1993年7月から1998年7月までの5年間に帝京大学耳鼻咽喉科で外耳道再建型鼓室形成術を行った成人の中耳真珠腫新鮮例のうち, 術後1年以上経過を観察しえた236耳を対象とし, 術後聴力と真珠腫再発について検討した. 一期的に聴力改善手術まで施行したものは147耳 (62%), 段階手術で聴力改善術を施行したものは89耳 (38%) であった. 日本耳科学会の提案による術後聴力の鼓室形成術成功の判定新基準に従った成功数は236耳中157耳 (67%) であった. そのうち成功例は, 一期的手術群で109耳 (74%) であったのに対し, 段階手術群では48耳 (54%) とχ二乗検定で有意差を認めた. また, 鼓室形成術成功判定新基準の3項目を個別に見ると, 術後平均聴力レベル, 術前骨導値と術後気導値の差の2項目で段階手術群に比較し, 一期的手術群で有意に成績が良かった.
最終術式別では, I型群, III型群, IV型群の順で成績が良く, 新基準3項目および全体の成功率で有意差を認めた. 一期的手術群ではI型群が多く, 段階手術群でIII型群, IV型群の占める割合が多かった. また年齢別では, 平均聴力レベルは加齢に従い悪化した.
段階手術施行群89耳における再発は, 再形成真珠腫が13耳 (15%), 遺残性真珠種は29耳 (33%) に認められた. また, 術後聴力が不良のため再手術を施行した12例を除く一期的に真珠腫の除去と聴力改善を行った一期的手術群135耳において, 術後1年後における再形成真珠腫数は13耳 (9.6%) に認められた. 再形成性真珠腫, 遺残性真珠腫につき臨床的危険因子の評価を一期的手術, 段階手術群において, 性, 年齢, 耳漏の有無, 真珠腫のタイプ, 術型につき行ったが有意なものは認められなかった. 今回の結果から, 中耳真珠腫症に対する外耳道再建型鼓室形成術では, 術後聴力に関しては妥当な成績が得られたが, その再発頻度は決して少ないとはいえず, その再形成防止対策について現在当教室で行われている処置について述べた. 遺残についてはできるだけ減らす工夫と判定基準の確立が重要である.
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