日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
114 巻, 8 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 神田 幸彦
    2011 年 114 巻 8 号 p. 703-712
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    補聴器 (右耳) と人工内耳 (左耳) を装用する医師として243名の人工内耳手術を執刀医として経験したこと, 10年前に開業し人工内耳・聴覚リハビリ医療機関で行ってきた補聴器適合, 人工内耳と補聴器の聴覚リハビリテーションを通して筆者自身の難聴の経験と医療の現場を通して得られたことを振り返って報告した. 医学生時代の24歳から20種類以上の補聴器を装用, アナログからデジタル, そして最近では第3世代のデジタルも出現, ISP (統合信号処理) やFMなども進歩している. 使用してきた補聴器の利点を報告した. 一方, 人工内耳は2004年に補聴器非装用側に「より良い聴覚の獲得」を目的として, 以前留学していたドイツ・ビュルツブルグ大学で人工内耳手術を受けてきた. 現在6年が経過したが, 補聴器との両耳聴により, 騒音下・離れたところからの会話・早口の会話・音楽の聴取などがより改善された. 現在は左の人工内耳だけでも会話可能で装用閾値は20-30dB, 語音明瞭度 (67-S) は左人工内耳のみで95%, 騒音下 (S/N=0, 70/70) で90%である. 両耳聴では50, 60, 70dBSPLすべての提示音圧, 騒音下で100%となった. 人工内耳も最新の器機では聴取能アップが進んでいる. 筆者自身の難聴の経験, 聴覚の回復の過程, 患者としての心理, 補聴器・人工内耳の近来の進歩と人工内耳の未来について考察を加え報告する.
  • 友田 幸一, 朝子 幹也, 村田 英之, 馬場 一泰, 河本 光平, 井上 俊哉, 大櫛 哲史, 池田 勝久
    2011 年 114 巻 8 号 p. 713-720
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    Balloon sinuplastyは, 特殊なバルーンカテーテルを用いて副鼻腔自然口を低侵襲に開大する新しい治療法で, 2005年に米国で開始され現在全世界で4万例以上に施行されている. 国内では, 慈恵医大, 順天堂大, 関西医大を合わせて2010年5月までに全症例数27例で臨床治験が行われた. その結果, 内視鏡による洞開存率は, 術後1週間で88% (海外の報告は68%), 術後1年間で66% (海外で85%), CT画像による洞開存性 (Lund-Mackay CT score平均値) は, 術前3.53 (海外で5.96) から術後0~0.3 (1年以内) (海外で1.13), 自覚症状の改善は, 消失~軽度まで改善 (海外の報告ではSNOT-20平均スコアで2.01⇒1.09と差が0.8以上を示し臨床的に有意とされている), 再手術の割合は, 術後1年以内で26例中3例 (11.5%) に認め, そのすべては前頭洞でいずれもDrafの手術が行われている. 海外では1年で5.7%, 2年で9.2%であった.
    手術適応は, 篩骨洞を除く副鼻腔炎, 術後の自然口狭窄例, 線毛運動機能障害, 航空性副鼻腔炎などで, 非適応は汎副鼻腔炎, ポリープ症例, 好酸球性副鼻腔炎, アレルギー性真菌症副鼻腔炎 (AFS), 副鼻腔真菌症 (菌塊が大), 骨増殖の強い例などが考えられる. 副鼻腔手術のコンセプトは, 自然口の閉塞を改善することにあり, これまでの手術では病変組織を鉗除する侵襲的なものであったが, 本手技はその閉塞部位をバルーンカテーテルを用いて開大するだけで, 簡便に行え, 手術法と同等の効果が期待できること, また短時間で行え患者への負担も少なく外来治療も可能である. 一方, 篩骨洞が非対象であること, 自然口拡大が最大7mmと限界があること, その他放射線被爆やコスト (約14万円) などが問題である.
原著
  • 篠 美紀, 斎藤 洋幸, 滝口 修平, 櫛橋 幸民, 鈴木 美雪, 山田 良宣, 門倉 義幸, 加濃 正人, 洲崎 春海
    2011 年 114 巻 8 号 p. 721-725
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    禁煙推進はタバコ関連疾患を減少させる唯一の方法である. タバコ関連疾患を治療する機会の多いわれわれ耳鼻咽喉科医は, 禁煙指導および治療を担うべきと考えられる. 今回, 昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科外来にて禁煙専門外来を開設したので, 治療成績と問題点を中心に若干の文献的考察を加え報告する. 対象は, 同病院耳鼻咽喉科外来通院中の患者で, 禁煙外来受診希望のあった患者30例とした. 方法は, 禁煙治療のための標準手順書に沿って12週間の標準プログラムに基づいて治療した症例22例に対し, プログラム完遂率, 禁煙成功率, 副作用発現率を算出し, アンケートにより禁煙治療における重要な因子を調査した. 標準プログラムの完遂率は90%, 禁煙成功率は68%と比較的よい成績であった. 副作用は, バレニクリンで嘔気40%, 異常な夢25%, 眠気15%, 腹痛5%であった. また, 禁煙に際して何が重要だったかというアンケートにおいて, 医師の指導が最も重要と回答した症例が69%であった. この理由として, 当科では耳鼻咽喉科一般診療と禁煙治療を並行して行っているため禁煙外来終了後も, 耳鼻咽喉科一般外来の通院を継続する必要があり, 医師患者の信頼関係が構築しやすいことが挙げられる. バレニクリンでは, 嘔気の副作用が40%と高率であったが, いずれも内服を中止するほどではなかった. 禁煙治療には医師の問診や面談が重要と考えられた.
  • 永屋 恵子, 横井 秀格, 成井 裕弥, 春山 琢男, 吉井 良太, 矢内 彩, 芳川 洋, 池田 勝久
    2011 年 114 巻 8 号 p. 726-730
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    症例は21歳の男性. ウイルス性咽頭炎の診断で入院加療となったが, 入院後全身状態が悪化し, 骨髄穿刺検査所見により血球貪食症候群と診断された. 患者が同性愛者であったことからHIV抗体を測定したが, 陰性であり, その後HIV-1 RNA定量よりHIVウイルス感染症と判明し, HIV初感染によるVAHSと診断した.
    本症例の経験から, ウイルス性咽喉頭炎様の症状が長引く時には急性HIV症候群も考慮し, HIV抗体のみならず, HIV-RNA量を測定する必要があると考えられた.
  • 片岡 祐子, 福島 邦博, 菅谷 明子, 前田 幸英, 増田 游, 西崎 和則
    2011 年 114 巻 8 号 p. 731-736
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    新生児聴覚スクリーニング検査の普及にしたがい, 軽度・中等度難聴児も早期に診断され, 早期に補聴器を装用し, 療育を開始するケースが増加している.
    しかしながら, 現在の障害者自立支援法では, 身体障害者には該当しない軽度・中等度難聴者は, 補聴器購入に際して公的援助が受けられないため, 全額自費で購入するか, 補聴器装用を断念せざるを得ないのが現状である.
    この是正を求め, 「岡山県難聴児を支援する会」は, 平成21年9月岡山県議会に「軽度および中等度難聴児に対する補聴器購入費用助成に関する陳情書」を提出し, 平成22年4月より「岡山県難聴児補聴器交付事業」が開始された. 事業導入に至った経緯, 概要を報告する.
専門講座
feedback
Top