日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 6 号
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原著
  • 永谷 群司, 森 貴稔, 宇高 毅, 塩盛 輝夫, 大淵 豊明, 鈴木 秀明
    2007 年 110 巻 6 号 p. 447-452
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1999年から2004年までの6年間に当科で一次治療を行った早期喉頭癌患者71例 (男性68例, 女性3例, 平均年齢67.7歳) を対象とした. 内訳は声門上癌8例, 声門癌61例, 声門下癌2例であった. 一次治療として声門癌T1aに対しては放射線単独治療, それ以外に対しては放射線化学併用療法を行った. 早期喉頭癌の5年生存率は声門癌91.1% (T1a : 100%, T1b : 92.3%, T2 : 85.8%), 声門上癌75.0%であった, 局所制御率は声門癌79.6% (T1a : 80.0%, T1b : 74.0%, T2 : 85.2%), 声門上癌56.2%であり有意差が認められた (p<0.05). 喉頭温存率は声門癌84.4% (T1a : 100%, T1b : 76.9%, T2 : 77.5%), 声門上癌58.3%であった. 局所再発と頸部リンパ節転移はそれぞれ9例, 6例であった. 遠隔転移は声門癌4例に認められた. 原病死した症例は4例であり, うち3例は遠隔転移死していた. 以上の結果から早期声門上癌に対しては, 根治的放射線療法と治療効果不十分症例に対する喉頭全摘も含めた救済治療を考慮することで, 声門癌と同等の治療効果が得られると考えられた. さらに, 原病死症例の多くが遠隔転移死であることから, 再発例に対しては局所治療だけでなくadjuvant chemotherapyの導入が必要であると考えられた.
  • 舘田 勝, 工藤 貴之, 長谷川 純, 嵯峨井 俊, 宮崎 真紀子, 中目 亜矢子, 織田 潔, 吉田 尚弘, 小林 俊光
    2007 年 110 巻 6 号 p. 453-460
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    先進諸国と比較すると日本は未だ結核の中等度蔓延国であり, 頸部結核性リンパ節炎も依然として重要な疾患の一つである. 2001年から2005年までに頸部結核性リンパ節炎6例を経験した. 全例女性で年齢は28歳から77歳で平均が62歳であった. タイからの移住者が1名, 結核の既往があるものが1名, 家族に結核罹患歴があるものが2名であった. 診断はリンパ節生検により病理学的に診断されたものが3例, 穿刺吸引検体より塗抹, 培養, MTD (Mycobacterium tuberculosis direct test), PCR (polymerase chain reaction) にて診断されたものが3例であった. 全例, 抗結核剤を投与し経過は良好であった. 穿刺吸引検体からのMTD, PCRは有用な検査で早期の治療開始に期待できると思われた. また, 日本は周囲に結核蔓延国を控えており国内のみならず海外の動向を常に把握しながら診療にあたるべきと考える.
  • 鈴木 政博, 寺田 聡広, 小川 徹也, 鈴木 秀典, 長谷川 泰久
    2007 年 110 巻 6 号 p. 461-465
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    近年, 頭頸部癌に対する治療として, 機能や形態温存を考慮し, 化学放射線療法を行う症例が増加傾向にある. 腫瘍が残存や再発した場合, 当科では可能であれば救済手術を選択しているが, 口腔・中下咽頭癌における救済手術に関する報告は少なく, その有効性や問題点について明らかとなっていない.
    今回, われわれは照射後に原発部位の残存や再発を認め, 救済手術を施行した口腔・中下咽頭癌症例の術後合併症とその予後について検討した.
    [対象] 1994年から2003年の10年間に, 根治照射後に原発部位が残存または再発した舌24例, 口腔底5例, 中咽頭4例, 下咽頭4例の扁平上皮癌37例を対象とした.
    [結果] 術後合併症は37例中14例 (37.8%) に認め, 創部感染9例, 咽頭皮膚瘻6例, 誤嚥性肺炎2例, 皮弁部分壊死2例, 皮弁全壊死, リンパ漏, 頸動脈破裂がそれぞれ1例であった. 各因子と合併症の発生に関して有意差を検討した結果, 再建手術施行群 (p=0.031) と化学療法併用群 (p=0.049) が有意に関連していた. 術後の5年粗生存率は全体で70.7%であった. また, 有意ではなかったが初発時の病期が早期の症例群で予後が良好であった.
    [結論] 口腔・咽頭癌症例における照射後の救済治療として, 手術療法が有効であると考えられる. 再建手術施行例と化学療法併用例では術後合併症への対策が必要である.
  • 須田 稔士, 石井 彩子, 福田 佳三, 歌橋 弘哉, 石井 正則
    2007 年 110 巻 6 号 p. 466-469
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性. 咽頭痛を主訴に来院し, 精査により下咽頭癌T4aN2bM0 Stage IVAと診断したが, 本人の強い希望にて放射線併用化学療法の施行となった.
    治療後, 腫瘍は画像および喉頭ファイバー所見上消失し, CRと判断した. しかし, 下腿浮腫・全身倦怠感が出現し, 心電図上に心房細動を認めた. 心臓エコー・心筋生検等の精査の結果, 下咽頭癌の心臓転移と診断された. 頭頸部領域悪性腫瘍の心臓転移は極めてまれであり, さらに生前に確定診断がついた例も非常にまれである. そこで若干の文献的考察を加えて報告する.
  • ―ツチ骨とキヌタ骨へのワイヤー固定の比較検討―
    長嶺 尚代, 新井 美帆, 真鍋 未希, 小寺 一興
    2007 年 110 巻 6 号 p. 470-476
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    当科においてアブミ骨手術を行ったキヌタ骨長脚欠損を伴う先天性アブミ骨底板固着症例のうち, シュークネヒト型ワイヤーピストンをツチ骨柄へ固定した26症例30耳について, 手術成績を報告した. 手術の際には, ワイヤーピストンを脱落のないように変形させてツチ骨柄に固定した. 一方で, 鼓膜の異常やツチ骨およびキヌタ骨の固着がなくアブミ骨底板の固着のみを認め, キヌタ骨へワイヤー固定を行った39症例49耳を手術成績の比較対象群とした.
    術後の平均気導聴力レベルはツチ骨固定例で28.6dB, キヌタ骨固定例では21.6dBであり, それぞれ術前の気導聴力と比較すると35.7dBと29.7dBの聴力改善を認めた. 日本耳科学会の聴力成績判定基準案 (2000年) に基づいて行った手術成績は, ツチ骨固定例では90%, キヌタ骨固定例では98%であった.
    ツチ骨固定例における術後の平均気骨導差は15.8dBであり, キヌタ骨固定例と比較すると4.3dB大きい結果となった. この2群間の差は術後の伝音効率の差に起因すると考えられた. 以上の結果から, シュークネヒト型ワイヤーピストンをツチ骨柄に固定するこの手術法は, 良好な手術成績が得られる有用な方法であると考えられた.
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