日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻 , 3 号
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  • 江浦 正郎
    2002 年 105 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    癌ワクチン療法とは, 癌細胞表面に発現している癌抗原に対する癌特異的免疫反応を惹起して, 癌細胞を排除することを意図した治療法である. 従来は, 癌細胞を外科的に摘出して放射線照射後に患者に戻してワクチンとして利用してきた. しかし, 1991年に癌細胞傷害性T細胞 (cytotoxic T lymphocyte; CTL) の認識する癌抗原が, 遺伝子レベルで同定されてから癌ワクチンは新たな時代に突入した. つまり, 解明された癌抗原を人工的に合成してこれをワクチンとして用いる方法が試みられるようになったのである. だが, この10年間に次々と新しい癌抗原が同定され, 臨床試験が行われているにもかかわらず, 悪性黒色腫以外では顕著な効果が得られていないのが現状である. この10年の問題点が解析された結果, 現在ではCTL (CD8陽性T細胞) の活性化と維持に重要な役割を担うヘルパーT細胞 (CD4陽性T細胞) を活性化する癌抗原 (HLAクラスIIと共に発現される癌抗原) の重要性が認識され, これをCTL活性化抗原 (HLAクラスIと共に発現される癌抗原) と一緒にワクチンとして投与する方法や, 優れた抗原提示細胞である樹状細胞をin vitroで誘導し癌抗原を負荷した後患者に戻す樹状細胞療法へと発展してきている. 頭頸部扁平上皮癌においてはいくつかの癌抗原の発現が確認されているが, CTL活性化抗原として優れた抗原はいまだ同定されていない. 今後, 頭頸部扁平上皮癌に効果的な癌抗原ワクチンの開発に重要と考えられるのは, 1. 頭頸部扁平上皮癌におけるCTL活性化に優れた癌抗原及びヘルパーT細胞活性化抗原の同定と至適投与量の決定. 2. いろいろなサブセットが存在する樹状細胞の中で, 最も効率的に特異的免疫反応を惹起する樹状細胞の解明とその利用方法の確立. 3. ワクチン投与の対象症例の選択基準の決定. の3点である.
  • 藤枝 重治, 杉本 千鶴, 伊藤 聡久, 木村 有一, 都築 秀明, 須長 寛, 関 瑞恵, 山本 英之, 井川 秀樹, 齋藤 等
    2002 年 105 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    癌に対する遺伝子治療によって, 効果的なアポトーシスを誘導することは, 極めて魅惑的なことである. われわれはその方法を樹立するため, アポトーシス関連因子の予後因子としての重要性を検討した後, 同定しえた因子を用いた遺伝子治療を試みた.
    1) 口腔・中咽頭癌においてアポトーシス関連の予後因子を免疫組織化学にて検討した. その結果, bax遺伝子発現は, ステージの進行につれ発現は減少し, 5年生存率はBax陽性群の方が有意に優れていた. 2) 三者併用療法を行った上顎癌においても同様の検討を行った. 治療前の状態では臨床相関は認められなかったが, 術前照射・抗癌剤動注後の本手術時点でbax遺伝子が発現してきた症例に再発例, 癌死症例は有意に少なかった. 以上よりbax遺伝子が予後因子であることが判明した. 3) 頭頸部扁平上皮癌細胞株にbax遺伝子を発現するベクターを導入すると, 耐性抗癌剤 (シスプラチン) に対する感受性が亢進した. 4) 癌を植え付けたマウスにbax遺伝子を遺伝子銃にて遺伝子導入し, シスプラチンを投与すると, シスプラチン耐性であった癌組織も成長しなかった. 無治療, 抗癌剤単独では癌は成長し, マウスは死亡した. 5) cad遺伝子を導入してもシスプラチンに対する感受性が亢進した. 6) マウス癌モデルにcad遺伝子を導入し, シスプラチンを投与すると, bax遺伝子導入同様に癌組織は成長しなかった.
    以上の結果より, 口腔・中咽頭・上顎癌に対してbax遺伝子やcad遺伝子を導入し, 抗癌剤を併用すると癌の縮小効果が期待できる. ハイリスクグループ (進行癌) に手術終了時に遺伝子治療を行い, 術後照射や抗癌剤投与を行うと予後の向上に結びつくと思われる.
  • 中村 昭彦, 浅井 忠雄, 吉田 博一, 馬場 廣太郎, 中江 公裕
    2002 年 105 巻 3 号 p. 215-224
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎に関する全国疫学調査を行った. 全国の耳鼻咽喉科医師9471名およびその家族を対象とし, 1998年6月にアレルギー性鼻炎に関する質問用紙を郵送し, 同年9月末日までに回収した. 回収率は42.8%で, 17301名が対象になった. 年齢構成を日本人人口ものと比較すると調査対象者は20歳代がやや多く, 60歳以上特に男性に多い以外ほとんど差異はみられなかった.
    スギ花粉症の有症率は, 人口分布調整を行ったところ17.3%であった. 全体に日本海側, 瀬戸内地方に比べ太平洋側, 中部地方に高く, 高緯度あるいは低緯度地域で有症率は低かった. 年齢層別有症率をみると, 10歳代で急激に増加し60歳代になると低下した. スギ花粉飛散が多い地域で有症率が高く, 住環境に関しては郊外, 住宅地, 都会の順で高かった.
    スギ以外の花粉症についても同様に検討した. 年齢層別有症率および住環境と有症率との関係は, スギ花粉症とほぼ同様の結果で, 人口分布調整後の有症率は11.7%であった.
    通年性アレルギー性鼻炎の人口分布調整後の有症率は19.8%で, スギ花粉症に比べやや高率であった. 年齢層別有症率は, 5~9歳で急激な上昇がみられ, スギ花粉より若年者での発症が多く, 60歳以降での有症率の低下はみられなかった. スギ花粉症と異なり, 地域や住環境による有症率の差異はみられなかった.
    今回の調査は全国に住居する耳鼻咽喉科医師およびその家族を対象としており, スギ花粉症はもとより通年性アレルギー性鼻炎の地域による有症率の差異を知ることができた. また回収率も他のアンケート調査より優れており, 回答内容の信用度も高いため, 日本全国のスギを主としたアレルギー性鼻炎に関する疫学的調査として有用なものと思われた.
  • 水越 鉄理, 渡辺 行雄, 將積 日出夫, 麻生 伸, 浅井 正嗣, 犬飼 賢也, 高橋 姿
    2002 年 105 巻 3 号 p. 225-231
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1965年新潟阿賀野川地区に発生したメチル水銀中毒症は新潟水俣病として, 熊本の水俣病とともに公害病に認定され, 神経耳科学的に長期にわたって追跡調査されてきた.
    今回, 私共はこれらの新潟水俣病と認定された患者の中, 申請時 (1968-78) から2回以上の追跡調査 (1980-1987, 1991-2000) がなされた症例36例を中心に, 神経耳科学的にその長期の推移を検討し得たので, その大要を報告した.
    1) 神経耳科学的に, 聴力の悪化は高齢化の影響も見られるが, 比較的軽度 (33%, 72耳中24耳) であった. 2) 平衡機能障害では自発眼振 (注視眼振), 温度眼振反応, 視運動性眼振の増悪が著明 (36%, 47%, 44%) であった. 3) 体平衡障害の増悪は比較的軽度 (28%) であった.
    以上の追跡所見は個人差が著しく, 中毒症の増悪, 長期化に伴う所見か高齢化の影響による所見かについては不明であった.
  • 瀬野 悟史, 嶽 良博, 硲田 猛真, 齊藤 優子, 池田 浩己, 北野 博也, 北嶋 和智, 榎本 雅夫
    2002 年 105 巻 3 号 p. 232-239
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    近年花粉症の治療として, 従来のメディカルケアに加えてセルフケアの重要性が認識されてきている. 飛散花粉観測より得られる情報は, セルフケアに重要であるが, 特にリアルタイムの花粉情報はよりきめ細やかなセルフケアに役立つ可能性がある. リアルタイム花粉モニターは, リアルタイムの飛散花粉情報が得られること, 簡便に飛散花粉数を測定することができることから今後普及していくと考えられる. 今回このリアルタイム花粉モニター (KH-3000) の精度などについて検討した. 和歌山市において, 2001年2月2日から4月26日までに観測された飛散花粉を対象とし, ダーラム型花粉捕集器とリアルタイム花粉モニターの結果について比較検討を行った. スギ花粉飛散のピークとなる3月のスギ花粉の相関係数はr=0.69, ヒノキ科花粉飛散のピークとなる4月のヒノキ科花粉の相関係数はr=0.89であり, 良好な相関関係が認められた. しかし, リアルタイム花粉モニターの結果には, 花粉ではないピークも認められた. 検討の結果その原因は雪やそれ以外の可能性が考えられた. 現在本機器に, 改良品として雪対策も行われており, スギ・ヒノキ科花粉のリアルタイム測定には, 本モニターが有用であると考えられた.
  • 廣島屋 孝
    2002 年 105 巻 3 号 p. 240-248
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    加齢に伴い生じる味覚機能低下との関係を解明する一手段としてエブネル腺に注目し, 加齢に伴う同腺の変化を3次元解析法にて検討した.
    剖検例の舌の有郭乳頭の部位で検体を採取した. 検体をアルコール脱水, パラフィン包埋したのち100μmごとに5μmの薄切切片標本を作製した. 染色はヘマトキシリン, エオジン染色法で行った. 作製した標本を白黒撮影し, これを拡大焼き付けし, 有郭乳頭, 上皮, エブネル腺の3組織をOHPシートにトレースし, それぞれの情報をコンピュータに入力し, Cosmozone 2SA 3次元解析ソフトおよびI-BASone画像解析システムを用いエブネル腺体積および腺房細胞占有率を測定した.
    対象は30歳代, 40歳代, 50歳代, 60歳代, 70歳代, 80歳代の各年齢毎に男性各5例, 女性各5例の計60例について検討した.
    エブネル腺の体積の平均値は30歳代, 40歳代, 50歳代, 60歳代, 70歳代, 80歳代の各群でそれぞれ67.0mm3, 64.6mm3, 59.8mm3, 39.2mm3, 33.9mm3, 30.4mm3であった. 統計処理の結果, 年齢の要因が危険率1%で有意となった. 腺房細胞占有率と年齢は負の相関を示し加齢と共に腺房細胞占有率が減少することがいえた (相関係数: 男性-0.858, 女性-0.838). エブネル腺の腺房細胞の推定体積と年齢は負の相関を示し加齢と共に腺房細胞の推定体積は減少することがいえた (相関係数: 男性-0.929, 女性-0.854).
    加齢変化に伴って生じる味覚機能低下へエブネル腺が間接的に関与していると考察した.
  • 石井 香澄, 荒牧 元, 新井 寧子, 内村 加奈子, 岡部 邦彦, 西田 素子, 余田 敬子
    2002 年 105 巻 3 号 p. 249-256
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    <目的> 扁桃周囲膿瘍は副咽頭間隙に近接しており, 種々の合併症を生じ得るため早急な対応を要する. 副咽頭間隙の内側には内頸動脈が走行しており, 処置の際に血管損傷など副損傷を併発する可能性がある. そこで迅速かつ適切に対応するため, 扁桃周囲膿瘍例のCT像から, 膿瘍と副咽頭間隙の主要臓器の位置関係を計測し, 処置の際の安全範囲を検討した.
    <対象・方法> 1997年2月から1999年4月までの期間, 当科で初診時に造影CT scanを施行し, 扁桃周囲膿瘍と診断された31例を対象とした. 平均年齢は30.7歳 (12~54歳), 男性19例, 女性12例で, 患側は右側20例, 左側11例であった. フィルムから膿瘍および副咽頭間隙内の主要臓器である頸動静脈と神経系を含む軟部組織辺縁の位置を, 診療時に指標となり得る門歯正中矢状断および上歯槽後端を基準に距離および角度として計測した.
    <結果> 副咽頭間隙内の主要臓器の内側縁は門歯正中から15±2°, 正中矢状断からは扁桃上極で24±4mm, 下極で23±3mm外側にあった. 前縁の深さは上歯槽後端から29±5mm後方の位置にあった. 間隙内側に位置する内頸動脈は上歯槽後端を含む矢状断上にあった. 正中と間隙との角度および距離は患側, 健側ともに上極とほぼ同様の計測値で, 有意差は認められなかった. 咽頭粘膜を含めた膿瘍前壁および扁桃周囲膿瘍後壁から, 間隙前縁までの距離は各々31±5mmおよび9±4mmであった. 全例で膿瘍の中心は, 門歯正中と内頸動脈を結ぶ直線より内側に位置していた.
    <結論> 副咽頭間隙の位置を想定する際, 上歯槽後端と正中矢状断との関係が参考となる. 上歯槽後端の矢状断に副咽頭間隙内側 (内頸動脈) が位置するため, 穿刺・切開の際, 極力穿刺点から矢状方向に進み, 穿刺深は20mm以内とし, 方向は穿刺端が上歯槽後端の矢状断より内側に留めると, 血管損傷を回避した有効な処置が可能と考えられた.
  • 末武 光子
    2002 年 105 巻 3 号 p. 258-261
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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