Transferrinとは鉄と結合能を有する*-globulinのひとつで,生体における鉄の代謝に関連する糖蛋白である.生物学的機能としては,鉄の輸送と,不飽和Transferrinの細菌発青抑制作用などがあり,炎症と深い関係があるといわれ,また,鼻汁中には番種の血清蛋白がみられるが,ことYcTrans-ferrinは,顕蓍に出現するともいわれている.
そこで,Transferrinの動態と炎症との関係を明らかにするため,Dis電気泳動法により,慢性副鼻腔炎患者鼻汁中のTransferrinの定量をおこなつた.
対照として,鼻アレルギー患者鼻汁を用いた.さらに,螢光抗体法を用いて,慢性副鼻腔炎の上顎洞粘膜におけるTransferrinの分布を観察した.
1)慢性副鼻腔炎鼻汁のnasal washing lml中の平均総蛋白量はv.1314mg,Transferrinは7.8%(0.00946mg)で,鼻アレルギーでは,平均総蛋白墨0.0411mgでTransferrinは4.4%(0.001808mg)であつた.両者を比較すると慢性副鼻腔炎では鼻アレルギーに比べて,総蛋白量とTransferrin量の増加がみられた.その増加の割合は,Transferrinのほうが著名であり,Transferrinの選択的増加を思わせた.
2)慢性副鼻腔炎上顎洞粘膜におけるTransferrinの螢光陽性部位は,浸潤細胞であるリンパ球,ないしは,形質細胞の細胞質であり,ヒ皮層,血管周囲,腺腔周囲などにはみられなかつた.螢光院性部位の同定には,ヘマトキシリン•エオジン重染色をおこなつて対比した.以上のことから,慢性副鼻腔炎鼻汁中に,Transferrinが選択的に増加しているということは,単に,
血管壁を介しての物理的透過というものではなくて,リンパ球系の細胞が重要な役割を果していることが想像された,しかし,これらの細胞が,Transferrinをa.R成しているのか,単なる運び手であるのか,現在のところ明らかではないが,Transferrinの合成が肝組織や,網内系組織(リンパ節,牌臓,骨髄)でおこなわれているという,過去の業績を参照するとぎ,炎症局所におけるTransferrinの動態は,密接にこれらの細胞と関連があり,炎症に対する防禦機構の一翼をになつているものと思われる.
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