(目的)
走査型電子顕微鏡を使用して,モルモットの正常なCorti器な観察し,蝸牛各回転毎の毛細胞と聴毛の形態及び聴毛と蓋膜の関係を検索した.
(実験法)
Preyer反射正常な成熟モルモットを,ネンブタール麻酔下に断頭後,速やかに蝸牛をとりだし,2.5%グルタールアルデヒドと2%オスミウム酸の混合固定液,又は2.5%グルタールアルデヒドの前固定液と2%オスミウム酸の後固定液を使用し固定した.
有毛細胞と聴毛の観察には,上昇エタノール系列と酢酸イソアミルで簡易脱水後,真空乾燥又は臨界点乾燥し,蓋膜の観察にはエタノール系列及び無水アセトンにて脱水後温風乾燥し,夫々カーボン,金の二重蒸着をして日本電子製JSM-U3型走査型電子顕微鏡で観察した.
(結果)
筆者は,便宜上外毛細胞列を内側(蝸牛軸側)より外側(ヘンゼン氏細胞側)に向けて,1st row,2nd row, 3rd row,一細胞上の聴毛列を外側より内側に向けてA,B,Cと名付けた.
1) 外毛細胞列は,基礎回転より第3回転までは,3列又は4列であるが,第4回転蝸牛頂部では,helicotremaより1/2回転下方辺より上方に向つて,3rd rowの細胞は配列が乱れ,消失してくるため2列になり,やがて2nd rowの細胞も消失し1st rowのみとなり,遂にはこれも消失して内毛細胞列のみ残つている.この内毛細胞もhelicotremaでは消失している.
2) 外毛細胞には,W又はV型に配列した3列の聴毛があり,その長さは,同一細胞列では,上方回転ほど,又同一回転部位では,外側細胞列ほど長い.この傾向は,Aにおいて特に著るしく,次いでB,Cの順になつている.従つて聴毛の長さは,毛細胞の位置により異る.但し,蝸牛頂部ではCが痕跡様の場所がある.
3) 外毛細胞の聴毛数は,上方回転ほど少く,同一回転でも外側列の細胞ほど少い.
4) 外毛細胞聴毛の配列形態は,基礎回転では各細胞列間に差がないが,上方回転に行くにしたがい,外側列細胞ほど内側聴毛列(C)から不整となり,数も減少している.
蝸牛頂部の第1列外毛細胞では,BとCの聴毛は殆んど区別できぬほどに数も少く長さも不定となつている.
5) 外毛細胞聴毛と蓋膜の関係では,蓋膜裏面に各細胞の最外側列聴毛に一致する小孔の列を認めた.
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