日本耳鼻咽喉科学会会報
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72 巻, 9 号
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  • 中村 英樹
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1605-1627
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    過去3年間における頭部外傷例について考察, 本稿では耳科学的並びに聴力検査の結果を報告した.
    1) 自覚症状, 耳鏡所見, レ線所見, 性及び年令, 受傷原因, 受傷部位及び受傷程度 (荒木氏の分類) につき統計的に検討した.
    2) 外傷による聴力障害の性質を上記の点につき総体的に検討した.
    3) 110例に対し自記オージオメトリーを施行し, 2, 3の知見を得た.
    結論としての要旨は次の如くである.
    1) 純音聴力検査では対象例 (160例) 中136例85.0%に難聴をみた. 伝音性及び感音性障害の両者がみられた.
    2) 聴力損失の程度及び性質は受傷部位とは関係なく, 受傷程度とは関係がみられた.
    3) 自記オージオメトリーではJergerの分類基準に従つて5型に分類, 対象例110例中, I型が52.7%, II型31.4%, III, IV型が15.9%であり, V型はみられなかつた.
    4) 自記オージオメトリーで, III, IV型の出現は受傷部位とは関係なく, 受傷程度とは関係がみとめられた.
    5) 頭部外傷による聴力障害の特長は, その性質, 程度に多様性を示し, 他の原因による難聴のごとく一定の傾向がみられなかつた.
  • 立木 孝, 本間 利美, 本間 弘治, 山田 朋之
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1628-1634
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    突発性難聴929例を観察し検討した結果, 次の如き事実がわかつた.
    16才~60才の成人に高度の突発性難聴が発来する. しかもその性別を見ると特にどちらかに優位の差は見られなかつた.
    突発性難聴は, 肉体的, あるいは精神的要因が関与することも考えられるが, 我々の症例では, 肉体的, 精神的要素は特に関係する症例は見られなかつた.
    難聴例の2/3において前庭機能障害が見られたが, その中の何例かは, 前庭障害が先行し他の何例かに蝸牛障害の先行するものもあつた, 前庭障害例の臨床症状は, 一般に一側性であり, それも再発例はなかつた.
    聴力損失は一般は高度であり, その聴力型を見ると多くは明確でなかつた.
    幾例かは平垣型で, その他は, 高音漸傾型を示した. これらは低音部のみに聴力損失のあるものと, 低音部が障害されていないものとの2つに分けられる.
    突発性難聴例において. Recruitment現象の測定は困難であつたが, 測定例の77%に, Recruitment現象陽性であつた. そのうちの2/3は, 種々の治療を行つた結果, 聴力は回復した.
  • 自記クプロメトリーについて
    佐々木 美隆
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1635-1652
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    自記クプロメトリー (self-recording cupulometry) の基礎的問題と臨床応用について述べた.
    われわれが自記クプロメトリーと呼ぶ回転検査は, 回転方式が被検者の感受性いかんによつて変化し, その変化する様相から眩暈の病巣を診断しようとするものである. したがつて, 一定の回転方式の下に迷路反応を測定する従来の検査法とは, 全く異つた種類の検査法ということができる.
    初めに基礎編において検査規準を定めた. 次いで眩暈患者156例を対象に本検査を施行し, 次の結果を得た.
    1. 異常型検出率は85%で, 同一症例におけるcupulometryの74%よりも高い.
    2. 自記クプログラムは3つのtypeに分類できるが, reversion phenomenon陽性のType 3 (Reversion type) は例外なく末梢疾患に認められる.
    3. 末梢疾患におけるreversion phenomenon摘発率は88%と極めて高い. したがつてこの現象の有無により, 病巣の末梢・中枢鑑別が可能である.
    最後に, reversion phenomenonの成因を動物実験により追求した.
  • 熊谷 寛一
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1653-1694
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    高血圧症にあつては, しばしば眩暈を招来し, また眩暈を訴える患者のうちには, 高血圧症患者が比較的に多いことは日常の臨床において, しばしば経験されることである.
    しかしながら, 高血圧症に見られる眩暈に関して耳科的に検討されたものは案外に少ない.
    著者は, 高血圧症と眩暈との関係を追求することを目的として, 高血圧症に関して実験的方面と臨床的方面との二方面から, 主として運動平衡機能について検討した.
    第1編においては, 家兎を使用し, 実験的に高血圧症を誘発させ, 自発眼振, 頭位眼振検査, 回転後眼振検査, 温度性眼振検査および自然減衰回転検査を行い, 術前と術後とを比較検討した. その成績はつぎのように要約される.
    1 血圧は術後, すべての動物において平均30~40mmHgの血圧上昇を認めた.
    2 自発眼振はすべてに陰性であつたが, 頭位眼振は16例中12例 (75%) に認められた.
    3 回転後眼振検査では, 眼振持続時間には著明な変化は認めなかつたが, 眼振の頻度は明らかに減少した. 対照家兎の成績と比較した結果, これはResponse Decline現象によるものと考えられた.
    4 温度性眼振検査では, 術後, 眼振持続時間の短縮を認めたが, 左右差はなく, これもResponse Decline現象によるものと考えられた.
    5 自然減衰回転検査では, 術後著明な変化は認められず, 高血圧症と言う病的状態においても, 眼振と頭振とは同時性に発来し, 全く一致した.
    第2編においては, 高血圧症患者15名 (内分泌性1名, 動脈硬化性1名, 腎性2名, 本態性11名) について運動平衡機能検査 (その内容は, 自発眼振, 頭位眼振検査, 温度性眼振検査, 回転後眼振検査, 起立, 立ち直り検査としてのStatic functional ARG-testである) を行い, 検討した. その成績はつぎのように要約される.
    1 高血圧症については, 本態性高血圧症が一番多く, しかもStage 1が圧倒的に多い.
    2 著者の観察した高血圧症患者の20%近くに自発眼振が認められ, 40%に頭位眼振が認められた. 温度性眼振検査で異常を認めたものでは, CPを示すものが多く, 回転後眼振検査で異常を認めたものについては, 回転後眼振の亢進と低下がほぼ同じ頻度に認められ, Static functional ARG-testは約半数に異常が認められた.
    3 高血圧症患者について, 運動平衡機能検査で異常を認める率は一般的に病期の進展とともに高くなる傾向にあると言えるが, 必ずしも一致しないものもあり, 病的所見はバラエティに富んでいると言え, 個体の感受性, 個体の病理学的条件あるいは自律神経系の不安定等の準備的要素が大きな影響力をもつもののように考えられた.
  • 窪 斐子
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1695-1720
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1. 目的
    臨床的応用が盛んに行なわれるようになつた電気的眼振記録法 (Electronystagmography) は, その著しい異常所見の検出率によつて注目されている.
    これに関し, 上村 (1966) はその利点について1) 眼振所見が客観的に表示される. 2) 眼振所見の正確な分析が可能である. 3) 閉眼時および暗所開眼時の眼振所見がえられることを報告した.
    これをさらに頭位を変えることによつて迷路に負荷を与え, 眼振出現の有無およびその性状の変化を調べる体位検査を組合わせて実施し, 臨床的になお一層活用されるようになつた.
    したがつて, このENG検査を慢性中耳炎患者に行なえば, 従来行なわれていた平衡機能検査では得られなかつた異常所見の検出が可能であり, さらにこれを中耳手術後の患者に行なうことによつて, 手術侵襲の内耳に与える影響についても知ることが可能となる.
    また, これらの眼振所見より逆にENG記録における末梢迷路性眼振の性状を明らかにすることができる.
    以上の目的から, 最近3年間に施行された中耳手術患者126例を対象に, ENG検査を行なつた.
    2. 方法
    眼振記録は4チャンネルの電気的眼振記録装置 (ENG) を用い, 眼球運動の水平および垂直成分を同時誘導記録した. さらに, 体位検査―側位検査, 頭位変換眼振検査―を視性条件の異なる閉眼時, および暗所開眼下に加えてFrenzel眼鏡下に観察記録した.
    3. 検査成績および考按
    慢性中耳炎患者126例について, その術前および術後3~7日目 (術後I), 術後3週間目 (術後II) の3回, ENG検査を行ない次の結果をえた.
    1) 病的眼振陽性率は, 術前54%, 中耳手術後の術後Iでは89%, 術後IIでは69%であつた.
    2) この病的眼振を分類すると, 自発眼振, 頭位眼振, 頭位変換眼振がみられ, とくに術後Iでは頭位変化によつて影響される傾向がみられた.
    術側との関係においては, 術前自発眼振および背位において眼振を認める症例では健側向きが多く, 頭位および頭位変換眼振では患側向きが多い. この関係が術後Iでは差がみられなくなり, 術後IIでは術前の関係に戻る傾向がみられた.
    3) 病的眼振の性状については, 術前水平性眼振が大部分を占め, 術後Iでは垂直成分をもつ眼振が増加し, 術後IIでは術前の関係に近づいた.
    4) ENG記録に際し, 頭位変換眼振検査においてその視性条件, 即ち暗所開眼およびFrenzel眼鏡下のENG記録を比較し, 前者が2倍弱の眼振陽性率を示した.
    5) これらの慢性中耳炎患者のうち再手術例, 真珠腫性中耳炎例, 迷路炎例, めまい自覚の有無および耳鏡所見から鼓膜穿孔部位, 耳漏の有無などについて検討した.
    a. 病的眼振陽性率は迷路炎併発例の100%についで, めまい自覚例62%, 再手術例並びに真珠腫性中耳炎例の59%となっており, とくにめまい自覚例と無自覚例では統計上有意の差を認めた.
    b. 病的眼振の分類と術側との関係について, 迷路炎例では術前の自発眼振はすべて健側向きであつたが, 頭位眼振および頭位変換眼振は患側向きが多く, 鼓膜弛緩部穿孔例でもこの傾向がみられた.
    c. 暗所開眼時のENG記録について, 正背位における自発眼振緩徐相速度を測定し, 眼振の大きさは迷路炎例>めまい自覚例>真珠腫性中耳炎例であつた.
  • 荒井 辰彦
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1721-1727
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    抗家兎扁桃鶏血清を家兎に注射することによつてビマン性系球体腎炎を実験的に作成した.
    著明な蛋白尿と血尿が認められ, 組織学的には糸球体の上皮細胞や内皮細胞の腫大と増殖が認められ, 基底腫の肥厚を伴う所見を呈した. この臨床的ならびに組織学的所見はネフロトキシン腎炎と多くの点において類似している.
    抗家兎扁桃血清から抗体を吸収できる能力のある可溶性のprotective factorが, 家兎扁桃ホモジネートのトリプシン消化上清液から得られた.
    Ouchterlony法によつて家兎扁桃と家兎腎のトリプシン消化液の間には免疫学的交叉反応がみられた.
    扁桃ホモジネートの免疫電気泳動では2つの沈降線が認められたが, その一つはOsserman法で, γ-gl位で腎と交叉反応を示した.
    可溶性protective factorの大部分は68%アルコール分画で沈澱に集り硫安分画では分離できなかつた.
    共通抗原の決定には螢光抗体法直接法を行つた. 糸球体, 尿細管に螢光物質の沈着がみられた. このことから抗腎血清抗原は腎のみならず扁桃にも存在するものと推察される.
    抗原のトリプシン消化を行つたCole, CromatyおよびWatsonは抗腎血清抗原は蛋白とpolysaccharide complexであろうと述べている. そしてこれはhaptenとしての性格を持つものであろう. この考えは著者の今回の実験成績からも支持できる.
    臨床的にも明らかなように絶えず感染をうけている扁桃は腎障害性を発揮し得るものと推察される.
    もし人の扁桃経由腎炎が病巣抗原やhapten機構にもとづいて自己免疫過程が生じこれによつて腎炎が発症するものとすれば, その抗原物質は抗腎血清抗原と類似のものと考える.
  • 香取 早苗
    1969 年 72 巻 9 号 p. 1728-1758
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻咽腔炎が頭痛, めまい, アレルギー等の種々な遠隔疾患をしばしば合併する事実は, すでに堀口により研究されている.
    本論文は各遠隔疾患を伴う鼻咽腔炎の自律神経学的背景を研究する目的で, 多元的自律神経機能検査法であるMecholyl BAPG Testを使用し, Mecholyl Testに於ける血圧変動に伴う左右両耳垂の容積脈液図により各遠隔型鼻咽腔炎の自律神経学的病態を解析究明したものである.
    症例は, 鼻咽腔炎例100例の内遠隔型88例, 単純型12例で下記の如き結果を得た.
    1) Mecholyl BAPG Testで単純型12例はNormal Patternを示したが, 遠隔型88例は全てPathologic Patternを示した.
    2) 遠隔型をその症状から3亜型 (めまい型, アレルギー型及び頭痛型) に分類すると, 各亜型のMecholyl BAPG Patternは夫々特徴的であつた.
    3) 鼻咽腔炎の局所治療のみによる遠隔症状の消失乃至改善は, Mecholyl BAPG Patternの或る病的要素の正常化をもたらした.
    上記の結果から著者は, 夫々異つた性質の自律神経学的素因をもつ個体が鼻咽腔炎を併発すると特有の遠隔症状を現わすこと, 鼻咽腔炎の臨床的意義はその潜在性持続的自律神経刺激にあること等を明らかにした. これ等は, 堀口学説の正当性を立証するものと考えた.
  • 1969 年 72 巻 9 号 p. 1759-1778
    発行日: 1969/09/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
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