1987年4月より2002年5月までの15年間に当科で手術を行った真珠腫性中耳炎新鮮例853耳のうち先天性真珠腫と診断された60耳(7%)について臨床学的検討を行って以下の結果を得た.
1. 年齢は2歳から48歳までで,男性48例,女性12例と男性に多かった.多発例が17耳存在した.真珠腫の形態は,closed型が53耳,open型が7耳であった.耳小骨奇形を合併した例が9耳存在した.
2. 比較的限局した22耳を検討した結果ASQ型13耳,PSQ型9耳とASQ型が比較的多く認められた.
3. ASQ型の発生部位は真珠腫の癒着部位から,耳管鼓室口から鼓膜張筋半管付近が考えられた.PSQ型の発生部位はキヌタ アブミ関節近傍が考えられたが耳小骨侵食を認める例が多くその詳細な部位は不明であった.
4. open型真珠腫はclosed型と比較して耳小骨の侵食,耳小骨奇形の合併率が高く,初診時年齢が高かった.open型が遺残性再発時にclosed型に変化していた1例を経験し.ASQ型のopen型も比較的多かった.open型は卵円窓,正円窓に入り込みやすい傾向にあった.
5. 遺残の認めた部位としては卵円窓,正円窓,顔面神経露出部,外側半規管瘻孔部が多かった.真珠腫の進展度,個数,耳小骨奇形の合併と遺残率の関連は認められなかった.
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