(目的) 鼻粘膜の血管収縮・拡張が鼻腔由来の一酸化窒素 (NO) 濃度に及ぼす影響を局所への薬剤投与により検討した.
(対象) アレルギー性鼻炎以外に特に鼻副鼻腔疾患を有しない健常人24名.
(方法) 安静座位における鼻腔由来のNO濃度および鼻腔抵抗, 最小鼻腔断面積, 鼻腔容積を測定した後, 前者12名には血管収縮剤として硝酸ナファゾリン, 後者12名にはNO-cGMP系を介さない血管拡張剤として硫酸サルブタモールをそれぞれ定量噴霧器を用いて両側鼻腔内に投与し, それぞれの計測値の変化を測定した. NOの測定には, chemiluminescence法によるNOアナライザーを用いた. 鼻腔抵抗の測定は鼻腔通気度計を用いてアンテリオール法により, 更に最小鼻腔断面積と鼻腔容積の測定はアコースティックライノメトリーにより行った.
(結果) 硝酸ナファゾリンの投与によりNO濃度は有意に低下し, 鼻腔抵抗は有意に減少した. 更に鼻腔容積は有意に増大した.
硫酸サルブタモール投与により, NO濃度は有意に上昇し, 鼻腔抵抗も有意に上昇した. 更に最小鼻腔断面積および鼻腔容積は有意に減少した.
(考察) 鼻腔抵抗および最小鼻腔断面積, 鼻腔容積の変化から, 各薬剤により鼻粘膜が収縮・拡張していることが示された. 硝酸ナファゾリンはα
1レセプターを介して血管を収縮させ, また血管拡張作用を示した硫酸サルブタモールはβ
2刺激剤であり, この血管拡張作用はNOを介さないことから, 鼻腔由来のNO産生量は, 血管の収縮・拡張に伴う基質の供給量の変化に影響される可能性が示唆された.
(結論) 血管収縮・拡張剤により, 鼻腔由来のNO濃度は有意に減少・増加し, これは基質の供給量の変化に基づいている可能性があると考えられた.
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