日本耳鼻咽喉科学会会報
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104 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 宇野 敦彦, 長井 美樹, 坂田 義治, 森脇 計博, 加藤 崇
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1119-1125
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1999年4月より2000年12月の1年9ヵ月間に市立吹田市民病院耳鼻咽喉科を受診しためまい症例1007例について, 市中病院におけるめまい症例の現状として, その疾患内訳を示した. 対象症例は, 良性発作性頭位めまい症 (BPPV), BPPV疑い, BPPV以外の末梢性前庭障害, 末梢前庭性以外の疾患, 未診断の5群に分類した場合, ほぼ20%ずつの頻度で等分された. BPPVは単一疾患として圧倒的に頻度が高く, 疑い例を含めると全体の約40%を占めた. その他の末梢性前庭障害では, メニエール病が最も多く, 疑い例を含めて全体の約8%であった. 市中病院ではめまい急性期の症例が多く, その鑑別が市中病院の重要な役割である. まず頻度の点からBPPV, BPPV以外の末梢性前庭障害, その他の疾患の順に鑑別診断を行うことが効率的と考えた. 急性期であればBPPVは誘発される眼振により診断され, 他の末梢性前庭障害についても眼振所見によって診断される率が高い. 一方で, 重症化する可能性のある脳血管障害・心循環器系障害等の鑑別も重要であり, まれでない. 急性期の鑑別で特に重要な脳出血・梗塞は対象症例の1.6%であった. 脳占拠性病変は1.2%であった.
  • 杉内 智子, 佐藤 紀代子, 浅野 公子, 杉尾 雄一郎, 寺島 啓子, 洲崎 春海
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1126-1134
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    軽度・中等度難聴児の現況を調査し, 問題とその背景について考察した.
    対象は補聴器外来にて聴覚管理を行ってきた軽度・中等度難聴児30人である.
    全体象例について, 難聴を疑った時期と診断の時期, 補聴器の装用開始時期, そして補聴器の使用状況を調査し, 24人に知能検査 (WISC-III) を行った. また, アンケートを用いて, 児の聴取状況および児の「きき返し」に関する母親の意識と対応について調査を行った.
    難聴を疑った時期は平均2歳10ヵ月と遅く, その診断は平均4歳2ヵ月, 補聴開始は平均5歳3ヵ月と, 難聴を疑いながらも診断, 補聴がさらに遅れる傾向があり, また補聴器を有効に活用できていないと考えられる児がみられた. WISC-IIIを行った24人のうち14人は, 言語性IQが動作性IQより15以上低く, 言語発達に遅れがみられた. これら言語発達の遅れと, 聴力レベル, 難聴の診断および補聴器開始時期との関連は見出せなかったが, その背景として, 定着していない補聴器装用状態と, 帰国子女, 両親がろうであるなどの言語環境, すなわち音声コミュニケーションの質と量の問題が関与していることが示唆された. また, 母親は児のきき取りの状態を気にかけてはいるものの, 児からの「きき返し」には“くり返す”以外, ストラテジースキルを導くような対応は少なく, 意識していても対処する術を知らないという現実がうかがえ, この傾向は言語発達に遅れのある群で顕著であった.
    小児難聴は早期発見が不可欠である. 同時に, とくに軽度・中等度難聴児においては, 聴覚障害を適正に認識, 受容できるような指導, 補聴の定着, そしてコミュニケーション指導が重要である.
  • 瀬尾 徹, 足達 亜貴子, 曽根 美恵子, 野出 美知子, 深澤 啓二郎, 阪上 雅史
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1135-1142
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 外リンパ瘻の手術適応についてはいまだ一定の見解がなく, 手術による治療成績についての報告も少ない. 本研究の目的は, その適応, 成績について明らかにすることである.
    (方法と対象) 1995年3月から1999年3月までの4年間に, 兵庫医科大学耳鼻咽喉科およびその関連病院において外科的に外リンパの漏出が確認された15例 (男性11例, 女性4例, 年齢分布: 14歳~79歳, 平均46.7歳) で, 患側は右3例, 左12例である. 術前と術後6カ月以上経過したのちの症状および聴力, 平衡機能検査所見について検討した.
    (結果) 全例に難聴を認めた. 耳鳴は12例 (流水音耳鳴は5例) に, pop音は4例に見られた. 回転性めまいは3例, 非回転性めまいは6例に認められた. 漏出部位は, 卵円窓が9例, 正円窓が4例, その両方が1例, fissula ante fenestramが1例であった. 術後の会話域聴力が10dB以上改善したものは10例 (67%) あった. 発症後14日以内に手術を行ったもの, 術前に聴力が残存していたものは, 聴力予後が良好であった. 術後のめまい感は軽減する傾向があったが, 術前にCP, 麻痺性眼振を認めたものは術後もふらつきが残ることが多かった.
    (結論) 外リンパ瘻の手術時期に関して, 聴力が保存的治療で改善の見られない場合やめまい感が存在する場合には14日以内に, また進行性難聴の場合は直ちに手術を実施すべきと考えられた.
  • 平木 信明, 藤吉 達也, 清水 隆, 宇高 毅, 吉田 雅文, 牧嶋 和見
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1143-1146
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    咀嚼筋間隙膿瘍の文献的報告は少なく, 発症病態の詳細はあまり知られていない. 著明な炎症所見を欠き5年の経過をたどった咀嚼筋間隙膿瘍症例に対して経上顎洞的に膿瘍腔を開放した. 画像上は腫瘍性病変に類似していた. 下顎臼歯部歯周炎から下顎骨硬化性骨髄炎を生じ, 炎症がさらに咬筋, 内・外側翼突筋, 側頭筋に沿って波及したことによって, 咬筋上部と側頭筋下部レベルの咀嚼筋間隙で膿瘍形成した病態と推察される. 文献的には本症の臨床像は多彩である. 各咀嚼筋への炎症波及様式の相違や隣接する間隙への炎症波及の有無, 慢性に経過する下顎骨骨髄炎の存在等が反映されるためと考えられる. CT, MRIによる病巣の評価のみならず, 下顎歯病変, 各咀嚼筋の炎症性肥厚所見, 下顎骨骨髄腔の消失やテクネシウム集積で示される骨髄炎の存在に着目することが, 本症の病態把握に重要である.
  • 松脇 由典, 中島 庸也, 飯田 誠, 野原 修, 春名 眞一, 森山 寛
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1147-1150
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    今回我々はペニシリウムおよびクラドスポリウムによるAllergic fungal sinusitis症例を経験したので報告する.
    症例は57歳の男性. (1) CT scanにて慢性副鼻腔炎の所見, (2) 既往症にスギ花粉症を3年前より発症, (3) ペニシリウム, クラドスポリウム皮膚反応試験陽性, (4) 同真菌の特異的IgE値上昇, (5) 総IgE値上昇, (6) 好酸球浸潤の著しい鼻ポリープ, (7) 細胞診にてアレルギー性ムチンの証明, (8) 細胞診にて真菌菌糸の証明, (9) 真菌培養にてペニシリウム, クラドスポリウム検出, などの診断基準を満たしペニシリウムおよびクラドスポリウムによるAFSと診断した. 治療は内視鏡下鼻内手術を施行. 術後4週目に鼻ポリープの再発をきたしたが, ステロイドの内服およびステロイドと抗真菌剤 (フルコナゾール) のネブライザー療法にて改善し有効であった. 病態の改善とともに, 総IgE値, 特異的IgE値の低下と末梢血好酸球数の減少を認めた. 抗原誘発テストを施行し, 即時相は陽性であった. IgE抗体を介するI型アレルギー反応がAFSの病態に関与していると考えた.
  • 西山 耕一郎, 廣瀬 肇, 井口 芳明, 山本 一博, 山中 盾, 鈴木 立俊, 平山 方俊, 岡本 牧人
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1151-1155
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    我々は声帯溝症に対し喉頭微細手術にて自家脂肪組織を粒状のまま採取し, 筋膜とともに萎縮した声帯内に移植する新しい手術法を考案し, 良好な結果を得たので報告した.
    外腹斜筋の浅層の脂肪組織をなるべく潰さないように注意して, 脂肪の粒状の塊を採取する. 耳後部より筋膜を同時に採取する. 溝状の変化を示す声帯のやや外側よりに切開を入れる. 声帯粘膜下剥離子にて粘膜固有層内を十分に剥離して, 移植片が入るようにポケットを作製する. 脂肪の塊を粘膜固有層内のポケットに挿入する. 脂肪がポケットから脱出するのを防止することを目的として, 筋膜を鼓膜形成術のアンダーレイのように挿入し, 切開部を縫合する.
    本手術を現在までに4例に施行した. GRBAS分類にて音質の改善が認められた. 特に気息性の音質が改善した. 音響分析検査においても術後の音質改善が確認された. 呼気流率と声域を術前と術後に検討したところ, 術後は呼気流率が減少し, 声域が拡大していた.
    脂肪組織を粒状に採取して移植することにより, 術後最長で15ヵ月経過しているが吸収はほとんど認められなかった.
  • 高齢者の頭頸部癌患者への対応
    福田 諭
    2001 年 104 巻 12 号 p. 1156-1159
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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