日本耳鼻咽喉科学会会報
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106 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 杉浦 むつみ, 新名 理恵, 池田 稔, 中里 秀史, 安孫 子譲, 久木 元延生, 大前 由紀雄
    2003 年 106 巻 5 号 p. 491-498
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    顔面神経麻痺患者の心理的ストレス反応は初診時に有意に大きく,35%の症例が「中レベル」以上のストレス反応を示した.ストレス反応は,65歳未満の患者や,帯状疱疹のある患者で有意に大きかった.また心理的ストレス反応の中でも.不安の要素が強い傾向を認めた.以上の結果を踏まえ,初診時に顔面神経麻痺患者の診療にあたる際に,患者の心理的ストレス反応が高いということを配慮しながら,病態や経過についての十分な説明を行い対応していくことが肝要であると思われた.
  • 林 伊吹, 河田 了, 李 昊哲, 櫻井 幹士, 辻雄 一郎, 竹中 洋
    2003 年 106 巻 5 号 p. 499-506
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 平成9年7月から平成14年6月までの5年間に,術前治療を行わずに全頸部郭清術を行った頭頸部扁平上皮癌患者79例91側を対象とし,術前後のリンパ節を比較検討した.
    2. 「短径 長径」が0.5以上で,かつ「短径」がレベルI, IIでは7mm以上,レベルIII, IV, Vでは6mm以上のものを転移リンパ節と診断した場合,敏感度74%,特異度93%,正診率82%であった.
    3. 病理組織学的に転移陽性リンパ節は199個存在し,術前のエコーで転移と正しく診断できたものは93個あり,その診断率は46%であった.偽陰性のリンパ節は33個(17%)であった.
    4. エコーで大きさを測定した217個のリンパ節うち99個は診断基準を満たしたため転移と診断した.このうち6個(6%)は偽陽性であった.
    5. 病理組織学的転移陽性リンパ節199個のうち,73個(37%)のリンパ節はエコーで存在を確認できなかった.現在のエコー機器の限界と考えられる.
    6. N1と診断された31側中20側は複数個の転移があった.しかも正しく診断されたリンパ節と異なったレベルに転移が及んだものが13側あり,N1と診断された場合のSNDの適応は慎重でなければならない.
    7. N0と診断された36側中15側がpN(+)であり,この中の10個のリンパ節はエコーで確認できなかった.N0と診断するには注意を要する.
    8. 転移が疑わしいリンパ節や短径=5mmのリンパ節に対しては積極的にFNAを行い,転移の有無を確認する.FNAで診断できなければ術中迅速診断を活用するのがよい.
    9. 術前転移リンパ節診断は,その治療方針に大きく関わるばかりでなく,癌の臨床統計をとる上でも明確な診断基準の確立が必要である.
  • 中野 友明, 愛場 庸雅, 久保 武志, 山田 浩二, 和田 匡史, 鵜山 太一
    2003 年 106 巻 5 号 p. 507-509
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    嚥下障害のため気管内分泌物の多い在宅管理中の小児気管切開症例に胸腔ドレナージ用の電池式吸引ポンプ(サクションワンS-1型)を用いた持続吸引を施行することで患児ならびに介護する家族のQOLを高めることができたので報告した.
  • 木内 庸雄, 入船 盛弘, 肥塚 泉
    2003 年 106 巻 5 号 p. 510-513
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 咽後膿瘍はまれな疾患であるが,気道閉塞や膿瘍の進展によって致死的な経過をとることがある.
    2. 咽後膿瘍の診断には,患者の病歴,症状などから,視診触診所見を含め,疑いを持つことがまず重要である.穿刺による膿汁を証明すれば確診となるが,頸部側面X線撮影,頸部CT, MRIが有効である.
    3. 膿瘍が進行し,呼吸困難,咽頭痛,嚥下困難,閉鼻声などの症状が出現している症例では手術法を含め治療について慎重な選択が必要とされる.
  • 坂本 菊男, 権藤 久次郎, 富田 和英, 粕谷 尚男
    2003 年 106 巻 5 号 p. 514-517
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    鼻中隔神経鞘腫の1例を報告した.デンケル法に準じて腫瘍を摘出した.シュワン細胞様の腫瘍細胞の密な増殖を認めAntoni A型の組織像を示し,S-100蛋白が陽106-517 日耳鼻 坂本 他=鼻中隔神経鞘腫の1例性に反応したことから神経鞘腫と診断した.我々が検索し得た範囲では国内,国外を通じて19例目の症例であった.
  • 戸叶 尚史, 野口 佳裕, 喜多 村健
    2003 年 106 巻 5 号 p. 518-521
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    埋め込み型補聴器としては,我が国では世界に先駆けて人工中耳の開発や埋め込みが行われてきたが,Bone-Anchored Hearing Aid: BAHA(埋め込み型骨導補聴器)の装用に関してはいまだに報告がない.今回,我々は慢性中耳炎術後2症例に対してBAHA埋め込み術を行った.また,骨導端子埋め込み3カ月後に振動子を装用して震音と語音による心理学的聴力検査を施行し,気導補聴器との比較を行った.装用効果に関してBAHAは気導補聴器よりも優れているとはいえなかったが,振動子装用後は,両症例とも音の良さと装用の快適さからBAHAを使用するようになり,気導補聴器は使用していない.
  • 呉 孟達, 田口 亜以子, 木村 勝, 稲福 繁
    2003 年 106 巻 5 号 p. 522-531
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    当科の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome: OSAS)外来は,平成13年4月より高周波装置のcoblator systemを導入し,一部の単純性鼾症やOSAS症例に対してday surgeryを行い,一定の臨床効果を得ている.その治療経験から,われわれはさらに高周波と同様に高い組織凝固作用を発揮するエタノールの粘膜収縮減量効果に着目し,一連の動物実験に取り組んできた.本報告はその結果の一部について述べたものである.
    実験動物にはモルモットを用いた.まず液体注入による呼吸への影響を調べるため,生理食塩水を段階的に100μlから1μlまで口蓋弓粘膜に注入した結果,呼吸困難の原因となるような浮腫を起こさない安全な注入量は10μl以下であることが分かった.それに基づいて,エタノールを50%,70%および100%の各濃度でその1,2,4,8および10μlを口蓋弓粘膜にそれぞれ注入し,局所粘膜の経時的変化を観察した.
    50%エタノールでは実施したすべての注入量において明らかな粘膜の収縮効果は見られなかった.また,100%エタノールでは1μlまで減量しても,なお組織傷害性が強く局所粘膜の壊死崩壊が際立っていた.一方,1もしくは2μlの70%エタノールの注入では,局所粘膜傷害の形成は軽度に止まり数日以内に完治した上,粘膜組織の適度な収縮も全例に認められ,しかも長期間にわたってこの組織収縮が維持されることが判明した.
    以上の結果から,適量の使用を前提条件に70%エタノールは有用な粘膜収縮剤として,将来多方面の粘膜疾患の治療に利用できる可能性を秘めているものと考えられる.
  • 橋口 一弘, 松延 毅
    2003 年 106 巻 5 号 p. 532-539
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    成人の急性咽頭炎における細菌とウイルスの検出頻度とそれらの関連性を調べる目的で,2000年12月から2001年6月までの7力月間に当科を受診した成人の急性咽頭炎患者56名を対象として,咽頭ぬぐい液から細菌分離とウイルスゲノム検出を試みた.ウイルスゲノムの検出にはPCR法を用い,目的としたウイルスはアデノウイルス,インフルエンザウイルスAおよびB,パラインフルエンザウイルス1,2,3,とRSウイルスである.
    一般細菌は34名(59.7%)から40株が分離された.ウイルスゲノムは19名(33.9%)から21株が検出された.このなかで細菌とウイルスが同時に検出されたのは13名(23.2%)であった.検出された細菌の内訳はH. influenzaeが13株,s. pneumoniae 8株,S. aureus 7株,A群β溶連菌6株,A群以外のβ溶連菌4株,その他の菌が2株であった.β溶連菌群,H. influenzae, S. pneumoniae, S. aureusの4菌種で検出細菌の95%を占めていた.ウイルスでは,アデノウイルスが11株,インフルエンザウイルスが4株,パラインフルエンザウイルス1および3が4株,RSウイルスが2株であった.細菌とウイルスともに第1病日に受診した患者から最も多く検出され,ウイルスは21名のうち11名(52.4%)から,細菌は17名(80.9%)から検出された.ウイルスと細菌の両方が検出された症例は第1病日より順に8,1,3,0,1例であり,第1病日に集中していた.急性咽頭炎はウイルス感染後に細菌の2次感染が起きるとされているが,発症後非常に早い時期よりウイルスと細菌の混合感染がみられることが示唆された.
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