日本耳鼻咽喉科学会会報
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114 巻, 2 号
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総説
  • 大保木 啓介, 松本 健治, 斎藤 博久
    2011 年 114 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    生体構成物質についての近年の網羅的解析手法の目覚ましい発展により, さまざまな生体物質についての網羅的 (包括的) データを解析することが可能となりつつある. 本稿では, 各種生体物質の網羅的解析技術とその応用面に加え, 網羅的データの問題点についても触れ, 将来期待される各種の物質群の情報からなる多層的なオミックスデータの可能性について述べる.
  • 松本 慶蔵
    2011 年 114 巻 2 号 p. 60-65
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の起炎病原として重要なインフルエンザ菌は, 自らが考案した新しい気管支局所採痰法でFildes変法培地を用いて, 単一コロニーとして分離した(1967年). それまで本菌をグラム染色にてグラム陰性小桿菌として見ていたにもかかわらず, 染色ゴミと判断していた. その後, 慢性呼吸器感染症の起炎病原として, 日本で見直された機となった. その後, 内科領域では無莢膜インフルエンザ菌が主流となった. 1981年Branhamella catarrhalisの呼吸器感染症の普遍病原菌として検出し, 以後気道粘膜細胞への付着機構も明らかにした.
    上気道と下気道は密接なもので, この事実は喀痰の細菌と細胞の両者の検討から知り得た. 呼吸器感染病学は耳鼻咽喉科学と密接な関係にある. 気道分泌研究会もその流れに添ったものである.
    インフルエンザ罹患後の肺炎の成立も両学会領域の共同研究なくしては, 正しくは把握できない. 肺炎球菌性肺炎の成立を考えても明白である. 起炎病原は化学療法の発達により, 耐性化と菌交代が生ずるとともに, 宿主側も高齢化とハイリスク患者の増加によって変貌を継続していく.
    扁桃は果たしていかなる役割を持っているのか, 本質は知られているのかは耳鼻咽喉科学側からの返答を期待したい.
    今日内科, 老年学の最大の悩みは誤嚥性肺炎である. 呼吸器科, 耳鼻咽喉科, 老年科, 神経内科等一大総合研究の実施が求められている.
  • 大前 由紀雄
    2011 年 114 巻 2 号 p. 66-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    QOLの向上が求められる中, 嚥下障害に対するリハビリテーション (嚥下リハ) が注目されている. 嚥下リハは, 主として代償法を用いた摂食訓練を通じて効果を上げてきた. 一方, 嚥下の生理学に基づいて運動負荷をかけることで嚥下機能の改善を目指したいくつかの訓練法が報告され, その効果に対する検証も蓄積されつつある. しかしながら, 嚥下リハが必ずしも医学的根拠をもって選択し実践されているとは言い難い. 効果的な嚥下リハを実施するためには, 嚥下障害の病態を把握し適切な対処法を選択することが不可欠である. このためには, 嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査が優れた検査法となる. 耳鼻咽喉科医は, 嚥下に関連する器官を扱う専門家として, 嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を実施し, 嚥下リハの選択や指導に関わることが必要である. 本稿では, 嚥下機能検査の所見に基づいて医学的根拠をもって嚥下リハを選択し実施するための留意点を, 最近の知見を踏まえて概説する.
  • 竹野 幸夫
    2011 年 114 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    鼻アレルギーを主因とした慢性鼻閉に対するデイサージェリー, 特に下鼻甲介粘膜焼灼術の適応と実際の方法, 臨床効果について概説した. 一般的に鼻アレルギーの手術法は, 1) 鼻腔の形態異常を矯正し通気性を改善させる鼻腔整復術, 2) 粘膜表層のアレルギー反応の場を変性させる変調手術, 3) 神経ネットワークを処理し過敏症状を軽減させる手術, などに分けられる. これらの中でも, 外来日帰り手術が可能であり侵襲が少ない2) の方法がまず選択されることが多い. その作用機序としては, 物理的な下鼻甲介容積の減少, 重層扁平上皮化生による抗原の上皮内への進入抑制, 鼻汁分泌の抑制, 固有層の瘢痕化による炎症細胞の集族抑制, 神経線維の変性による鼻過敏反応の抑制, などが挙げられる. 実際の治療手技において肝要となる点は, あくまで外来で行う低侵襲手術であることを認識し, 鼻中隔と腫脹している下鼻甲介の間に鼻吸呼時の空間の作成をあらかじめイメージすることと言える. 実際の臨床効果については, 諸施設の報告でも周術期から術後約2年にかけての有効率ではおおむね6割以上とされている. 5年以上の長期成績に関しても, くしゃみ>鼻汁>鼻閉の順で再燃する傾向は存在するが4割程度の有効率は期待できるものと思われる.
原著
  • 荻原 仁美, 湯田 厚司, 宮本 由起子, 北野 雅子, 竹尾 哲, 竹内 万彦
    2011 年 114 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    背景と目的: スギ花粉症にヒノキ科花粉症の合併が多く, その原因として両花粉抗原の高い相同性が挙げられる. しかし実際の臨床の場において, ヒノキ科花粉飛散期にスギ花粉飛散期にはみられない強い咽喉頭症状のある例に遭遇する. そこで, ヒノキ科花粉症の咽喉頭症状について検討した.
    方法: スギ・ヒノキ科花粉症患者で2008年のスギ・ヒノキ花粉飛散期の咽喉頭症状を1週間単位のvisual analog scale (VAS) で検討した. また, 2008年と2009年に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2で鼻眼以外の症状を調査し, 花粉飛散数による相違を検討した.
    結果: VASによる鼻症状は花粉飛散数に伴って悪化し, スギ花粉飛散期でヒノキ科花粉飛散期より強かった. 一方, のどの違和感と咳は, ヒノキ科花粉が少量飛散であったにもかかわらず, ヒノキ科花粉飛散期で悪化した. また日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2の鼻眼以外の症状において, スギ花粉症では飛散総数が多いと全般に症状が悪化したが, ヒノキ科花粉症は少量飛散でも強い咽喉頭症状を示し, 大量飛散年に類似した.
    結論: ヒノキ科花粉症はスギ花粉症と同一のように考えられているが,スギ花粉症とは異なる鼻眼以外の症状を呈する. 特にヒノキ科花粉症において咽喉頭症状が強く, 少量の飛散でも強い症状がある.
  • 井口 広義, 鵜山 太一, 高山 靖史, 山根 英雄
    2011 年 114 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    先天性大唾液腺欠損症は非常にまれで, これまでの報告では耳下腺の欠損例が多く, 顎下腺が単独で欠損する報告は極めて少ない. 今回われわれは左顎下部に血管腫を生じた両側顎下腺欠損症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例は62歳女性で, 約3年来の左顎下部腫脹を主訴に受診した. 画像検査の結果, 右顎下腺欠損症および左顎下腺腫瘍の術前診断のもと, 左顎下腺腫瘍摘出術を施行した. 摘出標本の病理組織は海綿状血管腫で, 最終的に両側顎下腺欠損症および左顎下部血管腫と診断した. 近年の報告により, 線維芽細胞増殖因子などのシグナル伝達系路の機能異常が先天性大唾液腺欠損症の一因であると推測される.
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