1. 平成9年7月から平成14年6月までの5年間に,術前治療を行わずに全頸部郭清術を行った頭頸部扁平上皮癌患者79例91側を対象とし,術前後のリンパ節を比較検討した.
2. 「短径 長径」が0.5以上で,かつ「短径」がレベルI, IIでは7mm以上,レベルIII, IV, Vでは6mm以上のものを転移リンパ節と診断した場合,敏感度74%,特異度93%,正診率82%であった.
3. 病理組織学的に転移陽性リンパ節は199個存在し,術前のエコーで転移と正しく診断できたものは93個あり,その診断率は46%であった.偽陰性のリンパ節は33個(17%)であった.
4. エコーで大きさを測定した217個のリンパ節うち99個は診断基準を満たしたため転移と診断した.このうち6個(6%)は偽陽性であった.
5. 病理組織学的転移陽性リンパ節199個のうち,73個(37%)のリンパ節はエコーで存在を確認できなかった.現在のエコー機器の限界と考えられる.
6. N1と診断された31側中20側は複数個の転移があった.しかも正しく診断されたリンパ節と異なったレベルに転移が及んだものが13側あり,N1と診断された場合のSNDの適応は慎重でなければならない.
7. N0と診断された36側中15側がpN(+)であり,この中の10個のリンパ節はエコーで確認できなかった.N0と診断するには注意を要する.
8. 転移が疑わしいリンパ節や短径=5mmのリンパ節に対しては積極的にFNAを行い,転移の有無を確認する.FNAで診断できなければ術中迅速診断を活用するのがよい.
9. 術前転移リンパ節診断は,その治療方針に大きく関わるばかりでなく,癌の臨床統計をとる上でも明確な診断基準の確立が必要である.
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