日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 9 号
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総説
原著
  • 島津 倫太郎, 田中 剛, 富山 里那子, 倉富 勇一郎, 井之口 昭
    2009 年 112 巻 9 号 p. 648-655
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 放射線防護作用を持つとされているアルカロイド製剤, Cepharanthinの頭頸部癌における放射線性唾液腺障害と味覚障害に対する効果を定量的に評価した. 化学放射線療法を施行する頭頸部悪性腫瘍患者40名からCepharanthin投与群と対照群を無作為に抽出し, その効果を比較検討した. Cepharanthin投与群22例と対照群18例を比較すると, 化学放射線治療前後の唾液分泌量において有意な効果は認めなかったが, Cepharanthin投与により安静時唾液分泌量の減少が抑制される傾向を認めた. また味覚障害 (甘味・塩味) および口腔内不快感の軽減においてCepharanthinの有効性が認められた. Cepharanthinは頭頸部癌患者の化学放射線療法に伴うQOL低下の軽減に有効な薬剤である可能性がある.
  • 北島 明美, 佐藤 成樹, 肥塚 泉
    2009 年 112 巻 9 号 p. 656-659
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    Ramsay Hunt症候群 (以下, ハント症候群) の臨床像は多発脳神経障害を伴うこともあり, 多彩であることが知られている. 今回われわれは, 第VII・VIII脳神経症状に加え, 第IX・X脳神経障害を合併したハント症候群を経験したので, われわれの施設での統計および若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は58歳女性. 主訴は回転性めまいおよび右耳痛. 慢性関節リウマチにて治療中であった. 咽頭痛も伴っていた. 4日後, 右顔面神経麻痺, 嚥下困難, 嗄声が出現し, われわれの施設に入院となった. 眼振, 右軟口蓋麻痺および喉頭麻痺を認め, 多発脳神経障害を合併する右ハント症候群の診断にて抗ウイルス薬およびステロイドの投与を行った. 症状は次第に改善傾向を示したが, 軟口蓋麻痺および喉頭麻痺が改善するには3カ月以上を要した. われわれの施設での過去4年間の統計では, 第IX・X脳神経を含む多発神経障害を認めたハント症候群の患者は27% (軟口蓋もしくは喉頭の麻痺症例のみに限ると9%) であった. 多発脳神経障害を伴う場合, 特に反回神経麻痺があるときは誤嚥性肺炎を起こし重症化する恐れがある. ハント症候群と診断した後も, 経時的な症状変化を注意深く観察し, 合併症の早期診断に努めることが必要と思われた.
  • 伊藤 恵子, 千年 紘子, 小林 麻子
    2009 年 112 巻 9 号 p. 660-664
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateral sclerosis, 以下ALSと略) は運動ニューロン変性疾患の一つで, 呼吸筋麻痺による呼吸不全や嚥下障害による誤嚥性肺炎を来す予後不良の疾患である. 今回われわれは喉頭蓋が上気道を閉塞した2症例を経験した. 喉頭蓋が吸気時に後方へ傾いて咽頭後壁に接触する所見を認め, その後, 喉頭蓋が喉頭腔を塞いだため気管切開術が施行された. ALSの呼吸障害の原因として, 呼吸筋麻痺による呼吸障害のほかに上気道レベルでの閉塞も考えられ, 呼吸障害が出現したときには喉頭を内視鏡でよく観察する必要があると考えられた.
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