日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 奥田 稔, 宇佐 神篤, 伊藤 博隆, 荻野 敏
    2002 年 105 巻 12 号 p. 1181-1188
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎患者(AR)における昆虫アレルゲンの症状への関与を調べるため,560例のARを対象にしてガ,ユスリカ,ゴキブリを含む13アレルゲンに対するIgE抗体を測定した.また,65例の患者でこれら3種の昆虫の鼻誘発試験を実施した.
    ガ,ユスリカおよびゴキブリに対するIgE抗体保有率はそれぞれ32.5%,16.1%,13.4%であった.これらIgE抗体保有率には,地域,年齢,治療および合併症による差は認められなかった.
    鼻誘発試験で陽性と判定される割合は,RASTクラスが高いほど多くなる傾向があった.とくにゴキブリ,ガにおいて,RASTクラス3以上では,各々55.6%および61.5%が鼻誘発試験に陽性を示した.
    昆虫間のIgE抗体価の相関を検討したところ,ガ,ユスリカ間には強い相関が認められ共通抗原性を示唆したが,ゴキブリ,ガ間およびゴキブリ,ユスリカ間では強い相関は認められなかった.また,いずれの昆虫もヤケヒョウヒダニおよび室内塵に対するIgE抗体価との相関は認めなかった.
    以上の結果,日本においてガ,ユスリカ,ゴキブリは,アレルギー性鼻炎を起こす原因となっていることが示された.
  • 臨床評価,CT所見,電子顕微鏡による形態学的評価
    勝田 慎也, 長舩 宏隆, 瀧田 留美, 菅又 昌雄
    2002 年 105 巻 12 号 p. 1189-1197
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対するロキシスロマイシン(Roxithromycin, RXM)の治療効果について検討した.
    対象は鼻茸のある慢性副鼻腔炎患者56例で,全例にRXM1日300mgを3ヵ月以上投与した.有効率(著効+有効)は,自覚症状で50.3%,他覚所見で59.1%となり,両者による総合効果判定は53.6%であった.また治療前とRXM投与3ヵ月後の副鼻腔CTスキャンによる評価では,51.8%に副鼻腔陰影の明らかな改善(有効以上)が認められた.全例に施行したアレルギー検査の結果,アレルギー性鼻炎合併症例は,全体の73.2%を占めたが,有効率は合併症例で53.7%,非合併症例で53.3%となり,治療効果においてアレルギー性鼻炎の有無による有意差は認めなかった.
    更に,電子顕微鏡を用いた篩骨洞粘膜の治療前とRXM投与3ヵ月後での変化を観察した.その結果,アレルギー性鼻炎合併症例では,好酸球のアポトーシス(apoptosis)を中心としたほぼ共通した組織所見であるのに対し,非合併症例では治療前の組織像として,(1) 多数の形質細胞しか認めないタイプ,(2) 形質細胞とリンパ球の両者を認めるタイプ,(3) 上皮細胞,および線維芽細胞のアポトーシス像がすでに認められるタイプの3つに大別された.
  • 川堀 眞一, 渡邉 昭仁, 長内 洋史, 吉崎 智貴, 谷口 雅信
    2002 年 105 巻 12 号 p. 1198-1204
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    真菌が関係した副鼻腔炎の中に非浸潤性で,アレルギーが関与したタイプのallergic fungal sinusitisがある.最近欧米では多く報告され,手術をした慢性副鼻腔炎の5%-10%に存在すると報告されている.日本では症例報告は見られるが,その頻度は不明である.また,この疾患の病態を知ることはアレルギー性副鼻腔炎の機序の検討に有用である.今回,慢性副鼻腔炎にallergic fungal sinusitisがどの程度あるかを平成12年12月から13年7月に恵佑会札幌病院で慢性副鼻腔炎の手術をした男性26例,女性14例の40例で検討した.検討項目はアレルギー性鼻炎•喘息の有無,鼻茸,副鼻腔炎の手術既往の有無,鼻茸の有無と大きさ,CT撮影で副鼻腔炎の程度,非特異的IgE, CAP-RASTによる真菌の特異的IgE,中鼻道の粘液の好酸球の有無,採取した副鼻腔粘膜組織の好酸球浸潤,副鼻腔粘液中の好酸球の有無および副鼻腔粘液の真菌の染色と培養であった.allergic fungal sinusitisと確信できる症例は存在しなかった.ただし,真菌を同定できなかったが,副鼻腔粘液に好酸球性ムチンを認め,高IgE値,真菌に対する特異的IgEが疑陽性であった症例が1例存在した.また,比較検討した真菌塊を上顎洞に認めた真菌性上顎洞炎の9症例の組織を調べたが,それらの患者ではアレルギーを認めず,好酸球の浸潤もなかった.allergic fungal sinusitisは少ない疾患であると推測される.
  • 齊藤 優子, 間 三千夫, 硲田 猛真, 濱田 寛子, 池田 浩己, 瀬野 悟史, 嶽 良博, 榎本 雅夫
    2002 年 105 巻 12 号 p. 1205-1211
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    当院neonatal intensive care unit (NICU)入院の乳児319例と県下2施設のwell-born nursery (WBN)の新生児,乳児1200例計1519例に対して聴覚スクリーニング検査を行った.NICU入院の乳児に対しては聴性脳幹反応(ABR)を用い,WBNの新生児乳児のうち267例に対しては耳音響放射(OAE)を,933例に対しては自動化ABRを用いて聴覚スクリーニング検査を行った.両耳高度難聴はNICUでは2例(0.6%),片耳聾3例(0.9%),両耳中等度難聴7例(2.2%)であった.うち補聴器装用を試みた症例は2例であるが装用を継続することができなかった.WBNでは両耳高度難聴2例(0.2%),片耳難聴2例(0.2%)であった.両耳高度難聴2例に補聴器を装用し,装用効果を認めている.難聴リスクを検討すると難聴を指摘された児16例中難聴リスクを持った児は12例(75%),持たない児は4例(25%)であった.WBNのスクリーニング検査では初回パス率はOAEを用いた検査では91.8%,AABRでは99.0%で全体で97.4%であった.全新生児乳児聴覚スクリーニングによりリスクのある児,ない児の両方において早い年齢での難聴の同定,補聴器装用が可能になった.難聴児の約25%がWBNからで25%がリスクのない子どもであり,NICUのみのスクリーニングしか行われていなければリスクのない児の難聴の発見が遅れることになったと考えられる.難聴同定の時期と補聴器装用の効果はNICUの児とWBNの児とでは異なり,NICUの児はWBNの児より疾病や両親の抵抗により補聴器装用が遅れる傾向にあり,装用継続が困難であった.
  • 枝松 秀雄, 青木 古尚, 三須 俊宏, 山口 ひかり, 徳丸 晶子, 渡辺 建介, 深澤 達也
    2002 年 105 巻 12 号 p. 1212-1215
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳鼻科領域でのコンピューターを用いたナビゲーション手術システムは,従来は鼻科手術で多く行われてきたが,耳科手術での使用はまれであった.今回著者らは錐体尖の先天性真珠腫に磁気式ナビゲーションシステムによる画像支援手術を行った.症例は65歳男性で,左の顔面神経麻痺,聾,頭痛が主訴であった.術前のCTでは,錐体尖に広範囲な軟部陰影が存在し,内耳と天蓋骨壁が圧排され消失していた.使用したナビゲーションシステムの,磁気式機種(InstaTrak)は,容易な操作性と誤差が2mm以内の精度を有している.ナビゲーションによる内耳やその周囲の重要な組織の画像確認が手術中に可能となれば,安全な手術のための有効な方法であり,今後は耳科季術にも積極的に導入されるべきと考えられた.
  • 川野 まどか
    2002 年 105 巻 12 号 p. 1216-1222
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    生態防御機構として鼻粘膜は加温•加湿などの重要な働きをしており,生体内外の環境によって腫脹,収縮を繰り返している.運動負荷によっても鼻粘膜は収縮し,その後徐々に負荷前の値に戻るといわれている.本研究の目的は,運動前後における鼻腔抵抗,鼻腔断面積および鼻腔NO濃度を測定し,鼻腔で産生されるNOの呼吸生理学的な役割を検討することである.対象は鼻副鼻腔疾患の既往のない正常成人11名である.運動負荷には気管支喘息運動負荷基準に準じて,トレッドミルを用いて傾斜10°,時速6kmで6分間の負荷を与え,運動負荷の直前,直後,5,10,15,20,25,30分後に左右鼻腔抵抗,左右鼻腔断面積,鼻腔NOを測定した.
    運動負荷にて,その直後に鼻腔抵抗は低下し,その後徐々に増加する傾向がみられた.一方鼻腔断面積は運動直後に増加したが,徐々に初期の値へと戻った.
    鼻腔NOの経時的変化は運動直後で減少し,その後上昇したのち,20-25分前後で一時的な減少を示す,逆2峰性パターンを示した.このパターンは,運動によって生じた生体内の変化に対して体内各所でのNOの需要が高まったため,ベースラインへと戻っていたNOが一時的に枯渇したためと考えられ,ひいては生体の恒常性の維持にNO産生が関係していることが示唆された.
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