日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 7 号
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  • 石橋 敏夫, 石尾 健一郎, 市村 恵一, 水野 正浩, 深谷 卓
    1999 年 102 巻 7 号 p. 871-877
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    従来から一側性副鼻腔炎は癌が合併することがあるとの考えがあり, 内視鏡下鼻内手術が多くの施設で普及した今日でも, 一側性副鼻腔炎に対しては試験開洞の目的からCaldwell-Luc手術が行われる場合も少なくはない. 本研究では, 診断および治療的な意味から, 一側性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻内手術の有用性を検討した. 対象は, 内視鏡下鼻内手術により治療された一側性副鼻腔炎患者39例である. いずれも一側性の副鼻腔炎が, 保存的治療を行っても6ヵ月以上症状が改善しないか反復して起こる症例, もしくは, CT上鼻副鼻腔に骨破壊の認められた症例である. CT検査の後, 内視鏡下に篩骨洞を開放後, 膜様部を開放し上顎洞を大きく鼻腔に開窓した. そして, 術前の副鼻腔CT, 術後診断, 術後のファイバースコピーによる上顎洞所見, 長期経過観察後の自覚症状の改善度を検討した.
    CT検査では, 3例において骨破壊が認められた. 術後診断は, 慢性副鼻腔炎が35例, 真菌症が3例, 乳頭腫が1例であり, 悪性病変の認められた症例はなかった. 術後4-8ヵ月のファイバー検査では, 約81%の症例で上顎洞粘膜はほぼ正常化した. 術後平均2年2ヵ月後の自覚症状改善のアンケート調査では, 約88%の症例で, 著明な改善が認められた. 一側性副鼻腔炎症例に対する鼻内視鏡下の上顎洞開窓は, 試験開洞としての診断および治療の点からも有用であると考えられた.
  • 田沼 文, 三島 陽人, 加瀬 康弘, 飯沼 壽孝
    1999 年 102 巻 7 号 p. 878-882
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    原因が様々な鼻中隔穿孔39症例を経験した. 穿孔の大きさが測定可能であったものに関しその検討を行い, 年齢, 性別, 推定される原因を示した. 年齢は8歳から85歳まで, 平均35歳であり, 男性26人女性13人であった. 原因は鼻中隔矯正術のみ9例, 他の鼻副鼻腔手術17例―内鼻中隔矯正術重複が2例―, 特発性5例, 鼻内の焼灼またはタンポン, 職業性, 膠原病とその関連疾患各2例, 炎症性と血液疾患各1例であった. 穿孔の主症状は鼻出血5例, 鼻内乾燥感4例, 鼻閉, 鼻漏各3例, 笛声音1例がみられた. 他の23例は無症状であった. 穿孔の大きさは長径が10mm以下7例, 11~20mm 13例, 21mm以上が6例であった. 穿孔の大きさは, 大部分の症例が30mm以下であるが, 膠原病関連疾患2症例は35mm以上だった.
  • 安松 隆治, 一番ケ瀬 崇, 富田 和英, 原 崇, 末田 尚之, 平川 直也, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    1999 年 102 巻 7 号 p. 883-890
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1972年から1997年までに国立病院九州がんセンターにて一次治療を行った耳下腺癌42例を対象に臨床的検討を行った. 全体の累積5年生存率は69%であり, M (+) 症例を除く根治治療例 (n=40) では72%であった. stage別ではstage I (21例): 95%, stage II (4例): 75%, stage III (1例): 0%, stage IV (16例): 37%であった. T3, T4例 (p<0.05), stage III, IV例 (p<0.01), 頸部リンパ節転移を認める症例 (p<0.01) は有意に予後不良であった.
    治療法を検討した結果, T1症例には葉部分切除以上, T2症例には葉切除術以上の術式が必要であると考えられた. また, 頸部の処理について, 術前に頸部転移が認められない場合であっても, 組織学的に粘表皮癌 (高悪性型), 未分化癌であるT4症例に対しては予防的上頸部郭清術が必要であると考えられた.
  • 正木 義男, 古川 朋靖, 渡辺 道隆, 市川 銀一郎
    1999 年 102 巻 7 号 p. 891-897
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    はじめに: 鼻副鼻腔手術後のガーゼ抜去時に患者が失神様の発作を起こすことがある. この状態は神経原性失神の1つである三叉・迷走神経反射が原因と言われている. 三叉神経が刺激されることにより, 迷走神経が反応して心拍数, 血圧が急激に低下する現象であるが, 我々は疼痛や緊張で上昇するアドレナリン (Adrenaline, 以下Adr. と略す) に着目し, ネコ10匹を使用して迷走神経反射におけるAdr. の効果を調べた.
    目的: 迷走神経刺激時にAdr. が脳血流に及ぼす影響を調べる.
    対象と方法: 実験には成猫10匹を用いた. 頸部で迷走神経を露出し, 末梢側に白金電極を装着した. さらに頭部を30度挙上した. コントロール群 (迷走神経を1分間電気刺激). Adr. +神経刺激群 (Adr. を30秒間静注した後, 迷走神経を1分間電気刺激) の2群に分け, 刺激前後の前庭神経核, 下オリーブ核, 小脳室頂核の脳血流量, 及び心拍数, 動脈圧を比較した. 脳血流の測定には水素クリアランス法を使用した.
    結果: コントロール群, Adr. +神経刺激群ともに刺激前と比較し, 刺激後は有意に脳血流量が低下した. さらに, 両群の脳血流量の変化を比較したところ, いずれの部位においてもAdr. +神経刺激群の方が, コントロール群と比較し有意に脳血流量が低下していた. 心拍数, 動脈圧についてはコントロール群は刺激後有意に低下したが, Adr. +神経刺激群では, より大きな脳血流量低下があったにもかかわらず有意な変化はなかった.
    考察: Adr. +神経刺激群ではAdr. のβ2作用で末梢欠陥抵抗が低下し, 迷走神経を電気刺激した際に, より大きな脳血流量低下が起きたのではないかと考えられた. この結果より疼痛や緊張で上昇したAdr.が, 三叉・迷走神経反射による脳血流量低下を増強しているのではないかと考えられた.
  • 甲斐 智朗
    1999 年 102 巻 7 号 p. 898-906
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 鼻粘膜の血管収縮・拡張が鼻腔由来の一酸化窒素 (NO) 濃度に及ぼす影響を局所への薬剤投与により検討した.
    (対象) アレルギー性鼻炎以外に特に鼻副鼻腔疾患を有しない健常人24名.
    (方法) 安静座位における鼻腔由来のNO濃度および鼻腔抵抗, 最小鼻腔断面積, 鼻腔容積を測定した後, 前者12名には血管収縮剤として硝酸ナファゾリン, 後者12名にはNO-cGMP系を介さない血管拡張剤として硫酸サルブタモールをそれぞれ定量噴霧器を用いて両側鼻腔内に投与し, それぞれの計測値の変化を測定した. NOの測定には, chemiluminescence法によるNOアナライザーを用いた. 鼻腔抵抗の測定は鼻腔通気度計を用いてアンテリオール法により, 更に最小鼻腔断面積と鼻腔容積の測定はアコースティックライノメトリーにより行った.
    (結果) 硝酸ナファゾリンの投与によりNO濃度は有意に低下し, 鼻腔抵抗は有意に減少した. 更に鼻腔容積は有意に増大した.
    硫酸サルブタモール投与により, NO濃度は有意に上昇し, 鼻腔抵抗も有意に上昇した. 更に最小鼻腔断面積および鼻腔容積は有意に減少した.
    (考察) 鼻腔抵抗および最小鼻腔断面積, 鼻腔容積の変化から, 各薬剤により鼻粘膜が収縮・拡張していることが示された. 硝酸ナファゾリンはα1レセプターを介して血管を収縮させ, また血管拡張作用を示した硫酸サルブタモールはβ2刺激剤であり, この血管拡張作用はNOを介さないことから, 鼻腔由来のNO産生量は, 血管の収縮・拡張に伴う基質の供給量の変化に影響される可能性が示唆された.
    (結論) 血管収縮・拡張剤により, 鼻腔由来のNO濃度は有意に減少・増加し, これは基質の供給量の変化に基づいている可能性があると考えられた.
  • 深谷 浩大, 菅野 秀貴
    1999 年 102 巻 7 号 p. 907-917
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 抗腫瘍剤であるシスプラチン (以下CDDP) は, 腎毒性, 聴器毒性, 胃腸障害, 血液毒性などの副作用を有している. 一方, Ginkgo biloba extract (以下GBE) はイチョウ葉からの抽出物であり, 種々の活性成分を含む混合物である. GBEは, フリーラジカルスカベンジャーであり, フリーラジカルの発生が関与していると考えられるCDDPの毒性に対して軽減効果を有することが期待される. 以上のことから, ラットを用いてCDDPの聴器障害および腎障害に対するGBEの軽減効果の有無, さらにCDDPの抗腫瘍効果に対するGBEの影響について検討した.
    (方法) Fisher系雄ラットを以下の3群に分け使用した. I群CDDP単独群, II群CDDP・GBE併用群, III群コントロール群. 実験1では蝸牛神経複合活動電位 (cochlear nerve compound action potential, 以下CAP) 閾値を測定した後, 蝸牛有毛細胞の状態を走査型電子顕微鏡を用いて観察した. 実験2では血清尿素窒素 (以下BUN), クレアチニンの測定, 腎を摘出して光学顕微鏡を用いて観察した. 実験3では扁平上皮癌担癌ラットを用いて腫瘍体積の増大率を算出した.
    (結果) II群のCAP閾値上昇および外有毛細胞の障害程度は, I群に比し有意に軽度であった. II群での血清BUN, クレアチニン値は, I群と比較し有意に低値を示した. 腎の病理組織学的所見ではII群の障害の程度は, I群に比し軽度であった. 腫瘍増大率はI・II群間に有意差は認められなかった.
    (結語) 以上の結果から, GBEはCDDPの聴器毒性および腎毒性を軽減することが示された. さらにGBEの併用がCDDPの抗腫瘍効果には影響を及ぼさないことが明らかにされた. このことからCDDPの投与に際してGBEを併用することは, CDDPの聴器毒性軽減の点から有益であり, 今後その臨床応用が期待される.
  • 岡本 牧人, 高橋 廣臣, 八尾 和雄, 中山 明仁, 馬越 智浩, 永井 浩巳, 稲木 勝英
    1999 年 102 巻 7 号 p. 918-924
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    下咽頭がん患者57例に病状や治療法, 副作用, 予後などを説明して患者自身に治療法を選択させた. 結果として, 初回治療として放射線治療を選択する例が有意に増加した. 2例は他病院での治療を希望し, 速やかに転院した. 91歳T4N3M0の1例はがん治療を全く行わなかった.
    インフォームドコンセントに要する時間が増え, 初診から治療開始までの期間が長くなった. 放射線化学療法後の残存再発時の手術拒否例はむしろ増加した. 再発例や死亡例での医師患者関係は良好であった.
    3年生存率では患者の選択の結果で予後が悪くなったとは言えなかった. 患者の望む治療と医師が最善と考える治療が一致することが理想的であるが, 医師側が患者の望む治療法の開発に努力すべきであると考察した.
    十分な情報の提示により, 患者に治療法を選択させることは予後の悪い下咽頭がんに対しても施行する意義があると結論した.
  • 椎骨脳底動脈循環不全を中心に
    新井 基洋, 樋口 彰宏, 梅川 淳一, 持松 泰彦, 伊藤 邦泰
    1999 年 102 巻 7 号 p. 925-931
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    MRAは最近めまいの領域でも画像診断の一つとして用いられているが, その臨床的有用性は確立されていない. そこで, 我々はMRAでめまい患者の椎骨脳底動脈 (以下VA-BA系) 血流形態を, その血管描出状態とその走行から検討した. さらに, 初期診断でVBIと診断をつけた症例とMRA像の比較検討を行い, VBI症例に認めることが多いMRA像とその中で脳梗塞の発症の可能性のあるVBIのMRA像を明らかにした. 対象はめまいを主訴にMRI, MRA検査を施行した男性60例, 女性125例, 合計185例, 年齢は17歳-89歳 (平均年齢61.6±14.4歳). MRI検査には装置としてGE横河システム社製0.5T, Vectra, fastを使用し, MRAは3D-PC法を用いた. MRAのVA-BA系の状態を医師2名以上の眼でa. 正常b. 消失c. 蛇行d. 中断と評価し, VA-BAのタイプをI~IVの4つに分類した. タイプI: 正常, II-R: 右VA描出不良, II-L: 左VA描出不良, III: VA-BA蛇行, IV-1: BA中断像を認める, IV-2: 両側VA-BA描出不良, これらの4つのタイプのうち, タイプII~IVの代表的症例を脳神経外科に依頼して実際の脳血管撮影を施行し, 椎骨脳底動脈循環不全の有無, 特にBAの血流不全を検討した. タイプII-R, II-Lは脳血管撮影上, BAの血流不全は認めなかった. タイプIIIも同様であった. タイプIV-1はBAに高度狭窄病変を認め, また, タイプIVは全症例, 小脳, 脳幹梗塞が認められた. VBI症例はMRAのタイプIII, IV-1がタイプI, II-R, II-Lより有意に多く認められた (P<0.005). タイプIII, IVの像を呈する症例は長い経過を見ていくとVBIであることが明らかになる可能性があり, 特にその加療中には注意が必要である. VA-BA系の解剖学的第4 (-5) 区分に高度狭窄病変を持つものが, めまいを主症状とする脳梗塞を発症する可能性にあるVBIのタイプであると思われ, その診断上, MRAは有用である.
  • 鼓膜形成術
    暁 清文
    1999 年 102 巻 7 号 p. 932-935
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/10/22
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