日本耳鼻咽喉科学会会報
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111 巻, 2 号
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総説
  • —嗅神経細胞の再生医療—
    丹生 健一, 土井 清司, 越智 尚樹, 西川 匡
    2008 年 111 巻 2 号 p. 45-49
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/01
    ジャーナル フリー
    嗅神経細胞は元来,「生涯にわたって再生を繰り返す」という神経細胞としては極めてユニークな性質を持っており, 再生医療の実現性が高いと期待される. 嗅上皮には様々なサイトカイン受容体が発現しており, 嗅神経細胞の再生あるいは生命維持にこれらのサイトカインが必要であると考えられている. 既に神経栄養因子であるNGFやBDNF遺伝子の鼻腔投与による嗅神経細胞のアポトーシス抑制効果がマウスにおいて報告されているが, 著者らは維芽細胞成長因子bFGFの鼻腔投与により, 特に高齢のマウスにおいて基底細胞の増殖を有意に促すことを見出した. アデノウイルスは様々な分野において遺伝子導入に利用されている優れた遺伝子導入ベクターである. 著者らはアデノウイルスベクターを鼻腔に投与することにより, ベクターに組み込んだ遺伝子の産物が嗅神経細胞において産生され, 軸索を通じて嗅覚の一次中枢である嗅球まで運ばれることを示し, アデノウイルスベクターが嗅神経細胞へのみならず嗅球へのドラッグデリバリーシステムとしても有用であることを報告した. 更にbcl-2遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターをマウス嗅上皮障害モデルの鼻腔に投与しbcl-2遺伝子が嗅神経細胞のアポトーシスを抑制する可能性を示した. 骨髄内にある血球以外の細胞群「骨髄間質細胞」の中には, 様々な細胞へと分化する能力を持つ「骨髄間質幹細胞」があることが明らかとなり, 自己組織による再生医療の材料として最近大きな注目を浴びている. 著者らは骨髄間質幹細胞を尾静脈から投与し, 移植した骨髄間質幹細胞が嗅上皮内に生着し神経系細胞へ分化することを確認した.
原著
  • —当科手術例における術式および治療成績の検討—
    小島 博己, 田中 康広, 谷口 雄一郎, 宮崎 日出海, 村上 信五, 森山 寛
    2008 年 111 巻 2 号 p. 50-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/01
    ジャーナル フリー
    当科で手術を行った錐体部真珠腫症例9例9耳について臨床症状と手術法, 手術成績などを検討した. 難聴を契機に受診するものが多く, 顔面神経麻痺や耳漏を呈したものがそれに続いた. 先天性真珠腫と診断された症例は4例で, 後天性真珠腫が1例, 術後再発が3例, その他が1例であり, 先天性真珠腫の占める割合が従来の報告より多かった. 進展範囲からの分類では広範迷路型が7耳, 迷路上型が2耳であった. 聴力保存術式である経中頭蓋窩法または経上半規管法は9例中4耳に施行され, 聴力保存の成績は良好であった. これらの結果から症例によっては積極的に聴力を保存すべきであると考えられた.
  • —内視鏡下副鼻腔手術における予後因子として—
    出島 健司, 足立 直子, 大嶋 章裕, 西村 泰彦, 牛嶋 千久, 内田 真哉, 濱 雄光, 久 育男
    2008 年 111 巻 2 号 p. 58-64
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/01
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎は, 内視鏡下鼻内手術 (Endoscopic Sinus Surgery, 以下ESSと略) とマクロライド療法の登場でその治療成績が飛躍的に進歩した. しかし, 今なお治療に抵抗する症例も少なくなく難治性副鼻腔炎と呼ばれている. 近年, 好酸球性副鼻腔炎という概念が浸透し, この副鼻腔粘膜に浸潤する好酸球が難治性を解明するために重要であるという考え方がある. 一方, 気管支喘息が合併する副鼻腔炎はその術後成績が不良であるとする報告は国内外で多数見られ, これも難治性を解明する主要因子の一つである. 今回われわれは, 京都府立医科大学および京都第二赤十字病院耳鼻咽喉科で慢性副鼻腔炎に対してESSを施行した180例に対して, その術後成績を検討した. 症例を好酸球浸潤が多いか否かと気管支喘息合併の有無で分け, この4群で比較検討した. その結果, 最もESS術後成績が不良であったのは, 好酸球浸潤が多く気管支喘息を合併した群であった. 一方, 気管支喘息が合併していない症例群では, 好酸球浸潤中の多寡による予後の差はなく, 概ね良好であることが明らかとなった. 好酸球浸潤が多い副鼻腔炎では, その成績は気管支喘息の合併の有無に大きく左右されることがわかった. 気管支喘息の合併が難治性の解明に向けて最も重要な予後因子であると考えられた.
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