日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 都甲 潔
    2002 年 105 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    味覚センサーは, 人の感じる味を出力情報にもつセンサーである. 舌の味蕾にある味細胞をおおう生体膜を構成する成分である脂質を成膜化した脂質/高分子膜をその受容部にもつ. 異なる応答特性の8枚の膜からの電圧出力パターンから味を総合的に判定する. これまでビール, コーヒー, 日本酒, ミネラルウォーター, スープ, 牛乳など多くの食品に適用され, その味の定量化に成功している.
    味覚センサーの最大の長所はこれまで不可能であった味の定量化・標準化を可能とした点である. 人間による官能検査と化学分析機器による成分分析結果との間を定量的につなぐことも可能である. 味覚センサーの応用は, まず食品の製造管理工程における異風味検出等の品質保証であろう. 苦味の強い医薬品の味の自動調合へ利用することも可能である.
    また味覚センサーの実用化は味覚障害者へ大きな福音となるであろう. 例えば, 集積化マイクロ味覚センサーをお箸につけ, カラーイメージで味質や強度を表示するといった方法, または口内に味覚センサーを埋め込み, 神経へつなぐといったインプラント方式も考えられる.
    今後, マルチメディアの振興とあいまって, 味の共通言語 (食譜) を構築することで, 万人が共通の尺度をもって味を語り合う時代が来るであろう. 味覚センサー技術は, 情報技術をもとに人間の医・食・住の向上を目指す総合科学“ヒューマン・インフォマティクス (Human informatics) ”の中核をなす革新技術である. 私たちは今や, 長さや時間の尺度が発明されたあのエジプト時代に相当する食文化の黎明期に入ろうとしている.
  • 中山 明仁, 八尾 和雄, 西山 耕一郎, 永井 浩巳, 伊藤 昭彦, 横堀 学, 岡本 牧人, 廣瀬 肇
    2002 年 105 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    喉頭亜全摘Cricohyoidoepiglottopexy (CHEP: 4例) およびCricohyoidopexy (CHP: 1例) 術後の嚥下訓練と嚥下機能の獲得過程について検討した.
    嚥下訓練の実際と下咽頭食道透視検査を解析した結果, 嚥下機能獲得の過程は次の3つの時期に分けることができた. I-初期: 食塊は気管に直接侵入する. II-中期: 食塊は喉頭入口部と気管切開孔の間の上部気道で停滞する. III-後期: 食塊は食道に直接入る. 嚥下機能の獲得が完了に近い状態である. 初期は2-14日と最も短く, 中期が7-80日と最も時間を要した. 後期は7-15日であった.
    術後嚥下機能の客観的評価にMTF (Method, Time, Food) スコアを用いた. CHEPの3症例は訓練開始直後から比較的高得点を示し, それぞれ1ヵ月以内の訓練期間で15点満点の機能を獲得した. 他の2症例は異なった理由で声門の閉鎖が十分ではなく, 嚥下の獲得が困難であった. この傾向はMTFスコア (10-11点) にも反映されていた.
    CHEPおよびCHPの嚥下練習に際しては個々の症例に合わせたきめこまやかな配慮が大切である. 訓練には医師のみでなく, 看護婦, 言語聴覚士, 理学療法士, 栄養士の各職種が連携を取りチーム医療で臨むことが理想であり, 今後このような系統的訓練のマニュアル作りが必要であると思われた.
  • 藤吉 達也, 吉田 雅文, 宇高 毅, 田邊 忠夫, 牧嶋 和見
    2002 年 105 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    Streptococcus milleri group (S. constellatus, S. intermedius, S. anginosus) は口腔等粘膜面の常在菌ながら, 全身の膿瘍性疾患や市中肺炎の起炎菌として近年注目されている. これらの菌種が, 各領域の感染症にどの程度の割合で分布しているのか, またその中に占める耳鼻咽喉科感染症の割合, 感染病態等は明らかにされていない. 耳鼻咽喉科感染症における本菌種の臨床的意義を明らかにするために, 過去3年間に当院で分離・同定された本菌種275株の由来診療科別内訳, 耳鼻咽喉科疾患の臨床像とその分離株に対する薬剤感受性を検討した. 全検出株の内訳は, 歯科 (19.6%), 内科 (17.1%), 耳鼻咽喉科 (16.0%), 外科 (15.6%), 産婦人科 (11.6%), 泌尿器科 (6.2%), 皮膚科 (5.8%), 脳神経外科 (4.0%), 小児科 (2.2%), 整形外科 (1.1%), 眼科 (0.8%) であった. 耳鼻咽喉科44株は42疾患から分離され, (1) 一般感染症として扁桃炎5例, 深頸部膿瘍4例, 副鼻腔炎4例, 先天性耳瘻孔感染3例, 歯肉膿瘍2例, 副鼻腔嚢胞2例, 扁桃周囲膿瘍1例, 化膿性耳下腺炎1例, 術後創感染1例, (2) 頭頸部癌治療に伴う感染症として術後創感染7例, 術後肺炎3例, 咽喉頭炎3例, 終末期肺炎3例, 再発巣部感染3例であった. 単独検出例は (1) 群60%, (2) 群26%, 同時検出菌は (1) では一般に病原性が強いと考えられている菌種は見られず (常在菌性のものがほとんど), (2) 群では日和見感染症に見られる菌種が多かった. 薬剤感受性はCCLとCTMに抵抗性を示す菌株が多く, ABPC, CPDX, CFDNにも感受性がやや劣る傾向であった. S. millerigroupは, 培養・同定方法の特殊性のためにこれまで一般臨床の場で見過ごされてきた可能性が大きい. しかし抗菌剤の普及に伴い, 常在菌叢と宿主免疫能との適正な関係が破綻する機会が増し, 本来は常在菌である本菌種が耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の重要な起炎菌の一つとなってきている可能性も否定はできない.
  • 中屋 宗雄, 森田 一郎, 奥野 秀次, 武田 広誠, 堀内 正敏
    2002 年 105 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    目的: ライフル射撃音による急性音響性難聴の聴力像と治療効果に対する臨床的検討を行った.
    対象と方法: ライフル射撃音による急性音響性難聴と診断され入院加療を行った53例, 74耳とした. 治療方法別 (ステロイド大量漸減療法群23耳とステロイド大量漸減療法+PGE1群51耳) と受傷から治療開始までの期間別 (受傷から治療開始まで7日以内の群42耳と8日以降の群32耳) に対する治療効果と聴力改善 (dB) についてretrospectiveに検討した. また, 各周波数別に治療前後の聴力改善 (dB) を比較検討した.
    結果: 全症例の治癒率19%, 回復率66%であった. ステロイド大量漸減療法群では治癒率17%, 回復率78%, ステロイド大量漸減療法+PGE1群では治癒率24%, 回復率63%であり, 両者の群で治療効果に有意差を認めなかった. 受傷から7日以内に治療を開始した群では治癒率21%, 回復率78%, 受傷から8日目以降に治療を開始した群では治癒率16%, 回復率50%であり, 受傷から7日以内に治療を開始した群の方が有意に治療効果は高かった. 入院時の聴力像はさまざまな型を示したが, 2kHz以上の周波数において聴力障害を認める高音障害群が50耳と多く, 中でも高音急墜型が20耳と最も多かった. また, 治療前後における各周波数別の聴力改善 (dB) において, 500Hz, 1kHzの聴力改善 (dB) は8kHzの聴力改善 (dB) よりも有意に大きかった.
    結論: 今回の検討で, 受傷後早期に治療を行った症例の治療効果が高かったことが示された. また, 高音部より中音部での聴力障害は回復しやすいと考えられた.
  • 中野 友明, 愛場 庸雅, 杉田 雅彦, 塩谷 隼人, 山田 浩二, 鵜山 太一
    2002 年 105 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    先天性正中鼻瘻孔は極めてまれな奇形疾患の一つとされている. また9p-症候群は9番染色体短腕の部分欠損を示す染色体異常症であり, 1973年にAlfiらによって初めて報告された疾患概念である.
    鼻柱基部に瘻孔を有し, 前頭蓋底に達する先天性正中鼻瘻孔を伴った9p-症候群の1例を経験したので報告した. 患者は1歳の男児である. 在胎39週, 正常分娩で出生し, 生下時体重は3674gであった. 尿道下裂, 二分陰嚢を認めた. 染色体検査にて第9染色体短腕 (p) p23を切断点とする欠失を認めた.
    CTならびにMRIにて鼻尖部に腫瘤を認め, 連続して鼻中隔内にも腫瘤を認めた. さらに, その上方の鶏冠部に連続して腫瘤を認めた. 両側前頭開頭術にて頭蓋内腫瘤を摘出後, transcolumellar skin incisionにて鼻部腫瘤を摘出した. 術後は感染の併発もなく, 経過は良好である.
  • 小児の喘鳴の病態とその対応
    吉田 豊
    2002 年 105 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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