日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
77 巻, 12 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 高原 滋夫, 斉藤 龍介, 小西 静雄
    1974 年 77 巻 12 号 p. 959-969
    発行日: 1974/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1) 目的
    Mènière病と突発性難聴とは臨床的に類似した面が多く,しばしば両者の区別の明らかでない症例に遭遇する場合が少なくない、一方,病理学的には両者は全く異なつた病理所見を呈する疾患として報告されてきた、すなわち,前者はidiopathic endolymphatic hydropsを呈するのに反し,後者はviralendolymphatic labyrinthitisに類似した像を示し,少なくとも内リンパ水腫像を呈したものは報告されていない.
    私達は今回臨床的には突発性難聴の病歴をもち,その側頭骨に内リンパ水腫像を示した症例を経験した.本症例は高齢で死亡したため,側頭骨内をこは広汎な老人性変化が合併していた.そこで,内リンパ水腫と老人性変化の二つの観点から本症例の側頭骨病理組織縁を整理報告し,文献的考察を試みた.
    2)方法
    死後両側側頭骨を摘出して10%ホルマリン液で固定した.5%三塩化醋酸液にて脱灰後,上昇アルコール列で脱水し,セロイジンに包埋した.20-25μの厚さの水平断連続切片を作成し,H-E染色を施こして光学顕微鏡下に観察した.必要に応じてMallory-azan染色,鍍銀染色, Van Giesson染色を施こし,観察した.また,蝸牛病変の拡がりを量的に観察するためgraphic reconstructionを行なつた.
    3)結果
    臨床的に右耳に突発性難聴の病歴をもち,80才の高齢で死亡した症例の側頭骨病理組織所見を報告し,文献的考察を行なつた.結果は以下の通りである.1)右耳にidiopathic endolymphatic hydrops像を見た.文献的にMeni-ere病と突発性難聴の病理を検討した結果,本症例はMeniere病と同一範〓に属する突発性難聴であろうと考察した.2)両耳にneural typeに加えてmatabolic typeの病変を主とする老人性難聴の合併をみた.3)脳底動脈,内耳道内動脈の高度の動脈硬化病変は内耳に見られた不規周な血管条萎縮病変との相関を推測させた.
  • 高橋 正紘, 神崎 仁
    1974 年 77 巻 12 号 p. 970-980
    発行日: 1974/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1.目的:減衰振子様園転検査(Damped Pendular Rotation Test,DPRT)を定量的に観察することにより,一側末梢迷路障害例の眼振解発機構を検討した.
    2.方法:一側末梢迷路性疾患のENG記録79例に対しDPRTのVestibulogram(各回転毎の誘発眼振数を回転順に左右別に記録したグラフ)を作製し,左右のVestibulogramのPatternによる分類と自発眼振の強さとの関係を検討した.
    3.結果:
    1)DPRTにより解発される左右眼振数の和は同一症例の一定刺激下ではほゞ一定であり,原剤として自発眼振の強さに影響されない
    2)自発眼振とDPRTの左右VestibulogramのPattemは密接な関係を有し,前者の減弱と共に後者は一定の経過を辿る.
    3)Vestibulogramの観察によれば,従来のDirectional Preponderance(DP)という概念は適当でなく,左右反応燈の差は刺激角加速度を変数とする関数として理解できる,
    4)DPRTはResponse Declineが少なく,一回の検査により16°~18°からo0/s2までの両側回転の反応を知ることができ,疾患特異性と代償過程の観察に優れた検査法となることが期待される.
  • 特に電子顕微鏡的観察
    山城 義昭
    1974 年 77 巻 12 号 p. 981-1007
    発行日: 1974/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科並びに気管食道科領域の疾患は,粘膜を主とする管腔内のものであり,その処置,手術においては病的粘膜を掻爬あるいは剥離除去する方式がとられ,その後新生粘膜の再生修復を主目的とするものである.従つて順調に粘膜の再生をうながすべく術後の処置ならびに薬物療法に努力するのである.臨床面においてこの粘膜上皮の再生は極めて重要な課題であるにもかかわらず,これに関する報告,文献は少く,殊に気管の如き深都損傷時におげる電顕的観察は少い.そこで著者は気道,殊に気管粘膜の再生過程について詳細に電顕的観察を加えるべく実験を行い,さらに個々の問題として,掻爬気管粘膜再生上皮の,形態的推移の経時的観察から,未だ明らかになつていない基底膜の再生,基底細胞の再生,基底細胞から線毛細胞,杯細胞,刷子細胞への分化移行,線毛の発生過程,発生時期,これら諸細胞の再生過程における細胞内小器官の動態の観察等を始め,再生過程における増生,異型化の諸問題につき究明したいと考えた.
  • 清水 真臣
    1974 年 77 巻 12 号 p. 996-1000
    発行日: 1974/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1.目的
    感音難聴は内耳性難聴と後迷路性難聴とに二大別されている.内耳性難聴については今日高い精度で診断されるようになつた.
    けれども後迷路性難聴の鑑別診断は種々の検査法の開発によつても尚容易ではない.
    今回は両耳難聴現象を利用した検査法として両耳聴現象を利用したにテープを試作し,正常者20名について検査を実施した.
    2.検査法
    検査語音は日本人の日常最も繁用頻度の高い,具象かつ有意の清音及び濁音の2音節語で,いずれも明瞭で親しみ易い内容の語音である.
    両耳に与えられる刺激方法は一耳の第2音節と他耳への第1音節とを時間的に一致させ,無競合部分と競合部分との2つの要素をもつ.そして最初に左耳に無競合部分の第1音節を与えた場合には,次の刺激は右耳に最初に無競合部分の第1音節を与えて左右交互に刺激して等負荷となるようにした.刺激の間隔は筆記に要する時間を考慮して7秒とした.
    各々20個の項目からなる3つの検査語音表を作り,第1語音表は濁音-濁音で組み合わせた20項目で,これは試聴用とし,第2,第3語音表は濁音一清音を組み合わせた項巨で検査を実施した.
    3.結果
    1)被検者個の成績を検討すると20名中16名は各語音表を通じて右耳の語音明瞭度が優つていた.
    2)各語音表別に左右両耳の成績を比較すると,明らかに統計上有意の差をもつて右耳の優位が示された.
    3)左右両耳共,検査の進行につれて訓練効果を示した.
  • 広瀬 肇
    1974 年 77 巻 12 号 p. 1015-1018
    発行日: 1974/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top