日本耳鼻咽喉科学会会報
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115 巻, 2 号
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総説
  • 今野 良
    2012 年 115 巻 2 号 p. 73-84
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌は発癌原因が主にHPV感染であることが明らかにされていた. 50年以上前から行われてきた子宮頸癌検診による二次予防に加えて, HPVワクチン開発・臨床応用によって一次予防も可能になり, 疾患の征圧を視野に入れた予防活動が世界的に繰り広げられている. 一方, 分子疫学の発展により, 子宮頸癌以外の性器肛門癌や頭頸部癌の多くにもHPVが関連していることが認められ, 予防・検診・治療に新しい展開がみられる. 本稿では, 前半にHPVの生物学, 子宮頸癌およびHPV関連疾患の概説を行い, 後半には頭頸部癌とHPVの関わりを解説する.
  • 菊地 茂
    2012 年 115 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    深頸部感染症は口蓋扁桃, 歯牙, 唾液腺などに生じた感染が頸部の間隙に波及することによって生じる感染症である. 抗菌薬が発達した現在では深頸部感染症は減少傾向にあるものの, 気道狭窄, 縦隔炎, 敗血症, 壊死性筋膜炎などの重篤な合併症を来しやすいため, 適切な対応を行わないと致死的な状況に陥る可能性がある. したがって, 深頸部感染症に対しては症例ごとに正確に病態を把握し, 切開・排膿, デブリードマン, 気管切開術などの外科的治療のタイミングを逸しないことが重要である.
原著
  • 北原 糺, 三代 康雄, 阪上 雅史, 鎌倉 武史, 森鼻 哲生, 猪原 秀典
    2012 年 115 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    (目的) 日本耳科学会が提唱する中耳真珠腫進展度分類2010改訂案に準じて, 鼓室形成術の自験例を省み, 進展度が手術成績に与える影響を検討した.
    (対象と方法) 平成9年4月から平成22年3月の間に鼓室形成術を施行し, 12カ月以上経過観察した後天性1次性中耳真珠腫149耳 (弛緩部型109耳, 緊張部型40耳). 中耳真珠腫進展度, 術式, 伝音再建型, 術後12カ月の聴力改善成績, 手術合併症, 術後再発を来した症例に関して検討した.
    (結果) 弛緩部型の成功率79.0%, 進展度stage I—90.0%, stage II—78.7%,stage III—73.3%, 伝音再建型I型—88.9%, IIIc型—84.0%,IVc型—30.0%であった. 緊張部型の成功率73.3%, stage I—75.0%,stage II—12例75.0%, stage III—70.0%, I型—100.0%,IIIc型—86.7%, IVc型—50.0%であった. 手術合併症は弛緩部型, 緊張部型とも, stageが進むと増える傾向にあった. 再発例は弛緩部型9例, 緊張部型4例で, いずれもstageの進んだ症例, 一期的手術とした症例, 外耳道後壁を保存もしくは再建した症例, 術後5年以内の再発が多い傾向にあった.
    (考察) 聴力改善成績は進展度分類よりむしろ, アブミ骨上部構造の有無に影響される. stageが進むと手術合併症, 再発が多いことから, 進展度分類は術中操作, 術後経過観察に有意義である. stageの進んだ症例は状況に応じて, 段階手術や外耳道後壁の十分な削開を伴う乳突開放型の一方または両方を考慮する必要がある. 術後5年以内の再発例が大半であり, 少なくとも5年は経過観察していく必要がある.
  • 浅香 大也, 吉川 衛, 中山 次久, 吉田 拓人, 吉村 剛, 飯村 慈朗, 大櫛 哲史, 松脇 由典, 飯田 誠, 柳 清, 鴻 信義, ...
    2012 年 115 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    上顎洞性後鼻孔ポリープは上顎洞粘膜の慢性炎症を成因とし, 自然口または副口を介して後鼻孔まで伸展したポリープである. 今回われわれは上顎洞性後鼻孔ポリープの臨床的特徴を検討して報告する. 対象期間は2007年4月から2008年3月まで, 東京慈恵会医科大学およびその関連施設計5施設において内視鏡下鼻内手術を施行した慢性副鼻腔炎患者728例のうち, 上顎洞性後鼻孔ポリープと診断された症例15例 (2.1%) を対象として自覚症状, ポリープの基部, 再発率を検討した. 自覚症状としては鼻閉が最も多く, 鼻汁, 後鼻漏が次いで多かった. ポリープ基部は上顎洞底部から後壁が6例と最も多く, 上顎洞底部が4例であった. ポリープの再発を認めた症例は2例であり, いずれも上顎洞底部に存在するポリープの基部が前方に及んでいる症例であった. 術中にポリープの基部を注意深く観察して可能な限り摘出し, 適切な術後治療を行えば再発の制御が可能と考えられた.
  • 菊池 恒, 今吉 正一郎, 山内 智彦, 市村 恵一
    2012 年 115 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    オスラー病に伴う鼻出血は止血が非常に困難で耳鼻咽喉科医でも難渋する. 中等症—重症の鼻出血の治療については鼻粘膜皮膚置換術が適応となる. 今回われわれは2000年1月から2009年11月までの10年間に, 当院でオスラー病に対して鼻粘膜皮膚置換術を行った22例について臨床的検討を行ったので報告する.
    鼻粘膜皮膚置換術は, 以前から行っていた方法 (旧術式) で13例, 2008年4月からは鼻弁部で移植皮膚を折り返す新術式で9例施行した. 新術式に変更してからの症例は鼻出血スコアの低下傾向があり, 旧術式と比べオスラー病による鼻出血に悩む患者のQOLの改善にさらに寄与できる可能性がある.
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