日本耳鼻咽喉科学会会報
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109 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 耳鼻咽喉科診断における脳機能画像の応用
    内藤 泰
    2006 年 109 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    脳機能検査の耳鼻咽喉科診断への応用について,我々の得た知見も含めて報告した.リクルートメント現象陽性の内耳性難聴者で聴性脳磁界反応を計測すると,入力音圧の上昇に伴うN100mのモーメント増大の程度が正常人に比して有意に大きいことが分かり,この過剰な脳磁界反応とリクルートメント現象という主観的症状との関連が示唆された.内耳障害で「音がやかましく聞こえる」という症状を訴える患者では,左半球での語音と雑音の磁界反応差が正常人よりも少なくなっており,内耳障害に伴う自覚的訴えを反映する他覚的指標になることが期待された.高度難聴小児で言語習得の臨界期を過ぎると聴覚連合野が視覚情報処理を行うようになり,人工内耳手術をしても音声言語の十分な発達が得られない可能性がある.この領域でも脳機能画像が治療や療育方針の選択に重要な情報を提供できる.一方,前庭系の神経システムにおいても視覚や聴覚と同様に大脳皮質を含めて考えることの重要性が広く認識されるようになってきた.健常者における前庭系賦活実験では,島後部,下頭頂小葉,前帯状回,視覚連合野などに賦活が見られ,その賦活は眼振急速相の向きと同側が強かった.また,前庭覚と視覚のように異なる感覚領野間には抑制的な相互関係があり,これが空間識の維持に寄与しているのではないかと推測された.耳鼻咽喉科医は感覚器を扱う専門医として,末梢臓器だけでなく,その情報を処理し,出力する脳についても理解を深める必要がある.今後,脳機能画像検査は耳鼻咽喉科診断の発展に大きな貢献をするものと期待される.
  • 金林 秀則, 渡嘉敷 亮二, 平松 宏之, 鈴木 衞
    2006 年 109 巻 2 号 p. 84-87
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    外側輪状披裂筋牽引術(lateral cricoarytenoid muscle pull:以下LCA-Pull)と甲状軟骨形成術I型(以下I型)を併用した片側性喉頭麻痺5症例についてその効果を検討した.
    当科では2000年より片側性喉頭麻痺に対しLCA-Pullを行ってきたが,当初はその効果を判断するために高度嗄声例に対してもあえて単独で対応してきた.その結果は最長発声持続時間(MPT)10秒以上を「改善」としたところ75%の改善率であったが,改善例の中にも聴覚印象的には不満足な症例があった.この結果をふまえ我々は2004年6月以降,高度嗄声を呈した症例に対してはLCA-PullとI型とを併用する方針とした.2004年10月から2005年3月までの6ヵ月間に両術式を併用した症例は5例で,4例は一期的に両術式を行い,残り1例は2004年10月以前にLCA-Pullを施行し,上記期間内にI型を追加した.これら5症例に対しMPT,発声時平均呼気流率(MFR),GRBASを用いた聴覚印象による評価を行い,全例正常音声と判断できるレベルまで改善した.
    LCA-PullとI型の併用は甲状軟骨板を経由した同一術野での手術であり,両術式を併用する必要のある高度嗄声症例に対し有用である.
  • 冨田 俊樹, 小川 郁, 田川 崇正, 藤井 正人, 行木 英生
    2006 年 109 巻 2 号 p. 88-95
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍は比較的まれな疾患であり,画像診断や穿刺吸引細胞診など術前診断に関する報告は散見されるが,術式や合併症,手術適応に関する詳細な検討は少ない.慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科において手術を行った副咽頭間隙腫瘍27症例の28手術を対象として,画像診断,術式,合併症などを検討し,副咽頭間隙腫瘍の手術適応について考察した.病理診断では悪性腫瘍が2例(7.4%)で良性腫瘍が25例(92.6%)を占めた.画像診断において茎突前区に腫瘍が存在すれば唾液腺腫瘍か悪性腫瘍,茎突後区では神経鞘腫か傍神経節腫であった.術式としては経頸部法が13例(46.4%)と最も多かった.神経鞘腫11例と唾液腺腫瘍11例の術式を比較すると神経鞘腫では経頸部法が多く用いられ,唾液腺腫瘍では様々な術式が選択されていた.合併症の発生頻度は全体では71.4%であった.術直後の一過性合併症の発生頻度は50%で病理診断別の偏りを認めなかった.永続的合併症の発生頻度は全体で46.4%であったが,神経鞘腫では81.8%と高く唾液腺腫瘍では9.1%と低かった.茎突前区の副咽頭間隙腫瘍は,悪性腫瘍が否定できないことと,唾液腺腫瘍であれば永続的合併症も少なく摘出できることから手術の適応とするべきである.茎突後区の腫瘍は神経鞘腫か傍神経節腫の可能性が高く,患者の年齢や職業なども考慮しながら経過観察の危険性と手術の危険性を比較した上で手術の適応を慎重に判断するべきである.
  • 大淵 豊明, 宇高 毅, 得居 直公, 山本 英永, 塩盛 輝夫, 藤村 武之, 清水 隆, 鈴木 秀明
    2006 年 109 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    核間性眼筋麻痺は,眼球内転障害の主な原因疾患であり,橋背側に存在する内側縦束の障害によって発生する.本疾患は,健側注視時の患側眼球の内転障害および健側眼の単眼性眼振が典型的な所見である.今回われわれは,核間性眼筋麻痺にて当院で入院加療を行った4例についてその臨床所見およびMRI所見の検討を行った.対象症例の年齢は15歳から74歳(平均46歳)であり,全例男性であった.原因疾患は,脳梗塞が3例,多発性硬化症が1例であり,患側は右2例,左1例,両側1例であった.その他の症状としては,めまいが3例に,顔面神経麻痺が1例に合併していた.眼球運動障害は全例で治癒していた.MRIにおいて患側の内側縦束に病変を確認できた症例は4例中1例であった.以上の結果および本邦文献報告例から,核間性眼筋麻痺では,原因疾患として脳血管障害が最も多く,半数以上でめまい症状を合併することが明らかとなった.またMRI上,内側縦束に異常が指摘できない症例が多く見られたが,これは,内側縦束近傍には眼球運動に関与する神経核などが密に存在するため,純粋な核間性眼筋麻痺は極めて微少な病変でしか発生しえないことが原因と考えられた.したがって眼球内転障害の診断においては,画像所見のみにとらわれることなく,核間性眼筋麻痺を念頭においた臨床所見の詳細な検討が重要と考えられた.
  • 治療法と成績
    坂本 菊男, 千々和 秀記, 宮嶋 義巳, 梅野 博仁, 中島 格
    2006 年 109 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1986年から2002年までの17年間に当科で初治療を行った耳下腺悪性腫瘍74例(男性39例,女性35例,平均62歳)を対象とした.T別ではT1:4例,T2:9例,T3:6例,T4:55例であり,N別ではN0:50例,N1:9例,N2:14例,N3:1例であった.両葉に腫瘍が及んでいた症例が36例(49%)と最も多かった.治療前に顔面神経麻痺を認めていた症例は18例(24%)で,両葉,深葉に腫瘍が存在するほど顔面神経麻痺の頻度が高かった.病理組織型は16種類と多彩であり,粘表皮癌が16例(22%)と最も多かった.5年,10年生存率は65%,61%であった.T別の5年生存率は,T1は5年経過例はいないが全例生存しており,T2:100%,T3:63%,T4:58%であった.N別の5年生存率は,N0:84%,N1:42%,N2:13%,N3:0%であり,N0とN(+)との間に有意差を認めた(p<0.0001).初診時顔面神経麻痺の有無でも有意差を認めた(p<0.0001).主な病理組織型別の5年生存率は粘表皮癌:69%,腺癌:48%,腺様嚢胞癌:71%,腺房細胞癌,悪性混合腫瘍:100%であった.原発巣手術法の検討から,腫瘍が浅葉や深葉に限局し顔面神経への浸潤がないT1•T2例は顔面神経を保存した葉切除術で十分であり,T3以上の症例は顔面神経本幹からの合併切除と全摘術以上が必要であると考えられた.また,腺癌,粘表皮癌では顔面神経本幹からの切除が必要と思われ,N0症例でも腺癌,腺様嚢胞癌,未分化癌では頸部郭清術が必要と考えられた.
  • 耳痛
    佐野 光仁
    2006 年 109 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
  • 小川 郁
    2006 年 109 巻 2 号 p. 128-129
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 衞
    2006 年 109 巻 2 号 p. 129-131
    発行日: 2006/02/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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