日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 7 号
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原著
  • 古川 まどか, 久保田 彰, 花村 英明, 古川 政樹
    2007 年 110 巻 7 号 p. 503-505
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    Real-time Tissue Elastography (Elastography) は, 組織弾性を客観的に表示できる超音波断層法の新しい手法である. 今回, 頭頸部癌頸部リンパ節転移診断および治療効果判定の評価におけるElastographyの有用性について検討した. 転移陽性リンパ節は歪みが少ない硬い腫瘤として描出される傾向がみられた. 放射線治療や化学療法によって転移リンパ節が歪みやすくなり軟らかく変化することが確認できた. 頸部リンパ節転移診断において新しい診断法であるElastographyの有用性と可能性が示唆された.
  • 田川 崇正, 冨田 俊樹, 山口 寛, 小澤 宏之, 坂本 耕二, 小川 郁, 藤井 正人
    2007 年 110 巻 7 号 p. 506-512
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1989年より2005年までに当科で治療した原発不明頸部転移癌28症例 (男性20例, 女性8例) の病変部位, N分類, 病理組織型, 治療方法, 原発腫瘍, 予後について検討した. 組織型診断方法は11例が開放生検, 17例が非開放生検であった. 原発腫瘍検索として鼻咽腔・喉頭ファイバースコピーおよび頸部CT (あるいはMRI) を全例に施行した. 全身麻酔下の盲目的生検を10例で行い, 1例で上咽頭腫瘍が診断された. 診断的口蓋扁桃摘出術は施行しなかった. 最大転移リンパ節の占拠部位は上頸部 (上・中内深頸部, 顎下部) で22例 (79%) を占めた. N分類はすべてN2以上でN2が21例, N3が7例であった. 組織型は扁平上皮癌が21例, 腺癌が3例, 粘表皮癌が2例, 未分化癌, 移行上皮癌が各1例であった. 治療法は頸部郭清術単独が7例, 頸部郭清術と術後照射が13例, 放射線療法主体が8例であった. N2b以上で術後照射が加えられることが多かった. 放射線療法群は全例で手術不能と判断されていた. 原発腫瘍は7例で判明し, 部位は口蓋扁桃が3例, 上歯肉, 舌根, 肺, 上咽頭が各1例であった. FDG-PETを7例で施行したが, 原発腫瘍診断に寄与しなかった. 累積5年生存率は46%で, これまでの諸家の報告と同程度であった. 術後照射施行群では1次治療後の原発腫瘍判明が少なく, 原発腫瘍制御に有用と考えられた. 頭頸部領域の原発腫瘍として特に口蓋扁桃腫瘍に注意すべきであると考えられた.
  • 石田 英一, 香取 幸夫, 渡邊 健一, 矢野 寿一, 大島 英敏, 川瀬 哲明, 小林 俊光
    2007 年 110 巻 7 号 p. 513-519
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    急性喉頭蓋炎は急激な気道狭窄により致命的となりうる疾患であり, 迅速かつ的確な診断と治療が必要である. 今回, われわれは当院にて入院加療を行った急性喉頭蓋炎症例の臨床像を特に気道確保を要した症例を中心に検討し, 文献的考察を加えた. 過去6年間に東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科に入院した急性喉頭蓋炎症例71例を対象とし, 診療録から 1) 年齢・性差, 2) 発症月, 3) 症状, 4) 喫煙歴, 5) 糖尿病既往, 6) 誘因・背景, 7) 初診施設, 8) 症状出現から来院までの日数, 9) 中咽頭所見, 10) 喉頭内視鏡所見, 11) 咽頭培養結果, 12) 入院後の増悪の有無について検討を行った. その結果, 入院後, 加療を行ってもなお喉頭蓋や披裂部の腫脹の増悪が見られた症例が2例あり, 入院時所見が軽度でも増悪する可能性を念頭においた対応が必要であることが確認された. また, 緊急気道確保を要した症例は5例 (気管切開3例, 気管内挿管2例) あり, 強い喉頭腫脹, 呼吸困難, SpO2低下のある例では入院直後より緊急気道確保の準備をしておくことが肝要と考えられた.
  • ―典型例と非典型例の比較―
    今村 俊一, 本田 英幸, 宮田 政則, 水越 昭仁, 増山 敬祐
    2007 年 110 巻 7 号 p. 520-526
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    急性低音障害型感音難聴 (Acute low tone sensorineural hearing loss : ALHL) に関する認識は臨床医の間で定着し, 聴力障害が軽度であり, その予後も比較的良好であることが知られている. 一方聴力障害の再発に加えメニエール病に移行する症例の存在も報告されている.
    当科およびその関連病院でALHLと診断加療された357症例についてその臨床経過を中心に検討した. 今回の集計の中には, 高音部に生理的と思われる聴力障害を持つ非典型例45症例が含まれている. 経過中に聴力レベルの悪化もしくは再発を繰り返した “予後不良例” は49症例あり, このうち最終的に中高音域にまで及ぶ聴力レベルの低下を認めた症例が両側低下1例を含む8例存在した.
    めまい発作を併発した症例が17症例, めまい発作を反復し種々の平衡機能検査などからメニエール病と診断された症例が8症例あった. これは “予後不良例” の中のそれぞれ34.7%および16.3%にあたる. 聴力障害の再発をみた症例では, めまい発作を併発しメニエール病に移行する症例がより高率であることが確認された.
    ALHLと診断される症例の中には, 再発, 悪化をする症例が混在する可能性があり, 一旦聴力の改善が得られた症例でも慎重な経過観察が必要と考える. 今回の集計結果では特に高齢者や非典型例, 両側例に予後不良例の比率が高く, これらの症例では慎重な経過観察が必要と思われた. 一般的に予後良好とされる本症のなかに, 再発により重篤な聴力障害を残す進行性難聴となる症例やメニエール病へ移行する症例が混在することをあらためて認識し, 本症の初期の取り扱いに対し, これらの可能性を十分考慮し, 安易な取り扱いは注意するべきだと考える.
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