Balloon sinuplastyは, 特殊なバルーンカテーテルを用いて副鼻腔自然口を低侵襲に開大する新しい治療法で, 2005年に米国で開始され現在全世界で4万例以上に施行されている. 国内では, 慈恵医大, 順天堂大, 関西医大を合わせて2010年5月までに全症例数27例で臨床治験が行われた. その結果, 内視鏡による洞開存率は, 術後1週間で88% (海外の報告は68%), 術後1年間で66% (海外で85%), CT画像による洞開存性 (Lund-Mackay CT score平均値) は, 術前3.53 (海外で5.96) から術後0~0.3 (1年以内) (海外で1.13), 自覚症状の改善は, 消失~軽度まで改善 (海外の報告ではSNOT-20平均スコアで2.01⇒1.09と差が0.8以上を示し臨床的に有意とされている), 再手術の割合は, 術後1年以内で26例中3例 (11.5%) に認め, そのすべては前頭洞でいずれもDrafの手術が行われている. 海外では1年で5.7%, 2年で9.2%であった.
手術適応は, 篩骨洞を除く副鼻腔炎, 術後の自然口狭窄例, 線毛運動機能障害, 航空性副鼻腔炎などで, 非適応は汎副鼻腔炎, ポリープ症例, 好酸球性副鼻腔炎, アレルギー性真菌症副鼻腔炎 (AFS), 副鼻腔真菌症 (菌塊が大), 骨増殖の強い例などが考えられる. 副鼻腔手術のコンセプトは, 自然口の閉塞を改善することにあり, これまでの手術では病変組織を鉗除する侵襲的なものであったが, 本手技はその閉塞部位をバルーンカテーテルを用いて開大するだけで, 簡便に行え, 手術法と同等の効果が期待できること, また短時間で行え患者への負担も少なく外来治療も可能である. 一方, 篩骨洞が非対象であること, 自然口拡大が最大7mmと限界があること, その他放射線被爆やコスト (約14万円) などが問題である.
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