわれわれも十分追従していないように思われた. その一つとして重症肺炎球菌感染症が激減し, さらに急性中耳炎へ波及し莢膜血清型ワクチンタイプの減少と血清型置換が報告されている. 肺炎球菌予防接種は乳児期の中耳炎症状の軽減化を起こしている可能性が示唆された.

     副鼻腔炎を伴う滲出性中耳炎治療では副鼻腔治療を行うことで結果的に滲出性中耳炎の改善が見込まれる例が多い.

     難治性中耳炎には GERD が関与していることがあるので中耳貯留液の pH を測定して関連を予想することも一つの手段である.

  • 安松 隆治
    原稿種別: 総説
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1202-1208
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     免疫チェックポイント阻害薬, ニボルマブは, 臨床効果を検証する CheckMate 141 試験において, 初めてプラチナ製剤抵抗性の再発・転移頭頸部扁平上皮癌患者に対する全生存期間 (OS) 延長効果を示した. その結果を踏まえて, 2017年3月から本邦でも「再発または遠隔転移を有する頭頸部癌」に対して実臨床で使用可能となった. これまで切除不能再発・転移頭頸部癌に対しては, プラチナ製剤 +5-FU+ セツキシマブ併用療法 (EXTREME レジメン) のみが推奨されていたが, 最新の頭頸部がん診療ガイドライン, NCCN ガイドラインではプラチナベースの化学療法施行中あるいは施行後に病勢進行した症例には, ニボルマブ単剤も category 1 で推奨されており, ニボルマブの登場によって頭頸部領域の再発・転移扁平上皮癌に対する薬物療法は劇的な変化を迎えたといえる.

     最近の報告では, EXTREME レジメンを含むこれまでの薬物療法では長期生存が難しいとされてきた再発・転移頭頸部癌において, ニボルマブによる治療の結果, 長期生存している例が散見されるようになっている. また, ニボルマブの効果が得られなかった症例でも, その後に行う化学療法の有効率が高いという報告がなされており, 再発・転移頭頸部癌症例に対する全体の治療戦略として PS が保たれている早い段階でのニボルマブ投与が望ましいのではないかと考えられる.

     一方でニボルマブ投与症例では, 特有の免疫関連有害事象 (irAE) が認められることがあり, 診療科, 職種の垣根を越えた協力体制の構築が不可欠である. 近年, 他癌種の免疫チェックポイント阻害薬投与症例で irAE の発現と治療効果の関連を示す報告も注目されており, irAE のマネジメントが患者の生存期間延長のためにはより重要な要素と考えられる. 本稿では最新の知見, 当科におけるニボルマブによる再発・転移頭頸部癌治療の現状について述べる.

  • 島津 倫太郎, 倉富 勇一郎
    原稿種別: 総説
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1209-1213
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     咽喉頭酸逆流症 (Laryngopharyngeal reflux disease: LPRD) の罹患者数は, 年々増加傾向にある. しかし LPRD の発症機序や胃酸逆流との関連性には不明な点が多い. その病態生理を理解するために, われわれはヒトの慢性逆流性食道炎の病態に近い GERD モデルラットを作製し, 咽喉頭および下気道の組織学的変化を観察してきた. これまで咽喉頭異常感症, 慢性咳嗽, 喉頭肉芽腫, 歯牙酸食および歯周炎, 肺線維症の発症機序における胃酸逆流の関連性について検討した. そこでこれらの結果を総括し, 今後の課題について解説する.

  • 佐治 直樹
    原稿種別: 総説
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1214-1220
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     本邦は高齢化社会を迎え, 要支援/要介護が必要な高齢者, さらには認知症を伴う高齢者数が増加しつつある. 認知症の患者数は65歳以上の高齢者で440万人であり, 認知症の前段階とも言うべき軽度認知障害 (Mild Cognitive Impairment: MCI) も約380万人と推計されている. これまでは, 認知症は予防が困難であり根治薬がない疾患として考えられてきた. しかし, 最近の論文では, 修正可能な認知症の危険因子がいくつか報告されており, その中でも難聴がクローズアップされている. すなわち, 難聴を伴う高齢者に早期段階から補聴器を導入することで認知症予防が可能かどうか, が興味ある研究テーマとして注目されている. また, 難聴以外にも, 平衡障害や嗅覚障害, 睡眠時無呼吸症候群など, 高齢者の健康長寿にかかわる疾患と耳鼻咽喉科は関連している.

     「認知症」は MCI から重度の認知症まで幅広いレンジで取り扱われるようになり, 社会のさまざまな側面に関与する. そのため, 認知症の理解を深めるための普及・啓発活動の推進とともに, MCI や認知症に対する適時適切な医療・介護等の提供が望まれている. これらの骨格は新オレンジプランとして平成27年に厚生労働省から公表されており, この施策をもとに, 認知症基盤整備事業として「オレンジレジストリ研究」が開始されている. 現在, オレンジレジストリ研究を背景に, 感覚器と認知症の関連が注目を集めている. 本稿では, 耳鼻咽喉科領域と認知症についての関係と今後の展望について概説したい.

原著
  • 日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 , 守本 倫子, 益田 慎, 麻生 伸, 樫尾 明憲, 神田 幸彦, 中澤 操, 増田 佐和子, ...
    原稿種別: 原著
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1221-1228
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     乳幼児の自覚的聴力検査から得られる情報は重要であり, 可能な限り信頼性の高いデータを短時間に得る必要がある. これらの検査技術の困難度, 信頼度が年齢 (3歳未満, 3~6歳, 6歳以上の3群に分類) や発達レベル (定型発達, 発達障害, 知的発達障害の3群に分類) から受ける影響を, 聴力検査にかかった時間および検者が声かけなどに対する反応などから感じた聴力検査結果との整合性を「検査信頼度」として評価, 検討を行った. 研究参加施設は大学病院, 総合病院, クリニックなど15施設である. 検査の信頼度は, 3歳未満では知的発達障害児で41%, 定型発達児58%, 発達障害児50%と知的発達障害児が有意に低かった. 3~6歳では定型発達児88%, 発達障害児75%, 知的発達障害児73%であり, 6歳以上では発達障害児と定型発達児はどちらも90%以上であったが, 知的発達障害児のみ77%であった. 検査にかかる時間も3歳未満では, 発達による差異は認められなかったが, 3~6歳未満および6歳以上においては, 発達障害児と定型発達児に比べて知的発達障害児の検査時間は有意に長かった. 6歳未満の児への聴力検査には技術と時間がかかること, 発達障害・知的発達障害があるとさらに検者の検査にかける時間や高度な技術が必要となることが明らかになった.

  • 木谷 有加, 畠山 博充, 小松 正規, 佐久間 直子, 柴田 邦彦, 木谷 洋輔, 笠井 理行, 松本 悠, 井上 綾佳, 折舘 伸彦
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1229-1234
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     進行性筋ジストロフィーは骨格筋の変性と筋脱力を主徴とする疾患であり, 進行性に呼吸不全を生じると気管切開による人工呼吸器管理が必要となりカニューレによる合併症を起こしやすい. 今回, Duchenne 型筋ジストロフィーの1例で長期人工呼吸器管理中に, 過大なカフ圧および気管カニューレの固定不良により気管孔の拡大および椎体変形を合併した症例を経験した. カニューレの固定方法, 適切なカニューレの選択, および同一部位にカフ圧がかかることを避ける工夫等カニューレ管理を工夫することで在宅療養に移行できた. 在宅での長期人工呼吸器管理が必要な神経筋疾患患者では, 適切なカニューレ管理が可能な環境を整えることが必要である.

  • 冨山 道夫
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1235-1239
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     これまでに報告のない急性上咽頭炎を合併した成人マイコプラズマ肺炎の1例を経験した. 症例は21歳, 女性で, 特徴は発熱, 咽頭痛, 頭痛で発症し, その後咳嗽が増悪する臨床経過を示したこと, 全身状態が良好であったこと, 高度の咽頭痛, 頭痛があり上咽頭に多量の膿付着を認めるが, 白血球数正常で CRP の上昇が見られたこと, 胸部 X 線で右下肺野にマイコプラズマ肺炎に特徴的な雲状陰影を認めたこと, 上咽頭より Mycoplasma pneumoniae が検出されたことである. 本症例のような臨床経過, 全身状態, 検査所見を示した場合は, M. pneumoniae による急性上咽頭炎と肺炎の合併を疑い精査する必要がある.

  • 桝谷 将偉, 瀧 重成
    2019 年 122 巻 9 号 p. 1240-1244
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル フリー

     軟口蓋ミオクローヌスは, 主に軟口蓋に律動性不随意の筋収縮が安静時に見られる病態であり, 他覚的耳鳴を主訴とすることがある. 治療は困難であり, いまだ有効な治療法がないのが現状である. 近年, 軟口蓋ミオクローヌスは振戦の一種と位置付けられるようになってきたが, チックが原因であるとも言われている. いずれも基底核のドーパミン異常が原因と考えられている. 本症例でも抗痙攣剤単独では状態に変化がなく, チアプリドの併用で状態の改善を認めた. 軟口蓋ミオクローヌスは, 基底核のドーパミン生成の異常が原因となっている可能性があり, 今後同領域のドーパミン生成・分布異常が捉えられれば, 治療に繋がる可能性があるのではと考えた.

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