日本耳鼻咽喉科学会会報
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120 巻 , 10 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
総説
  • 曾根 三千彦
    2017 年 120 巻 10 号 p. 1219-1223
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

     画像検査の進歩は目覚ましく, 以前のMRI検査では感音難聴例を中心に小脳橋角部の検索が主な対象であったが, 現在では中・内耳疾患の病態把握にも有用な手段となっている. 中耳真珠腫の診断は外耳道の骨欠損と同部のdebrisが確認されれば容易であるが, 局所所見が正常でCT上も骨破壊を伴わない場合にはMRI拡散強調画像 (diffusion weighted image: DWI) が有用である. 最近の non echo planar 法では明瞭な画像が得られるようになってきており, 術前の真珠腫進展範囲把握や術後再発のフォローアップにもその有用性が報告されている. 一方, FLAIR (fluid-attenuated inversion recovery) MRI画像はさまざまな炎症に伴う内耳障害の評価に役立つ. FLAIR画像では, T1強調画像に比べて内耳のリンパの変化を鋭敏に捉えることが可能であり, 3D情報により脳脊髄液によるアーチファクトの影響を減少させ明瞭な所見を得ることができる. FLAIR造影で見られる高信号は, blood-labyrinth barrier (血液迷路関門) の破綻を示す所見を反映し, 急性中耳炎や内耳瘻孔を伴った中耳真珠腫の対応, ANCA関連血管炎性中耳炎による内耳障害を把握する手段としても応用可能である. 最近のMRI検査の画期的な利用法としては, 内リンパ水腫評価が挙げられる. 技術進歩により, 現在では造影剤静注4時間後のMRIでも内リンパ水腫の存在が鮮明に描出できるようになった. 内リンパ水腫は, メニエール病以外にもさまざまな耳症状や耳疾患で確認されている. 一側性メニエール病例においては, 全く無症状の健側耳にも内リンパ水腫が認められており, MRI評価は疾患の進行予測や予防の観点からも有用である. さらにMRI評価により聴力低下に伴う脳容積の萎縮も示唆されており, 聴覚補償による認知機能の低下予防も期待される.

  • 工田 昌也
    2017 年 120 巻 10 号 p. 1224-1230
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

     めまいの診療では, 最近のテクノロジーの進歩に伴い新しい検査・解釈が生まれ, それを基にした新しい疾患・概念が提唱され, 新しい治療法が出現してきた. 本稿では, 新しい検査として, 末梢前庭器機能検査であるVEMP (Vestibular Evoked Myogenic Potential) で卵形嚢, 球形嚢, vHIT (video Head Impulse Test) で前・外側・後半規管の機能検査が可能となったことから, これらの検査の意義, 検査法, 注意点などについて解説した. 新しい疾患では, 良性発作性頭位めまい症 (BPPV), 中でも外側半規管型BPPVの分類, ライトクプラの診断, 患側の決定, 治療法について解説した. 片頭痛関連めまいでは, 診断はほぼ問診で行えることから, その診断治療について, 心因性めまいでは, 疾患概念, 診断には頭振り眼振検査, ラバー負荷重心動揺検査が役立つこと, HADS, DHIなどの心理テストの活用法, 具体的な治療等を解説した. 最後に古くて新しい問題として末梢性めまいと中枢性めまいの鑑別について, 問診, 特徴的な眼振所見, HINTSの活用法について解説を行った.

原著
  • 平井 崇士, 花本 敦, 鈴木 基之, 武本 憲彦, 道場 隆博, 猪原 秀典
    2017 年 120 巻 10 号 p. 1231-1238
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

     甲状腺癌に対する治療は外科的切除が基本であり, 補助療法として放射性ヨード内用療法, 甲状腺刺激ホルモン抑制療法が標準的な治療として行われてきた. 近年, 甲状腺癌に有効な分子標的薬であるTyrosine kinase inhibitor (以下TKI) が開発され, 2014年にはsorafenibが2015年にはlenvatinibが日本において根治切除不能な甲状腺癌に対して保険適応となった. 

     われわれは当科において2014年11月から2017年1月までにTKIの投与を行った13症例に関して検討を行った. 対象は分化型甲状腺癌が 9 例, 未分化癌が 4 例であった. 分化型甲状腺癌 9 例のうち, 1st lineとして 8 例にsorafenibを, 1例にlenvatinibを投与した. 1st lineとしてsorafenibを投与した 8 例の中で中止となった 4 例に2nd lineとしてlenvatinibを投与した. 未分化癌 4 例に対しては全例lenvatinibの投与を行った. Sorafenibの部分奏効は 2 例, lenvatinibの部分奏効は 8 例であり, 完全奏効症例はなかった. Sorafenib投与の有害事象は全Gradeでは高血圧が 4 例, 手足症候群, 疲労, 下痢, 脱毛が 3 例であった. Lenvatinibの有害事象は全Gradeでは高血圧が 6 例, 手足症候群が 5 例, 蛋白尿が 4 例, 疲労が 3 例で認められた.

  • 渡邊 毅, 浜田 久之, 長谷 敦子, 金子 賢一, 髙橋 晴雄
    2017 年 120 巻 10 号 p. 1239-1245
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

     日本では2004年に初期臨床研修が必修化されて10余年が経過した. 耳鼻咽喉科は初期研修医にとっての必修科目ではなく, 現在の初期研修医の多くは耳鼻咽喉科で学ぶことができる疾患および症候を経験せずに初期研修を終了している.

     当院では初期臨床研修の充実を図るために初期研修医全員に耳鼻咽喉科外来研修を導入している. この研修が厚生労働省による医師臨床研修到達目標に掲げられている症候の経験率に与える効果を検討した. 2012年度から2014年度までの当院初期研修医163名に対して質問紙調査を行い, 本研修導入前後で比較した. 調査の結果, 鼻出血・嗄声などの耳鼻咽喉科特有の症候の経験率が向上し, めまいなどのいわゆる “Common Disease” の経験率も向上した. 感想として『範囲が狭い科と思っていたが, 臨床守備範囲が広いと思った.』や, 『耳鼻咽喉科という科に興味を持つことができた.』といった意見もみられた.

     耳鼻咽喉科外来研修を組み込むことで初期研修医の臨床能力の向上に繋がり, さらに耳鼻咽喉科自体への興味, ひいては将来における耳鼻咽喉科医師の確保に繋がる可能性があると考えられた.

  • 松本 珠美, 中村 善久, 鈴木 元彦, 谷川 元紀, 間瀬 光人, 村上 信五
    2017 年 120 巻 10 号 p. 1246-1250
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

     骨巨細胞腫は, 整形外科領域に多い良性腫瘍であるが, 周囲組織を破壊する急激な増殖や, 肺転移を起こすなど悪性腫瘍に類した臨床所見を呈する治療の困難な疾患である. 今回われわれは, 頭部外傷にて撮影したCTにて偶発的に発見された蝶形骨洞骨巨細胞腫を経験した. 診断を目的に当科で生検を行い, 診断確定後に脳神経外科と合同で第 1 回目の内視鏡下経鼻蝶形骨洞到達法腫瘍摘出手術を行った. 術後経過観察中に腫瘍の急速増大傾向を認めたため, 再手術にて腫瘍を減量し, 分子標的薬であるデノスマブを投与し, その後良好なコントロールを得た. 近年開発や使用報告が増加している分子標的薬について若干の文献的検索を加え報告する.

  • 渡辺 哲生, 梅本 真吾, 鈴木 正志
    2017 年 120 巻 10 号 p. 1251-1255
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

     比較的まれな中咽頭紡錘細胞癌症例を経験したので報告する. 症例は59歳の男性. 1 カ月前から続く咽喉頭違和感を主訴に受診した. 舌根部左側に表面白色調の有茎性腫瘤を認め, 生検の結果, 紡錘細胞癌疑い, 孤立性線維性腫瘍の可能性ありと診断された. 喉頭直達鏡下に腫瘍摘出術を施行し, 病理組織検査の結果, 紡錘細胞癌の診断が確定した. 切除断端に異型上皮が認められたため, 術後放射線治療50Gy, 化学療法を行い, 5 年以上経過した現在まで再発や転移は認めていない. 摘出標本でp16が陽性であったのは扁平上皮癌細胞の50%であり, ヒト乳頭腫ウイルスが発症に関係している可能性は否定的であった.

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