日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 2 号
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  • 新井 基洋, Bernard Cohen
    1999 年 102 巻 2 号 p. 199-207
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    視運動性眼振 (OKN), 視運動性後眼振 (OKAN) における体位の影響, とくに体傾斜時のcross-couplingの有無について検討した. 対象は健常な男性11名, 女性4名, 合計15名で, 年齢は28-51歳 (平均年齢35.7±7.7歳) であった. 検査には特別に製作したJung型視運動性眼振誘発装置を使用した. 高さ120インチ, 半径60インチの半円筒のスクリーンに視角10°毎, 幅3.3インチ (視角2.9°) の光線条を投影し, 35°/秒, 45秒間の等角速度水平視運動刺激方法を行った. 眼振はCCDカメラにて右一眼を記録した. 左OKN刺激後, 暗所開眼で30秒間のOKAN記録を行い, 右についても同様に検査を実施した. 検査は垂直位, 左右30°, 60°, 90°の7つの体位を用いて施行した. 水平視運動性眼振 (以下HOKN) の検査ではすべての傾斜体位で明らかな垂直成分を確認できた. 体と眼のずれを現すRe-Bodyの値は体の傾斜角度を30°, 60°, 90°に増やしていく7.4°, 11.5°, 13.6°と増加し, 体傾斜のヒトOKNはcross-couplingを認めた. 水平視運動性後眼振 (以下HOKAN) の持続時間は前記7つの体位どの体位でも差は認められなかった.
    HOKANの第1打目の緩徐相速度は, 垂直位と60°傾斜体位の間に5%の危険率で有意差があり, 30°と60°, 90°の間にもそれぞれ1%, 5%の危険率で有意差があった. VOKANの第1打目の緩徐相速度は30°, 60°, 90°の3つの傾斜体位の間に有意差は認められなかった. つまり, OKANでは, 体傾斜の角度を増やしていくとHOKANの持続時間, 第1打目の緩徐相速度はともに減少するが, VOKANの出現率, 第1打目の緩徐相速度はともに変化は認めなかった. よってヒトOKANではcross-couplingは認められなかった.
  • 松浦 一登, 山田 敦, 橋本 省, 舘田 勝, 宮倉 秀人, 朴沢 孝治, 高坂 知節
    1999 年 102 巻 2 号 p. 208-217
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    下咽頭・頸部食道癌に対する治療では, 咽喉食摘, 遊離空腸を用いた下咽頭・食道再建術が確立した手技となっているが, 食道発声による音声獲得率は極めて乏しいのが現状である. そこで我々は, 移植空腸の腸管に筒状弁を挙上してシャント形成を行うエレファントノーズ型空腸移植による音声再建術 (野崎第3法) を追試し術後音声獲得を試みた. 対象は1996年10月より当科にて咽喉食摘術を行った下咽頭癌9症例である. 手術により9例中8例にシャントが形成され, 4例 (44%) が発声可能となった. 発声可能症例では再建食道の空腸粘膜の一部が発声時に左右から中心に寄り内腔の狭小化を来していた. この部分はシャント部分よりも口側であり, 再建食道の粘膜が振動していることよりvibratory sourceの形成を示していると考えられた. 発声不能症例は, 短期予後の悪い症例, 肺疾患の合併例, 移植腸管の血流不全が認められた症例であり, 適応については十分な検討が必要であると思われた. このような症例については本術式を行わず, 早期の退院がはかれる通常の食道再建術を行う方が良いと思われた. 本法による獲得音声の音響的特徴は基本周期のゆらぎと振幅のゆらぎが正常者に比べてはるかに大きいことであり, 食道発声やT-Eシャントでの発声と同様で, 聴覚的印象としては雑音の多い音声であった. 基本周波数としては約250~560Hzの域にあり, これが腸管粘膜が持つ振動体としての固有の値であるのか, 手術ごとに異なっていく人為的な値であるのかは, 今後の症例の蓄積によって解明されていくものと思われた.
  • 正常者と鼻アレルギー症例の比較
    後藤 穣
    1999 年 102 巻 2 号 p. 218-225
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻アレルギーはI型アレルギーにより発症する疾患である. アレルギー反応では, 抗原が鼻粘膜に侵入すると様々な細胞が活性化され, 種々のケミカルメディエーターを遊離し炎症担当細胞の遊走がはじまる. 本研究では, メディエーターのうち最も強い内因性の知覚神経刺激物質であるブラディキニン (BK) が, 鼻粘膜過敏性の亢進に影響を与えるかを検討した. また, アンギオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害剤を投与しBKの分解が妨げられると, 炎症反応が増強するかどうか検討した.
    実験は, 正常者7人, 通年性鼻アレルギー患者7人, 計14人を対象に行った. BK100μgを鼻誘発し, 鼻汁および洗浄液中のアルブミン, リゾチーム, 総蛋白の変化から血管透過性, 腺分泌 (漿液腺) の変化を検討した. 同様の方法で, ACE阻害剤を前投与した場合の実験も行った.
    鼻アレルギー患者は, BK誘発により鼻粘膜血管透過性および腺分泌が亢進し, 鼻腔洗浄液中にアルブミンとリゾチームが増加した. ACE阻害剤の前投与によって, この傾向はさらに顕著になった. 鼻アレルギー患者はBK誘発に対する反応性が高く, 抗原に暴露され産生されるBKが, 血管透過性を亢進させ鼻閉や鼻汁分泌などの鼻症状を修飾していると考えられた. さらにACEが減少すれば, 血管透過性が亢進してアレルギー反応が遷延化し, 鼻症状が増悪する可能性が示唆された.
  • 村形 寿郎, 原渕 保明
    1999 年 102 巻 2 号 p. 226-235
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症患者におけるαレンサ球菌に対する全身的免疫応答を検討するため, αレンサ球菌 (Str. sanguis, Str. salivarius, Str. mitis) およびβ溶連菌 (Str. Pyogenes) に対する血清の特異的抗体価をELISA法にて測定した. またαレンサ球菌の菌体成分のうち血清抗体の標的となる抗原を解析するためウェスタンブロット法を行った. その結果, 掌蹠膿疱症患者血清中のStr. sanguisStr. salivariusに対する特異的IgG抗体価は反復性扁桃炎患者血清および健康成人血清より有意に高かった. Str. Pyogenesに対する特異的IgG抗体価は3群間に差はなかった. ウェスタンブロット法にて解析したところ, Str. sanguis, Str. salivariusおよびStr. mitisの菌体成分のうち, 25~27kDaに対するIgG抗体を認めた症例は掌蹠膿疱症患者群では正常成人群より有意に多かった. 一方, Str. Pyogenesの25~27kDaに位置する菌体成分に対する抗体の発現率は2群間に差は認められなかった. これらのことから掌蹠膿疱症患者ではαレンサ球菌 (Str. sanguis, Str. salivarius, Str. mitis) に対する免疫反応性が亢進しており, それらの菌体成分のうち25~27kDaに位置する抗原が標的となっている可能性が示唆された.
  • 西村 俊郎, 志賀 英明, 脇坂 尚宏, 古川 仭
    1999 年 102 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌のシスプラチンの耐性の機序として重要なグルタチオン解毒系の関与を明らかにする目的で基礎的, 臨床的検討を行った. 検討方法として, 7種類の頭頸部扁平上皮癌由来培養細胞の細胞内グルタチオン濃度とシスプラチンによる増殖抑制の程度を評価した. また臨床例では51症例の治療前に得られた56の病理組織標本における2種類のグルタチオン産生系酵素の発現状況をin situ hybridization (γ-glutamylcysteine synthetase, γ-GCS) と免疫染色 (γ-glutamyl transpeptidase, GGT) について評価し, シスプラチンを中心とする化学治療の臨床効果との相関を検討した. その結果, 培養細胞内グルタチオン濃度とシスプラチンによる50%増殖抑制濃度は良好な相関関係を示し (決定係数0.814, P<0.05), 細胞内グルタチオンがシスプラチン耐性の大きな要因であることが示された. 一方臨床例の検討ではγ-GCSの発現亢進は評価し得た46例中27例 (59%) で, その27例中17例 (63%) が化学治療の反応が不良であったが, 低発現群の治療反応率と有意差はなかった (P=0.20). 同様にGGTの高発現は53例中32例 (60%) で, その32例中化学治療に反応が不良であったのは20例 (63%) でやはり低発現群の治療反応率との有意差は観察されなかった (P=0.32). 培養細胞では細胞内グルタチオン濃度がシスプラチン耐性に重要であったが, 臨床例ではグルタチオン産生系酵素の発現上昇のみではシスプラチンへの耐性が説明されなかった. これには生体内での免疫担当細胞の関与や, 関連する遺伝子の発現亢進, 併用薬剤の影響など様々な要因が考えられ, 臨床例でのシスプラチンの耐性機構は複雑でその解明には, 各因子を順次検討してゆく必要があると考えられた.
  • 渡辺 英彦, 鈴木 智雄, 伊藤 八次, 水田 啓介, 澤井 薫夫, 宮田 英雄
    1999 年 102 巻 2 号 p. 243-253
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    目的: 喉頭癌の予後を知る指標としてp53, EGFR, factor VIIIの各因子について予後との関連を検討した. 対象: 1986年から1996年までに岐阜大学耳鼻咽喉科で根治的治療を行った喉頭癌新鮮例97例 (男性92, 女性5), T2: 49例, T3: 35例, T4: 13例. 方法: 診断確定時の組織標本を用い, p53, EGF receptor, factor VIIIについて免疫組織染色を行った. 各因子の染色性から対象を陽性群と陰性群に分け, 背景因子の影響を補正し各因子相互の影響を評価するためCoxの比例ハザードモデルを用いた重回帰分析を行った. 評価には全死亡, 癌関連死, 初回再発 (局所再発および遠隔転移) の3つのエンドポイントを用い, それぞれoverall survival, cause-specific survival, relapse-free survivalの指標とした. 比例ハザードモデルには, 年齢, 性, 原発部位, T分類, N分類, 治療方法およびp53蛋白, EGFR, factor VIIIの各因子を組み込んだ. 結果: 単変量解析の結果, overall survivalに対し, 性 (P=0.0052), 年齢 (p=0.0038), T分類 (P=0.0096) およびN分類 (P=0.0261) が有意な予後因子であった. cause-specific survivalでは性 (P=0.0076), T分類 (P=0.0167) およびfactor VIII (P=0.0443) が, relapse-free survivalではT分類 (P=0.0005) およびEGFR (P=0.0103) がそれぞれ有意な予後因子であった. 多変量解析の結果overall survivalに対し, supraglottis (P=0.0296) およびfactor VIII (P=0.0345) が有意な予後因子であった. cause-specific survivalではsupraglottis (P=0.0333), T分類 (P=0.0179) およびfactor VIII (P=0.0134) が, relapse-free survivalではT分類 (P=0.0166), 化学療法 (P=0.0087) およびEGFR (P=0.0016) が, それぞれ有意な予後因子であった. 結論: Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析の結果, T2, T3およびT4喉頭癌においてfactor VIIIがoverall survivalおよびcause-specific survivalの, EGFRがrelapse-free survivalの独立した予後因子であった.
  • 第1報RT-PCR法によるmRNA発現の検討
    若島 純一, 原渕 保明, 白崎 英明
    1999 年 102 巻 2 号 p. 254-264
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃におけるサイトカインmRNAの発現をRT-PCR法にて検討した. IL-1β, IL-2, IL-4, IL-6, IL-8, IFN-γ, TNF-αのmRNAは全例の扁桃組織および大部分の扁桃単核細胞で検出された. リンパ球サブセット別の検討ではCD4陽性細胞においてIL-1β, IL-2, IL-4, IL-8, IFN-γ, TNF-αが, CD8陽性細胞においてIFN-γ, TNF-αが, CD19陽性細胞においてはIL-1β, IL-6, IL-8, TNF-αが検出された. 扁桃単核細胞におけるサイトカインmRNAの半定量的解析を行ったところ, 反復性扁桃炎群でIL-1βとTNF-αの発現が扁桃肥大群に比べ有意に強かった. 以上より扁桃における免疫応答や病態にサイトカインが深く関与していることが示唆された.
  • 第2報フローサイトメトリーによるサイトカイン産生細胞の解析
    若島 純一, 原渕 保明
    1999 年 102 巻 2 号 p. 265-276
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    フローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン検出法によりヒト口蓋扁桃単核細胞におけるIL-1α, IL-2, IL-4, IL-6, IL-8, IFN-γ, TIF-αの産生を検討した. 分離直後の扁桃単核細胞においてはIL-1αがCD3陽性細胞, CD4陽性細胞, CD19陽性細胞の0.4~0.6%, CD14陽性細胞の11%に検出され, またTNF-αがCD14陽性細胞の5%に検出された. 扁桃単核細胞を非刺激下で8時間培養を行うとIL-1α, IL-4, IL-8, TNF-αの産生細胞が0.4~2%に検出された. 扁桃単核細胞をPMAとイオノマイシンにより刺激すると, 種々のサイトカイン産生細胞が8~12時間をピークとして認められ, T細胞ではIL-2, TNF-αの産生率が50~60%と他のサイトカインより有意に高く, またIFN-γ, IL-8の産生率は10~20%とIL-4, IL-1αの産生率の1~3%より有意に高かった. 同様にB細胞ではIL-6, TNF-αの産生率は30~40%とIL-1α, IL-8の産生率のより有意に高く, IL-8の産生率は約20%でIL-1αの産生率の2%より有意に高かった. これらを疾患群および年齢群に分けて検討したところ, 成人の反復性扁桃炎群と閉塞性睡眠時無呼吸症候群との間には差は認められなかった. しかし, 8歳以下の小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群では18歳以上の成人閉塞性睡眠時無呼吸症候群と比較してT細胞のIL-2, TNF-αとB細胞のIL-1α, IL-6, TNF-αの産生細胞の割合が有意に低かった. 以上の成績より, 扁桃単核細胞からはサブセットや活性化状態によって種々のサイトカインが産生されることが示され, フローサイトメトリーを用いたサイトカインの解析は扁桃の病態生理に対するサイトカインのかかわりを調べる上で有用であると思われた.
  • 赤平 年三
    1999 年 102 巻 2 号 p. 277-285
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    めまい平衡障害患者の日常生活の障害度を知るうえで動的平衡機能検査である歩行検査が重要である. 加齢による歩行の変化とめまい平衡障害患者の歩行特性を調べる目的で歩行開始時における歩幅, 歩隔, 歩調, 歩速等の歩行因子を分析検討した. 対象は正常者が60例で年齢別に若年群, 中年群, 高齢群の3群に分け, 各群間の相違について検討した. めまい平衡障害患者は51例で末梢群と中枢群に分け, 同世代の正常群と比較検討した. 方法は大型重心動揺計を用いて歩行中の足圧中心で描かれる歩行図から歩行因子の分析を行った. この結果, 高齢群は若年群, 中年群に比べて歩幅の短縮, 歩隔の拡大, 歩速の低下, 歩行中の不安定性の増大を示した. 若年群と中年群間には統計的有意差がなかった. めまい平衡障害患者は同世代の正常者と比べ, 歩幅の短縮, 歩速の低下, 歩行中の不安定性の増大を示し, 特に中枢群が顕著であった.
  • 唾石, 貯留嚢胞, ガマ腫
    小宗 静男
    1999 年 102 巻 2 号 p. 286-289
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
  • 小崎 寛子
    1999 年 102 巻 2 号 p. 290
    発行日: 1999/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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