日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
102 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 渡辺 哲生, 一宮 一成, 鈴木 正志, 茂木 五郎
    1999 年 102 巻 10 号 p. 1169-1174
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    当科にて昭和56年10月より平成10年3月まで加療した両側性耳下腺腫瘍について検討した. 同時期に加療した耳下腺腫瘍は, 良性腫瘍が172例, 悪性腫瘍が40例で計212例であった.
    両側性耳下腺腫瘍は13例にみられた. 平成4年以降は年1例以上みられ, 増加する傾向にあった. 組織学的には腺リンパ腫が11例, 多形腺腫, 基底細胞腺腫が各1例で, 両側性耳下腺腫瘍の85%が腺リンパ腫で, 全腺リンパ腫の20%が両側性であった. 1例は異時性であった. また手術後両側に再発したものが1例あった. 13例中7例は初診時の触診では一側の腫瘍を触知せず, 後の画像検査の結果, 両側性であることが判明した.
    両側性と一側性腺リンパ腫を比較すると, 年齢, 性別には有意差はみられなかった. 両側性では両側孤発が4例, 一側孤発他側多発が4例, 両側多発が4例であったのに対して一側性では孤発が38例, 多発が4例と両側性腫瘍で多発する傾向がみられた. in situ hybridization法によるEBERの検出では両側性は12例中11例, 片側性では35例中18例で検出され, 一側性症例の中でも多発性症例ではより高頻度に検出された.
    今回の検討から, 両側性耳下腺腫瘍は決してまれではなく, 特に腺リンパ腫が疑われる場合, 反対側の耳下腺についても画像所見に注意する必要がある. また, 腺リンパ腫の多発性にEBウイルスが関与している可能性が示された.
  • 深澤 啓二郎, 藤井 恵美, 友藤 誠一, 小笠原 寛, 瀬尾 達, 阪上 雅史
    1999 年 102 巻 10 号 p. 1175-1183
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    嗅覚障害患者に対し, ステロイド懸濁液局所注入療法を行った. 鼻中隔粘膜 (粘膜固有層) へ注入するもので各鼻腔内へ1回4mgのデキサメタゾンを2週間毎に原則として8回注入した. 平均総注入量は58.4mgであった. メコバラミン, ATP製剤の内服投与も併用した. 対象となった嗅覚障害の原因は, 手術対象例でない慢性副鼻腔炎32例, 感冒罹患後24例, 鼻アレルギー14例, 頭部外傷後9例, 原因不明23例であった. VASによる自覚症状の有効率は63.7% (102例中65例) であった. 治療成績をT&Tオルファクトメータで検討したところ, 全般治療成績で平均検知域値4.75±1.44から3.01±2.13へ, 平均認知域値5.30±0.88が4.19±1.60へと有意に改善した. 慢性副鼻腔炎, 感冒罹患後, 鼻アレルギー, 原因不明例もそれぞれ有意な改善を示したが, 頭部外傷例は有意な改善を示さなかった. 平均認知域値で検討した有効率は全般で43.1% (102例中44例) であった. 原因別では慢性副鼻腔炎例で46.9% (15例), 感冒罹患後例で50.0% (12例), アレルギー性鼻炎例50.0% (7例), 頭部外傷後例22.2% (2例), 原因不明例47.8% (11例) であった. 嗅覚障害の重症度と治療成績の関係では, 軽度, 中等症例が高度, 脱失例より良好であった. 静脈性嗅覚検査無反応例は反応の見られる症例に比較して治療成績は不良であった. 嗅粘膜所見正常で静脈性嗅覚検査無反応例でも27.6%の有効率を認め, 嗅神経周囲の浮腫が障害の原因であることが考えられた. 嗅覚障害発症から治療開始までの期間で1年以内に治療を開始できた例の治療成績が良かった.
    従来行われているステロイド点鼻療法と比べても遜色のない治療成績であり, 耳鼻咽喉科医が行いうる新しい治療法として有用であった.
  • 藤村 和伸, 吉田 雅文, 森 貴稔, 牧嶋 和見
    1999 年 102 巻 10 号 p. 1184-1189
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    サリチル酸塩は可逆性の聴覚域値上昇を生じ, 単離外有毛細胞を使用した実験では電位依存性運動能を低下させることが知られている. しかし, 生体内における聴覚域値上昇の機序に関しては不明の点も多い. 一方, 蝸牛を交流電流にて刺激すると, 蝸牛外有毛細胞の電位依存性運動能に起因すると考えられる音響現象を外耳道で記録することができ, 生体内における蝸牛電気機械変換を観察する有用な指標となることが示唆されている. そこで, サリチル酸塩の外有毛細胞運動能に対する生体内における影響について検討するため, サリチル酸ナトリウム500mg/kgをモルモットに静脈内投与し, その前後で正円窓を電気刺激して誘発される耳音響放射を観察した. その結果, 同じ電極より誘導した蝸牛神経複合活動電位 (CAP) は13~22dBの高音漸傾型の域値上昇を示し, 電気刺激による耳音響放射の出力は5kHz刺激で約4dB, 8kHzでは約12dB減少した. サリチル酸塩は, 生体内においても外有毛細胞の運動能を低下させ, 聴覚域値の上昇を起こしているものと考えられた.
  • 小形 章, 鈴木 理文, 田中 一仁, 大場 俊彦, 新田 清一, Taku Yamashita
    1999 年 102 巻 10 号 p. 1190-1197
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    昭和56年に当院癌検診センターが開設し, 昭和59年からは電話音声による嗄声分析システムを補助診断に導入してきた. 開設以来15年が経過したのでその結果を分析し問題点を検討した. 15年間に26, 377名 (男性12, 205名, 女性14, 172名) の受診者があり喉頭癌26名, その他の癌5名 (下咽頭癌2名, 扁桃癌1名, 甲状腺癌1名, 急性リンパ性白血病1名), そしてロイコプラキア51名が診断治療された. 受診者数にしめる癌の割合は約0.12%で, ロイコプラキアを含めると0.31%であった. その他, 声帯ポリープ338名, ポリープ様声帯280名, 声帯結節91名等の良性疾患が診断治療された.
    音声分析テレフォンサービスは昭和59年以来17,836件の利用があった. そのうち4,476名 (25.1%) に嗄声を認め, 1,600名 (35.7%) が喉頭癌検診を受診した.
    音声分析テレフォンサービスの利用者の精検の結果, 喉頭癌9名, その他の癌1名, 白板症が9名診断され, また声帯ポリープ79名, ポリープ様声帯98名, 声帯結節27名等が診断された.
    喉頭癌検診は癌発見率は低いが診断費用が安価であるため癌患者1人あたりの発見に要する費用は胃癌や子宮癌より低く乳癌, 大腸癌と同程度であった.
    問題点としては受診者数が少ないこと, 男性の比率が低いこと, 有効な一次スクリーニングの方法が見いだされていないことなどが依然として解消されていなかった.
    喉頭癌のハイリスクグループに焦点を当てた啓蒙活動を進める必要があると考えられた.
  • 小川 武則, 松浦 一登, 橋本 省, 中野 浩, 佐々木 高綱, 洲崎 洋, 近藤 芳史, 舘田 勝, 朴沢 孝治, 高坂 知節
    1999 年 102 巻 10 号 p. 1198-1206
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌症例における多重癌は近年増加傾向にあるが, 特に口腔・咽頭癌では発生頻度が高く予後が悪いことが報告されており, 対策が必要である。今回, その頻度, 部位, 治療内容等について検討を行い, 今後の治療方針につき考察を行った. 対象は, 1995年6月から1998年7月までに当科にて入院加療を行った口腔癌25例・中咽頭癌14例・下咽頭癌29例の計68例であり, 検査項目として, 全例に対し上・下部消化管内視鏡検査・腹部エコー, 胸部に異常が認められた症例に対し胸部CTを施行した. 検索を行った68例中23例 (34%) に多重癌を認め, 同時性9例, 異時性14例であった. 三重癌は4例であった. 多重癌の他に, 上・下部消化管内視鏡検査にて7例に腫瘍性病変が存在し, 結局68例中16例 (24%) に何らかの同時性の異常を認めた. 多重癌の発生部位については三重癌を各々数えると, 同時性においては9例中5例 (56%), 異時性では16例中12例 (75%) にupper aerodigestive tract内での発生が集中する傾向が見られ, その中でも食道癌との合併は同時性・異時性共に多かった. 異時性多重癌における第1癌から第2癌発生までの平均期間は25.5カ月で, 14例中10例 (71%) が4年以内に発生していた. 治療面では, 同時性, 異時性いずれも各々の癌に対して高い頻度で根治的治療を行っており, Kaplan-Meier法による5年生存率曲線では多重癌のない症例, 同時性, 異時性多重癌症例の間に統計学的有意差は認められなかった. これらより, 特に治療前検索としてルゴール染色法も併せた上部消化管内視鏡検査が有用であり, また, 第1癌治療後約4年はupper aerodigestive tractを中心とした慎重な経過観察が重要であると考えられた. 更に, 各々の癌に対して根治的治療を行うことによって予後が改善する可能性があると考えられた.
  • 喉頭ポリープ, 喉頭嚢胞
    児嶋 久剛
    1999 年 102 巻 10 号 p. 1208-1211
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top