目的:紫斑病性腎炎Henoch-Schönlein Purupura Nephritis (HSPN)はHenoch-Schönlein紫斑病の最も重要な合併症であり,その予後に大きく関与する.腎病理所見はIgA腎症と同様にIgA免疫複合体の糸球体メサンギウム領域への沈着を認め,IgA腎症に類縁の扁桃病巣感染症と考えられている.IgA腎症でみられた口蓋扁桃摘出術(扁摘)の治療効果が本疾患にも観察されるのか,扁摘を施行した小児HSPN症例に対して検討した.
対象と方法:1998年から2000年の間に,腎生検でHSPNの確定診断を得たうえで,内科的治療ではコントロールが困難であるために扁摘を施行した小児患者のうち術後6ヵ月以上にわたり経過を観察できた7例(男児4例,女児3例)を対象とした.手術時年齢は3歳から13歳(平均7.6±3.2歳)であった.上記に対し1)腎病理所見の重症度2)臨床所見の重症度,の2点を指標に,術前後の尿所見の変化を検討した.腎病理所見の重症度判定にはISKDC分類とIGL分類の2つを採用した.平均観察期間は74±6ヵ月であった.
結果:術後12ヵ月までに全例で血尿,蛋白尿とも消失していた.経過観察中に再発を認めた症例はなく,全例でステロイドを含むすべての薬剤投与が中止できた.内科的治療でコントロールが困難なHSPNにも,扁摘は有効と考えられた.
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