目的: 喉頭癌の予後を知る指標としてp53, EGFR, factor VIIIの各因子について予後との関連を検討した. 対象: 1986年から1996年までに岐阜大学耳鼻咽喉科で根治的治療を行った喉頭癌新鮮例97例 (男性92, 女性5), T2: 49例, T3: 35例, T4: 13例. 方法: 診断確定時の組織標本を用い, p53, EGF receptor, factor VIIIについて免疫組織染色を行った. 各因子の染色性から対象を陽性群と陰性群に分け, 背景因子の影響を補正し各因子相互の影響を評価するためCoxの比例ハザードモデルを用いた重回帰分析を行った. 評価には全死亡, 癌関連死, 初回再発 (局所再発および遠隔転移) の3つのエンドポイントを用い, それぞれoverall survival, cause-specific survival, relapse-free survivalの指標とした. 比例ハザードモデルには, 年齢, 性, 原発部位, T分類, N分類, 治療方法およびp53蛋白, EGFR, factor VIIIの各因子を組み込んだ. 結果: 単変量解析の結果, overall survivalに対し, 性 (P=0.0052), 年齢 (p=0.0038), T分類 (P=0.0096) およびN分類 (P=0.0261) が有意な予後因子であった. cause-specific survivalでは性 (P=0.0076), T分類 (P=0.0167) およびfactor VIII (P=0.0443) が, relapse-free survivalではT分類 (P=0.0005) およびEGFR (P=0.0103) がそれぞれ有意な予後因子であった. 多変量解析の結果overall survivalに対し, supraglottis (P=0.0296) およびfactor VIII (P=0.0345) が有意な予後因子であった. cause-specific survivalではsupraglottis (P=0.0333), T分類 (P=0.0179) およびfactor VIII (P=0.0134) が, relapse-free survivalではT分類 (P=0.0166), 化学療法 (P=0.0087) およびEGFR (P=0.0016) が, それぞれ有意な予後因子であった. 結論: Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析の結果, T2, T3およびT4喉頭癌においてfactor VIIIがoverall survivalおよびcause-specific survivalの, EGFRがrelapse-free survivalの独立した予後因子であった.
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