日本耳鼻咽喉科学会会報
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113 巻, 7 号
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総説
  • 村上 昌雄
    2010 年 113 巻 7 号 p. 581-586
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/12
    ジャーナル フリー
    粒子線治療はブラッグピークを持つ物理学的特性ゆえに, がん病巣への高度な線量集中が可能で, 高いがん制御率と少ない副作用を両立できる. またRBE (相対的生物学的効果比) は陽子線1.1, 炭素線2から3と見積もられ, X線より優れた生物学的効果を示す. 陽子線または炭素イオン線を用いた粒子線治療は, わが国では2009年現在7施設において稼働し, 最近急速に普及しつつある. 兵庫県立粒子線医療センターは両線種が使用可能な世界唯一の施設で, 2001年開院以来3,000名を超える治療実績がある. 頭頸部腫瘍に対する粒子線治療は, 局所進行癌でも化学療法を併用せず効果が良好で, 口腔・咽頭に照射される場合でも経静脈栄養を必要とする患者はいないことから, 高齢者にも優しいQOL (生活の質) の高い治療を実現できる. 副鼻腔, 唾液腺, 口腔, 咽頭, 聴器から発生した悪性黒色腫, 腺様嚢胞癌, 腺癌など, 扁平上皮癌以外の従来の放射線では抵抗性と考えられる腫瘍にも適応がある. 陽子線と炭素イオン線の線量分割が異なり, 厳密な比較は困難であるが, 全生存率・局所制御率共に線種間の差はなかった. 現在保険診療化に向けた検討が本格化している. また今後, 更なる適応拡大とともに, 装置の普及を目指し, 機器の小型化・低価格化が課題となっている.
原著
  • 西山 耕一郎, 永井 浩巳, 臼井 大祐, 栗原 里佳, 八尾 和雄, 廣瀬 肇
    2010 年 113 巻 7 号 p. 587-592
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/12
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科外来における, 嚥下障害患者の対応法を検討した. 75歳以上の81例に対して嚥下内視鏡検査を行うと, 誤嚥群は26例 (32%), 全例が咽頭期に主因があると判定した. 誤嚥群26例に対して, 誤嚥しにくい食事内容を具体的に提示し, ペーシングや一口量を調整し, 姿勢や食具を指導して, 嚥下指導と間接嚥下訓練を行った. 症例によっては増粘剤の使用を指導した. 一年以上嚥下指導を行いながら経過観察した. 一年以上嚥下指導をしながら経過観察できたのは17例 (65%) であった.
    この17例のうち, 痰が減少したのは10例 (59%), 痰のからみが消失したのは4例 (24%) であった. ムセがあった11例中, ムセが消失したのは2例 (18%) であった. さらに体重の増加を4例 (24%) に認めた. 全例, 気管支炎を合併し, 副鼻腔炎を11例 (65%), 胃食道逆流症を3例 (18%) 合併していた.
    嚥下機能低下を早期に診断し, 適切な対応策を行えば, 嚥下性肺炎を軽症化させることを示した.
  • 内海 愛, 榎本 浩幸, 山本 馨, 木村 優, 肥塚 泉, 佃 守
    2010 年 113 巻 7 号 p. 593-601
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/12
    ジャーナル フリー
    めまいを訴えて病院を受診する症例のうち, 随伴する中枢神経症状がなく, 訴えがめまいと前庭症状のみである場合には, 一般的に末梢性めまいと考えられることが多い. しかしながら, 小脳梗塞はめまい以外の症状を呈さず, 末梢性めまいと鑑別が困難な場合がある.
    2004年4月から2009年3月までの5年間に末梢性めまいが疑われて当科に入院した症例は309例であった. その中で, 中枢性めまいは5例 (1.6%) あり, そのうち小脳梗塞は4例 (1.3%) であった. これらの4例はいずれも後下小脳動脈 (posterior inferior cerebellar artery: PICA) の梗塞であった. 年齢は60歳以上で, 高血圧, 糖尿病, 狭心症, 高脂血症など, 脳血管障害のリスクファクターを持つ症例であった. いずれも初診時に明らかな脳神経症状や小脳半球症状は認めなかったが, 2例は体幹失調を認めたため, 発症後2日以内にMRIを撮影し, 小脳梗塞の診断に至った. 残りの2例はめまい以外の訴えがなく, 診断までに4日から7日を要した. 小脳梗塞症例の鑑別には, 体幹失調, 起立・歩行障害の有無, 眼振の性状, 視性眼球運動検査が特に有用であった.
  • 生駒 亮, 荒井 康裕, 山元 さやか, 佃 守
    2010 年 113 巻 7 号 p. 602-606
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/12
    ジャーナル フリー
    急性扁桃炎治療中に発症した甲状腺クリーゼの1症例を経験した. 症例は33歳, 女性. 未治療の甲状腺機能亢進症を合併しており, 急性扁桃炎の入院加療中に甲状腺クリーゼを発症した. 発症から診断までに4日間を要し, その間に状態が悪化し救命しえなかった. 甲状腺クリーゼの対策として, 早期診断, 早期治療が極めて大切と考えられた.
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