ヒト正常甲状腺14例, バセドウ病2例, 濾胞腺腫4例, 乳頭癌8例をコラーゲン・ゲル内培養を行い細胞の形態とその母腫瘍の病理組織および被膜外浸潤, 転移能について比較検討を行った. 以前に報告したように, 非悪性病変であるヒト正常甲状腺, バセドウ病, 濾胞腺腫 (1例を除き) は, それぞれ特異的な樹枝状型コロニーのみを認めた. 他方, 悪性病変である乳頭癌では樹枝状型コロニーの他に球状型コロニーが認められ, 両コロニーの百分率を症例ごとにみると, 乳頭癌の各症例ごとに球状型コロニーの占有率は異なった. しかも, その症例の母腫瘍, 特に被膜外浸潤, リンパ節転移のある症例において球状型コロニーが優位を占める傾向にあることが分かった. このことによりヒト甲状腺乳頭癌細胞をコラーゲン・ゲル内で培養することにより出現したコロニーの形態から低分化細胞をin vitroにて判定できる可能性があることを示唆した.
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