通常発声時,声帯は毎秒100~300回程度振動している.病的な声帯では振動状
態に変化が生じ,振動が不規則な場合にはストロボスコピーでの観察ができない.
そのため我々は,コンピュータを用いた高速度ディジタル撮影法を開発し,病的
声帯振動の解析を試みている.今回の研究は,声帯の種々な器質的疾患について
高速度ディジタル撮影による解析を行い,それを疾患名からではなく振動パター
ンから分類し,声帯の病的振動様式と病変の状態につき考察した.対象は声帯の
器質的疾患患者22例で,延べ26データを解析した.高速度ディジタル撮影画像か
らの観察項目は,対称性•規則性•位相差•声門閉鎖•振幅•粘膜波動•振動周
期の違いの7項目とした.高速度ディジタル撮影による病的声帯振動のパターン
は,同一疾患でもその障害の部位や程度,声の高さ•強さ,空気力学的条件や喉
頭調節によって様々に変化し,疾患と振動パターンの1対1の対応はなかった.
高速度ディジタル撮影による病的声帯振動の解析は,音声外科を含めた音声治療
の理論的嚢づけの手がかりとなり,ひいては嗄声生成機構の解明につながると考える.
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