日本耳鼻咽喉科学会会報
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97 巻, 7 号
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  • 上顎領域を主とした観察
    池田 元久, 渡辺 〓
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1165-1171
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    The purpose of this experimental study was to investigate the disseminating routes of viruses, bacteria, tumor cells and various substances along the trigeminal nerve sheaths. Thirty-four rabbits weighing approximately 3kg were used for this study. After an intraperitoneal injection of sodium pentobarbital, the left infraorbital foramen was exposed surgically. Then, various amounts of Indian ink solution were injected with a syringe driver for continuous microinfusion into the infraorbital nerve trunk at a rate of 0.03ml per minute. In all cases, during the appropriate state of general anesthesia, intravascular perfusion was performed with 10% folmaldehyde. The cranial and facial part of the rabbit were separated, decalcificated by Plank & Rychlo's method, dehydrated in an alcohol series, and embedded in 8% celloidin. Finally, 30 or 40 micrometer thick sections were stained with Hematoxilin-Eosin.
    The following results were obtained: (1) The Indian ink injected into the infraorbital nerve trunk at the infraorbital foramen diffused along the infraorbital nerve and maxillary nerve, but did not reach the trigeminal ganglion. (2) The Indian ink diffused along the nasal branches of the infraorbital nerve and reached a point near the nose tip. (3) The small branches of the infraorbital nerve and its accompanying vessels penetrated the bony wall of the maxillary sinus, and the Indian ink reached the proper layer of the sinus mucous membrane.
  • 辺土名 仁, 角田 玲子, 小松崎 篤, 村岡 秀樹
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1172-1180
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1) 聴神経腫瘍12症例に内耳CTと骨量ファントムを併用し,内耳道骨壁の炭酸カルシウム相当量の部位的相違について検討した.
    2) 患側,健側とも内耳道孔の炭酸カルシウム相当量は内耳道底のそれに比べて低値を示した.これは簡易法としてCT値の連続変化を用いるProfileでも確認された.
    3) 患側と健側の同部位間比較では,患側の前壁内耳道底で炭酸カルシウム相当量が低値を示したが,他の5部位では有意差を認めなかった.
    4) 患側骨壁で破骨細胞性の骨吸収が起こうと,患側の骨壁表層は本来の骨壁の深層部に相当する.それ故,両側の炭酸カルシウム相当量に相違がなかったことは,骨壁浅層と深層で骨塩量の分布に相違がないことを示唆している.
    5) 起源神経による相違は認めなかった.
    6) 内耳道後壁に沿ったProfileでは,内耳道孔と内耳道底の中間でCT値のdip形成を認めた.このdip形成には含気蜂巣の影響が示唆された.
  • 平田 義成
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1191-1199
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    The author succeeded in producing vestibular ganglionitis by inoculating herpes simplex virus type 1 (HSV-1) into the back of the auricle of a new-born mouse. Postural deviation to the inoculated side was observed in 14 of 275 mice (5.1%) 6 to 10 days after the inoculation. In 6 of the 14 mice (42.9%) with postural deviation, HSV antigens were demonstrated immunohistochemically in the vestibular ganglion cells of the inoculated side. No antigens were identified in the animals with normal posture or in controls.
    Vestibular functions were evaluated in 5 animals suffering from postural deviation by the following test procedures. 1. behavior in an open field, 2. righting reflex, 3. transversing a narrow path, 4. ascending a rope, 5. negative geotaxis, 6. grasping a rod, 7. swimming. None could perform these tasks due to impairment of vestibular function. Histopathological and immunohistochemical examinations showed degeneration of the vestibular ganglion cells in 4 of the 5 mice, while HSV-1 antigens were recognized in 2 of them. The results of the present study show that inoculation of HSV into the back of the auricle of a new-born mouse can cause infection of the vestibular ganglion resulting in symptoms similar to those of vestibular neuritis, though the inci-
    dence is low compared to that of facial paralysis.
  • 斎藤 裕子
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1200-1206
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    (1) 喉頭の声帯粘膜(扁平上皮)と声門上粘膜(線毛上皮)のCKの発現性を免疫組織学的に検討した.
    (2) 声帯ではCK-6,7は全層陽性,CK-13は基底層より上で陽性,CK-19は基底層と中間層で陽性,その他のCKはすべて陰性であった.
    (3) 声門上粘膜ではCK-8,13,19以外はすべて声帯と同じ発現性であった.CK-8は基底層より上で陽性,CK-13は全層陰性,CK-19は全層陽性であった.
    (4) 声門上粘膜の線毛上皮は様々な要因で扁平上皮化が生じ,その部位は形態的にも,CKIの発現性においても扁平上皮と同様であった.
    (5) 声門上粘膜で形態的には線毛上皮の形だが,CKの発現性は扁平上皮の発現性へと変化している部位が存在した.
    (6) 喉頭癌のほとんどは扁平上皮癌である.声門上粘膜の線毛上皮部位からの発癌も,必ず扁平上皮を経て癌化する.形態的な変化が生じる前に,CKIのレベルで癌化が始まっていると考えられた.
  • 能登谷 晶子, 鈴木 重忠, 岡部 陽三, 古川 仭
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1207-1210
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    A 6-years 9-month-old child with congenital severely hearing impaired received a Nucleus 22 channel implant. Twenty-two CG electrodes are now in use. In the 5 months since the cochlear implant, the patient has made good progress. Her vowel discrimination score has reached 100%. However, her consonant discrimination has remained at the chance level. On the other hand, auditory reception of environmental sounds has shown relative improvement. Problems encountered in pediatric use of the cochlear implant are also discussed herein.
  • EL-4 lymphoma担癌マウスにおける基礎的研究
    橋本 循一
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1235-1249
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    C57BL/6マウスの腹腔内にEL-4 lymphomaを移植し,rIL-2の皮下投与,SPGの筋肉内投与および両者の併用を行った.これらのBRMが,腹腔内に抗腫瘍エフェクター細胞を誘導し,その腫瘍細胞傷害活性を増強するかどうかを,腹腔内に滲出した細胞を用いて解析した.
    1) Giemsa染色標本において,対照群,SPG投与群,rIL-2投与群,rIL-2とSPGの併用群の順に腫瘍細胞が減少し,リンパ球が増加した.
    2) Flow cytometryによる細胞表面マーカーの解析の結果,rIL-2とSPGを併用投与することにより,EL-4移植後5日目ではサプレッサー/キラーT細胞やNK細胞,単球•マクロファージを含む抗腫瘍エフェクター細胞が対照群,SPG投与群,rIL-2投与群に比べて著増すること,EL-9移植後10日目になると,NK細胞や単球•マクロファージなどの抗腫瘍エフェクター細胞は全体に5日目よりも増多し,とくにrIL-2とSPGの併用群における抗腫瘍エフェクター細胞の増加が顕著であるが,サプレッサー/キラーT細胞はすべての群でほとんど消失し,代わってヘルパー/インデューサーT細胞が著明に増加することがわかった.これら抗腫瘍エフェクター細胞の増加は,SPG<rIL-2<rIL-2+SPGの順でみられた.
    3) 自己腫瘍細胞傷害活性およびNK活性は,対照群,SPG投与群,rIL-2投与群,rIL-2とSPGの併用群の順に増強した.
    4) negative selection法の結果,自己腫瘍細胞傷害活性を示す細胞は,キラーT細胞やNK細胞,単球•マクロファージであり,とくにSPGを投与した群においては単球•マクロファージ系の細胞が主体と考えられた.EL-4移植後10日目ではNK細胞や単球•マクロファージが細胞傷害活性の主体と思われたが,rIL-2投与群,rIL-2とSPGの併用群ではL3T4+(ヒトCD4+)TILがわずかながら細胞傷害活性に寄与することが考えられた.
    したがって,SPGとrIL-2の投与は腫瘍局所である腹腔内のTリンパ球,NK細胞,マクロファージなどの免疫担当細胞を賦活化し,抗腫瘍効果を発揮することにより,腫瘍細胞を減少させることが示された.
  • 浦野 正美
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1250-1259
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    小児の先天性真珠腫26耳と後天性真珠腫30耳に対し,canal up法による段階的手術を先天性23耳,後天性27耳に行った.
    1) 先天性真珠腫では術後に再形成真珠腫はみられず,後天性真珠腫では33%に再形成真珠腫が認められた.
    2) これは両者の病態の違いに起因すると考えられる.すなわち先天性真珠腫では炎症性の病態をもたないため再形成真珠腫は生じにくく,後天性真珠腫の発症には耳管機能不全と中耳炎症病態の関与が濃厚であると思われた.
    3) したがって術後成績も十分な観察期間の後にそれぞれ別個に評価されるべきであると思われた.
    4) 遺残真珠腫は両者とも同様の比率で認められた.これにはcanal up法による術野の制限の問題と,先天性真珠腫では多発性の可能性,後天性真珠腫では小児真珠腫の浸潤性病変などの要因が関与しているものと考えられた.
    5) 小児真珠腫に対しては段階的鼓室形成術を原則とし,再形成真珠腫が生じた場合にはcanal down法あるいは乳突充填法を適応するのが良いと思われた.すなわち病態に応じた術式の選択が重要であると考えられた.
  • 岩武 博也
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1260-1267
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    HPV感染が喉頭の多段階発癌過程へ関与する可能性を実験的に検討することを目的として,初代無血清培養された喉頭上皮細胞(HLEC細胞)にHPV遺伝子を導入し,HPV遺伝子の発現がHLEC細胞の表現型をどのように変化させるのかを観察し以下の結果を得た.
    1. HLEC細胞にHPV-16型遺伝子を導入することによって無制限増殖能を示す細胞(HLEC-16細胞)を得ることができた.
    2. HLEC-16細胞におけるHPV-16型遺伝子は細胞遺伝子に組み込まれており,HPV-16型E6およびE7遺伝子領域の発現が確認された.
    3. HLEC-16細胞の増殖は足場依存性であり,ヌードマウスへの皮下注入によって腫瘍を形成しなかった.また,扁平上皮細胞分化刺激因子によって分化が誘導された.
    4. HLEC-16細胞のp53蛋白は核内蓄積として検出不能であった.
    以上の結果より,HLEC-16細胞は癌化への発展途上にある細胞と考えることができ,ヒト喉頭上皮の発癌プロセスを解析する際に有効な実験モデルとなるものと思われた.
  • 東川 雅彦
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1268-1280
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    正常発話者の〓語発声時の音声器官の調節がどのように行われるかについて,日本語単音節67音の聴覚的特徴を調べ,さらに異聴の多かった単音節についての音響学的,空気力学的検討を行い,以下の結果を得た.
    1) 有声•無声の対立のある破裂音,ならびに摩擦音,破擦音は,有声子音から同じ構音点の無声子音へ聞き違えられる傾向はあったが,推計学的には出し分けはできていることが示された.他の単音節の受聴明瞭度は良好であった.
    2) 有声•無声破裂音の出し分けには,F1 transitionの関与が大きいことが立証された.また,子音の破裂後の無音区間長,母音部分のパワースペクトルのパターンなども手掛かりとなりうると考えられた.
    3) 破裂音の口腔内圧は,〓語発声に熟練した発話者においては,無声子音が有声子音よりも有意に高いことが示され,口腔内圧は有声•無声破裂子音の出し分けに重要な働きを持つものであると考えられた.
    4) 音響学的,空気力学的なモニターのもとで発話すれば,〓語の受聴明瞭度をさらによくすることができる可能性が示された.
  • 北奥 恵之
    1994 年 97 巻 7 号 p. 1281-1290
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    一側性メニエール病25例を対象にして,グリセロール内服前と内服後1時間,2時間,3時間で鼓室外誘導法による蝸電図検査を施行し,正常対照群との比較検討を行った.
    1. 蝸電図検査に鼓室外誘導法を用いることによって,純音聴力検査の時間的経過と比較することが可能となった.また,長時間の検査が可能となったため,グリセロール内服による純音聴力の改善が最大である3時間目まで蝸電図検査の変化を観察できた.さらに,両耳を同時に検査できるため健耳の検討も行えた.
    2. メニエール病患耳全体では,AP振幅は次第に減少していくが正常対照群との間に有意差はなかった.-SP振幅は内服1時間後から3時間後まで減少したが,2時間後で正常対照群との間に有意差があった.-SP/APはあまり変化がなく,有意差はなかった.
    3. 同時に行った純音聴力検査によるグリセロールテストの結果で分類すると,陽性例では2時間後と3時間後にAP振幅と-SP振幅の減少をみとめ,正常対照群との間で有意差があった.また,3時間後には陽性例と陰性例の間にもAP振幅と-SP振幅の変化に有意差があった.グリセロールテスト陽性例では蝸電図検査の変化は著明で,特に陽性例と陰性例の違いは3時間後に明らかとなった.
    4. グリセロール内服前の-SP/APによって分類すると,-SP/APの増大例で-SPが2時間後に正常対照群との間で有意に減少した.APや-SP/APの変化には有意差がなかった.そこで,増大例を0.36≦-SP/AP<0.40の群と0.40≦-SP/APの群との二つに分類して検討したところ,0.36≦-SP/AP<0.40の群と正常対照群との間で-SP振幅に有意差があった.すなわち,0.36≦-SP/AP<0.40のような増大が軽度の群では,-SPはより減少しやすいことが明らかとなった.
    5. グリセロール内服による変化を3時間後まで観察することによって蝸電図検査の変化の陽性例が増加し,検査の感受性が増した.
    6. メニエール病健耳では蝸電図検査の変化に有意差はなかった.しかし,-SP振幅や-SP/APの減少が陽性の例もあった.このことは,一側性メニエール病の健耳がすでにメニエール病患耳の特徴を備えていることを示し,健耳も将来メニエール病となる可能性を強く示唆するもので,予防医学的に重要な情報をもたらしてくれる.
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